広報誌 南東北

 

骨折しないために~骨粗しょう症の治療~

40代になったら骨量検査 ロコモチェックで〝骨太人生〟

 骨の量が減って中身がスカスカになり、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。閉経後の女性や高齢者に多く見られ、患者数は1300万人ともいわれます。12月19日⑤に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で南東北医療クリニックの鹿山悟副院長(総合南東北病院整形外科)が「骨折しないために~骨粗しょう症の治療」と題して講演した内容を要約し対処法を考えます。

適切な食事・適度な運動 薬物治療は継続が大事

 骨粗しょう症の骨は粗く密度がスカスカで見た目も折れやすい。骨折によって他の部位はじめ生活にも影響する。折れやすいところは決まっており外から力が加わるところ。一番困るのは背骨。腕の付け根や手首、足首の付け根などもだ。大腿骨骨折1年後の患者の生存率は80~90%で90歳以上は70%。つまり3割は命の予後に危険がある。骨折前のように歩けるのは30~80%でリハビリしてもなかなか元通りにはならない。脊椎圧迫骨折などは痛み以外に身長が低くなったり、腹部の圧迫で呼吸機能障害や逆流性食道炎を起こしたり、精神的な負担も増える。大腿骨や背骨を折ると死亡のリスクは骨折しない人の6~7倍になる。
 しかもこれらの骨折は要支援・要介護の原因になりやすい。日本人の平均寿命は男79・2歳、女86歳だが、晩年介護が必要な期間が7~8といわれ、その22・9%が「ロコモティブシンドローム」と呼ばれる運動器障害だ。関節疾患が一番多いが骨折・転倒も10・2%を占め、要介護のリスクが上がる骨粗しょう症は、ロコモの大きな原因だ。ロコモになると運動不足で「メタボ」にもなりやすい。
 どんな人がロコモなのかチェックする方法として片足立ちで靴がはけない、家の中でつまづいたりする、階段を上るのに手すりが必要―など7つある。1つでも該当するとロコモの心配があるという。
 予防策として①左右1分間、1日3回の開眼片足立ち②1回に5~6度のスクワットを1日3回―の体操を行い、バランスと股関節の筋力を鍛える、この2つだけでいい。
 骨粗しょう症の患者は推定で1280万人。50歳過ぎ、中でも女性に多い。骨粗しょう症薬の服用が進んでる欧米では大腿骨骨折の発生率が減っているが、残念ながらわが国では減っていない。骨は新陳代謝を繰り返し新しく作り変えられるが、女性は閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減って骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨量が低下し骨粗しょう症になりやすい。男性も加齢によりなるが、閉経前後10年ぐらいの間に知らぬ間に進行する女性に多い〝静かなる病気〟だ。
 骨粗しょう症は自覚症状が現れにくいので40代になったら定期的に検診を受けた方がいい。圧迫骨折の状態などを調べるレントゲン検査、市町村などが行うカルシウムの量を調べる骨量検査、血液で骨の作り変わりを見る骨代謝マーカーなどだ。閉経直後から検査すべきだが、他の検診同様検診率は低い。骨量が若い人に比べ80%なら正常、70%未満なら骨粗しょう症と診断できる。大事なのは骨密度。70%未満は即骨粗しょう症、80%以下でも骨折したことがあればすぐ治療開始の必要ありだ。また内部の病気により骨粗しょう症になる例もある。ステロイドを飲んでいる方は治療している医師に聞いた方がいい。骨粗しょう症患者で痛みがないのが14・3%もあるが、身長が低くなったり背中・腰が曲がり出したら骨折の心配もあり放っておかないことだ。
 骨粗しょう症になりやすいのは①喫煙②ダイエット中③栄養摂取に偏り④外に出ず日に当たらない⑤運動しない―などの人。体型的には胃腸が弱い、糖尿病・リウマチ、やせて華奢な人などもなりやすい。
 骨粗しょう症は食生活、運動などが関わる生活習慣病ともいえる。食事、運動、薬物治療が治療の三本柱。カルシウムの多い食事など骨の健康を考えた食生活、1日30分以上歩く適度な運動が大切だ。転倒・骨折は屋外より家の中が多い。暗いところには電気、階段には手すりをつけるなど生活改善も予防に重要だ。
 最後に薬物療法だが、現在は薬の種類が増えた。閉経後女性の長期治療にはSERM(サーム)が適している。ビスホスホネート薬は週に1回から月に1回と優れている。歯を治療している人は要注意だが、適正に使用すれば怖くない。甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)も効果がある。薬をやめると再び骨密度が低下することが多い。薬物治療で大切なことは継続だ。



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