広報誌 南東北

 

医食同源の伝統医学

医食同源の伝統医学
東北大学医学系研究科
高齢者高次脳医学講座
関 隆志
今回は、中国伝統医学の基本病態の気滞(きたい)の症状と治療法についてご紹介します。

気滞:気が滞った体質

  「気」が滞り、臓腑や経絡の機能が障害された状態です。症状としては、気持ちが落ち込む・イライラする・怒りっぽい・情緒の起伏が激しい、ため息をつく、おならやゲップが出る、排尿・排便障害、痛みなど症状のある時はその部位が移動する、月経周期が長くなったり短くなったりする、月経前に乳房が張って苦しい、ストレスがかかるとこれらの症状が悪化する―などがあらわれます。現代の都会に生活しているヒトに多い状態です。

気滞の治し方

 最も多い気滞の原因は、精神的なストレスです。生真面目で完璧主義のヒトほどストレスをため込みます。1日に1回は楽しいことをして、そのときだけでもいやなことを忘れることを目標にしましょう。嫌な気持ち・つらい気持ちを誰かに打ち明けたり、声を出して笑うことも、心を楽にしてくれます。悩んでも解決しないと分かっていることは、さらりと受け流す練習も必要です。
 後に記したように気を巡らしてくれる食べ物の割合を増やしましょう。精神的なストレスの発散には、ある程度、体に負荷をかけるスポーツも役に立ちます。スポーツを治療と思わず、楽しみながら汗を流すことが大切です。スポーツの経験のないヒトは、1日に30秒から1分間の運動ぐらいから始めてかまいません。初めは楽しくなくても、毎日運動をしない方が調子が悪く感じるように次第になってきます。そうなるまで続けましょう。しかし実際にはなかなかうまくいかないこともあります。漢方薬やツボへの刺激がストレス解消の手助けをしてくれます。
【気滞に効く漢方薬の例(適用症状の例)】
 加味逍遥散(かみしょうようさん:イライラ)、 四逆散(しぎゃくさん:四肢の冷え症)、抑肝散(よくかんさん:イライラ、不眠)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう:喉に何かが詰まっている感じ(ヒステリー球、白色痰と咳)など
【気滞に効く経穴の例】
 太衝(たいしょう:足の甲)、 期門(きもん:わきばら:第6肋間で乳頭の直下の線上)、 中(だんちゅう:左右の乳首の間で胸骨の上)、など
【気滞に効く食品の例】
 エンドウ、ナタ豆、キャベツ、チシャ(レタス)、ほうれん草、ザーサイ、大根、タマネギ、からし菜、春菊、ニラ、ネギ、ラッキョウ、落花生、マッシュルーム、生姜、ニンニク、ウイキョウ、八角 みかん、柚子、など
【気滞によくない食品の例(気を増やす食品)】
 鴨肉、豚肉、鶏卵、牛乳、ハチミツ、ローヤルゼリー、アサリ、アワビ、貝柱、牡蛎、カニ、カメ、クラゲ、ナマコ、イカ、ハモ、ドジョウ、ツバメの巣、梨、ヤマイモ、黒豆、豆乳、クコの実、白キクラゲなど

太 衝(たいしょう)
【見つけ方】足の親指の中足骨と人差し指の中足骨の接するところ。親指と人差し指の間から足首に向けてこすり上げて止まるところ。

気滞

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