広報誌 南東北

 

腸から始まる老化 動脈硬化予防に昼こそ野菜

昼食の選択があなたの血管年齢を決定する

 日本人の死因のうち心疾患と脳血管疾患の「血管事故」は1位のがんに匹敵するほど身近な健康問題です。主な原因は動脈硬化、つまり血管の老化にあります。5月15日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院の菅野惠心臓・循環器センター長(心臓血管外科)が「昼食の選択があなたの血管年齢を決定する」と題して講演した内容を要約し血管年齢を若く保つ方法などを探ります。
 動脈硬化疾患の主な原因は高血圧や脂質異常、2型糖尿病などだが、発症頻度は男女に大きな差がある。男性に多い動脈硬化の原因は喫煙と食習慣。30年ぐらい前、男の8割近くは喫煙していた。食習慣に関しては朝食と夕食は単身赴任者を除きほとんど男女間に差がない。問題は昼食の選択。栄養学的に見て昼食は個人差があり動脈硬化を起こす大きな要因とも考えられる。
 ホモサピエンスのサピエンスとは「知恵のある人」の意だが、現代人の昼食には知恵が足りないと思う。進化の過程で人だけが大きな脳を支えるため皮下脂肪にエネルギーを備蓄できるようになった。首から下の血管は高い血圧に耐え得る厚さの中膜という筋肉があり破裂しないように出来ているが脳はあまりに早い進化を遂げたため膜が薄く血液の流れもよく見える。進化の犠牲者は血管自体かも知れない。脳が進化できたのは効率よくカロリーを摂り、短時間に多くの食物を食べ脂肪組織に備蓄出来たからだ。
 この脳を養うため腸は何でも消化吸収、命に変換する必要から雑食になった。腸の吸収力が生存競争を左右、それだけ腸が最重要となった。臓器の中で一番血流を得ているのは腸で30%、次が腎臓、三番目が脳、心臓は5%しか使っていない。それを支えたのが腸内細菌。大腸には1000種類で100兆個、1~1・5㎏の腸内細菌が共生している。もう1つの器官といわれるゆえんだ。
 雑食は「火」を起こすことで全て食材にできるようになった。農耕が始まって1万3千年。人は炭水化物と備蓄を覚え食物依存症になった。同時に肥満があこがれの食べたいという脳を作ってしまった。脳にはドーパミン受容体があるが肥満の道を歩まないと快楽が得られなくなった。
 次に人類が出会ったのが塩。麻薬を求める時に似ており人はナトリウム依存症に陥りやすい。世界の摂取基準は6gが目標なのに日本は未だ11~12gぐらい摂っている。
 もう1つは脂質。エネルギー貯蓄として大事だが、多くのインシュリンが必要で高脂肪は最後には膵臓に負担をかけ糖尿病になる。縄文時代は14gぐらい。日本の伝統的な脂質は20g前後だったが、今や50~60gほど。呼吸と脂質の備蓄は欠かせないが今や欠点となりつつある。
 3食のうち昼は腸の動きが活発だから植物繊維を摂るのに一番いい。昼食を間に合わせ的に考えている人が多い。昼こそ野菜だ。効率を求めて早食い、高カロリー、塩分過多が男の選択基準になり肥満、高血圧、糖尿病になっている。うどんや中華めんなど麺類は血糖上昇が早く30分でピークに達する。麺が好きな人は野菜が少ない。食事前に350g食べてほしい。長寿県の長野県は379gも食べている。植物繊維が多い食事は腸内細菌の活動が高まり酪酸が増え炎症抑制作用のある細胞を増やす。酪酸は大腸粘膜のエネルギー源だ。
 老化は腸から始まる。昼食は①急激な高血糖を避ける②塩分と脂質を抑える③善玉腸内細菌を増やす工夫④食物繊維を十分摂る⑤食品の数を多くする―が理想。早食いをやめ野菜―たんぱく質―炭水化物―と食べ方の順序を変えるだけでダイエットにもつながる。腸の若返りが大切だ。


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