広報誌 南東北

 

最も多い手根管症候群 小指と薬指の半分しびれなし

手足のしびれ・痛みを診る


 何が原因か分からず手足のしびれや痛みに悩んでいる人は意外に多いようです。総合南東北病院で8月18日⑤に開かれた医学健康講座で同病院の山本悌司神経科学研究所長が「手足のしびれ・痛みを診る~神経内科医の見方」と題して講演した内容を要約し、原因や治療法などを学びます。
 しびれと痛みは紙一重でなかなか区別がつかないが、身体の痛みは危険信号だ。腹が痛い時は胃潰瘍か急性虫垂炎か、胆石が引っ掛かったかもしれない。もし痛みを感じなかったら手足はボロボロ。人にはわが身を守る機能があるが痛み・しびれ感覚は最終的に脳が感じ取る。
 しびれ・痛みの原因疾患は指先の関節炎や循環・末梢神経・脊髄・脳の障害、心因性の影響などいろいろある。神経内科の痛みはけがした時やぶつけたときの痛みとは違う。
 リウマチは関節炎だが、意外に神経内科を初診で訪れる人が多い。朝起きると指が強張り、しびれて痛いのは神経疾患と思っているようだ。典型的な朝の強張りを動かすと楽になるが、何十年も続くと関節が破壊され、変形する。早期のリウマチの治療法は進歩している。この10年間に有効性が確立された治療法もあり神経内科でも診れる。
 両手のしびれや腕、肩の疼痛を手のマッサージで改善できると思っていた人も多いと思うが実は「手根管症候群」かもしれない。意外に知られていなかった病名だが、一番多い。しびれなら即「首のレントゲン」とやってきた日本の医学教育は間違い。しびれならまず手根管症候群を疑うべき。手には手の平の親指から薬指(厳密には薬指の半分)までを支配する正中神経、薬指半分(小指側)と小指支配の尺骨神経、手の甲部分の橈骨(とうこつ)神経の3本の神経が通っている。正中神経の束は手首の手根管というトンネルを通るが、手根管が腫れて神経を圧迫、しびれや痛み、指の動きが悪化し、ひどくなると拇指球筋の委縮や筋力が低下。脳卒中扱いされている人もいる。20~60歳の女性や高齢者、妊娠中、糖尿病、リウマチ、甲状腺機能低下症の人などがなりやすい。ただ手根管症候群では小指は絶対にしびれないのが特徴だ。
 両手の甲をつけ手首を曲げ30秒間じっとしていて指先がしびれたら潜在的に手根管症候群の疑いありだ。しびれが元に戻るうちは軽傷。軽い時の治療法は手首の靱帯外側への副腎皮質ホルモン注射が有効で8~9割良くなる。重症の場合は神経を圧迫している靱帯を切る手術があるが、15分~20分で簡単に済む。
 似た症状が足に出るのが足根管症候群。骨折や捻挫して数年後、足の内側にしびれと神経痛のような電撃痛が起こったりする。足を組むクセや寝相が悪い人などは足の外側にある総腓骨神経麻痺になりやすい。海外では足を組んでタイプライターを打つ秘書に多いため「秘書の麻痺」と呼ばれる。下手をすると半年から1年治らないこともある。尺骨神経では肘のところ〝クレージーボーン〟にぶつけるとビーンとしびれる。これを繰り返したり、昔の畳屋さんのように肘を使う人は麻痺したり筋肉がやせてくる。
 末梢神経疾患では両手、両足の神経が対照的にしびれる多発神経炎がある。慢性と急性があり急に手足が麻痺し歩けなくなるのが有名なギランバレー症候群。ひどいと呼吸する筋肉が麻痺、気管切開や人工呼吸器が必要な時もある。
 今は少ないが、ビタミンB1欠乏の脚気。アル中でおかずを全然食べない人、酒は飲まないが極端な偏食の人などにみられる。糖尿病治療後にしびれや痛みなどの神経障害が出たりする。病状よっては急に血糖値を下げると逆に悪化することもあり糖尿病の人は性急な治療は避け、時間をかけて治療する必要がある。
 最近多いのが足のつま先から甲にかけてのしびれ。しびれが片方の場合は椎間板ヘルニアや脊髄狭窄症が疑われるが、原因がはっきりしない特発性神経障害。「歳だから」と片付けられがちだが、難聴になるのは内耳から脳にいっている神経が鈍くなるからだ。この特発性感覚性多発神経炎も疲れると足先からしびれ、徐々に上行。手に来るのは稀。麻痺はないが時にふらつきを伴う高齢者特有の多発神経炎だ。心配はない。
 また胃の切除10年後ぐらいに悪性貧血や上肢のしびれ、ふらつき、認知障害などが現れるビタミン12欠乏性脊髄症もある。胃がないため吸収できないが、ビタミン12を点滴すれば10年は大丈夫だ。
 「つづらご」は帯状疱疹のこと。水疱瘡のウィルスが消えたのではなく、神経の中に潜っていて体調が崩れた時に出てくる。高齢になるほど痛みやしびれが残るので早く治療した方がいい。神経内科は痛み・しびれ、めまい、麻痺、震えなど幅広く診察しており、悩まず受診してください。

トップページへ戻る