広報誌 南東北

 

胆石の最近の話題 誰にでも起こりうる現代病 一度痛みが出たら危険サイン

規則正しいバランスとれた食事 適度な運動でリスク低下

 突然「身をよじるほど」の痛みがみぞおち付近に起こる胆石症。成人10人に1人は胆石があり誰にでも起こりうる病気といわれます。11月13日に総合南東北病院で寺西寧院長(外科)が「胆石の最近の話題」と題して講演した内容を要約して予防法や注意点などを学びます。
 胆のうは、みぞおちの右側(肋骨の裏)、肝臓の下に張りつき、肝臓で作られた胆汁を溜めておくナスのような袋状の臓器。胆汁は赤血球の壊れたものが肝臓で処理されて作られ肝臓から総肝管、胆管を経て胆のうに一時的に溜まり、水分が吸収されて濃縮、コールタールのようになる。食べ物が胃から十二指腸に送られると胆のうが収縮し溜まっていた胆汁が総胆管、膵臓を通って十二指腸に流れ、便となって排泄される。便が黄色いのは胆汁の色。全てが出るわけではなく一部は腸で吸収され、肝臓に戻る。これを腸肝循環という。胆汁に含まれる胆汁酸は脂肪の消化・吸収を助ける。胆管と胆のうを合わせ胆汁の通り道の胆道に胆汁が固まってできたのが胆石だ。
 胆石持ちで無症状の人も多いが、病気になりやすい。胆石は成分によりコレステロール系とビリルビン系があり、全体の70%がコレステロール系結石。コロっとした石で一日の総カロリー摂取量の多い人ができやすく増えている。ビリルビンカルシウム系結石は赤血球が壊れてできた黒っぽいジャリジャリしたような石で30%。石ができる場所は胆のう8割、胆道の総胆管が2割、肝臓の中にできる肝内結石は1%でアジアに多いが最近は減っている。
 原因は胆のうの収縮する力が弱くなると胆汁がよどんで砂、泥のようなカスが溜まって石ができる。総胆管の流れが悪かったり、細菌に感染した時、胆汁の成分変化によってもできる。食生活や体質なども関係ある。脂質異常症だとコレステロールが増え濃度が上がる。ものを食べないと膨らんだままなので減量ダイエットや胃切除・胃がん手術、女性ホルモン療法中の人なども石ができやすい。
 胆石が胆道などにはまり流れが途絶えると胆のうの壁が厚くなり痛み、化膿すると発熱し危ない。食後に突然みぞおちや背中の激痛、狭心症と間違われる胸痛、発熱などの症状を起こし黄疸や膵炎などを併発、特に急性胆管炎の場合は体中に細菌が回り敗血症で命を失う危険もある。一度痛みが出たら危険サイン、早急に検診・治療が必要だ。
 胆石の診断にはCT、MRI(磁気共鳴画像装置)、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)などがあるが、超音波(エコー)が有効だ。年に一度は診てもらうといい。内視鏡でバスケット、バルーンを使って石を砕いたり、開腹か腹腔鏡下で胆のう摘出手術などがあるが、8割は腹腔鏡下手術で行われている。
 胆石を放っておくと年間1~3%に胆のう炎や膵炎、発熱、黄疸など重篤な症状が出る危険性がある。40歳以上・女性・肥満・白人・多産の人が胆石になりやすい。腸の動きが弱い・悪い人など腸管機能の低下、脂質異常の人は要注意。〝快食快便〟が一番だ。
胆のうがんの人は胆石持ちが多い。ただ胆のうがんになる確率は分からない。胆石を防ぐ方法は①規則正しい食事②高コレステロールの食事を避ける③高カロリー・肥満解消④魚を食べる⑤急なダイエットを避ける⑥妊娠後は注意―などだ。リスクを増やす食生活や身体活動の低下を避け、野菜や果実、多価不飽和脂肪酸、植物性たんぱくなどリスクを低下させる栄養バランスのとれた食生活、そして適度な運動をすることだ。


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