広報誌 南東北

 

広げよう"咳エチケット"-冬の風邪とインフルエンザに備える-

ワクチン接種早めに 大切な"発症"しない体力づくり

 日本人の死亡原因はがん、心疾患に続き肺炎が三番目となり、その95%が65歳以上です。“風邪は万病のもと”といわれ、冬に「甘く見てはいけない」病気です。11月27日㈭、総合南東北病院で開かれた医学健康講座で宮元秀昭呼吸器疾患研究所長が「冬の風邪とインフルエンザに備える」と題して講演した内容を要約して風邪対策を探ります。
 風邪は鼻、口、喉などの粘膜にウィルスが感染して起きる感染症でウィルスは200種類以上ある。咳やくしゃみ、鼻づまり、喉の痛み、発熱など症状は共通で風邪症候群とか感冒という。ウィルスの種類により糖尿病や痛風、リウマチなどを重症化させる要因で肺炎にかかると命に関わる。
 抗生物質は、ばい菌に効くが肺炎のウィルスには効かず特効薬はない。人の体には善玉菌という常在菌があり口や胃、小腸、大腸、肛門など外界に接する所でばい菌の侵入阻止や物質代謝、自浄作用、発がん抑制などをしている。
 しかし湿度が20%ぐらいに乾燥すると善玉菌が減る。抗生物質は善玉菌も殺してしまうので風邪をひいて直ぐ抗生物質を飲んではダメだ。また喉の肺炎球菌は、喉の中では善玉菌だが、誤嚥して気管や気管支に入ると悪玉菌に変わる。だから高齢者が風邪をこじらせると気道で炎症を起こし咳が出、肺に入って発熱、命に関わるようになる。
 ウィルスは低温・低湿度を好み、冬に感染力が強まる。外気が寒く乾燥時に人の体温は下がり免疫が下がる。冷え性は免疫力がない。水分をよく摂らないと口の中が渇き粘液がウィルスを簡単に侵入させて終う。しかも水気を含まない咳やくしゃみなどの飛沫は軽くて遠くまでウィルスを飛ばして感染を拡大させる。
 風邪をひかないようにするには①うがい②手洗い③人混みを避ける④マスク⑤口腔ケア⑥誤嚥を防ぐ―などの徹底だ。うがいは塩水やお茶、普通の水でもいいから喉を湿らせること。ドアノブや電車の吊革から感染するのが多いので人混みを避け、帰宅後は手洗いを励行する。きちんと口腔ケアすれば善玉菌を増やして誤嚥も防げる。また⑦体の抵抗力を強める⑧禁煙⑨規則正しい生活⑩糖尿病などの持病を治療⑪部屋の加湿⑫十分な睡眠⑬肺炎球菌やインフルエンザの予防接種―なども大切だ。煙草は免疫力を下げ、がんにもなるので当然禁煙。免疫を上げ感染しても発症しない体を作ることが重要だ。
 朝起きると人は様々なストレスを受けストレスホルモンの分泌で血圧を上げ、免疫機能が低下する。機能が一番下がるのは午後4~5時ごろ。ただ夜になると眠くさせるホルモン・メラトニンが増え心身ともリラックス、免疫機能が回復する。通常は夜寝ている間に侵入した“小さな敵”と闘うが、ストレスを抱えたまま寝るとそれができず風邪を発症する。睡眠は大事だ。夜遅くまで仕事しないこと。睡眠は発熱力がカギで朝より夜の体温が高ければ熟睡できる。夜の体温を高くするには夕方3分の早歩きを3回するなど軽い運動が効果的。この後に牛乳を飲むと筋力がつく。発熱力の60%は筋力になる。
 風邪予防にオリーブ葉エキスに含まれるオーレユーローペンや日本茶に含むカテキンなどのサプリメントもいい。食べ物では何と言っても湯気が立つなべ料理が一番だ。
 インフルエンザはイタリア語で「同時に多くの人を襲う災厄」という意。12月~3月ごろに流行する。予防にはワクチンの予防接種が効果的。4カ月間有効だ。接種しても罹患はするが、重症化はしない。38度の発熱などがあったらウィルスが増殖する48時間以内に病院で検査を受け、治療すること。発熱から5日間は人に移るので人混みにはいかないこと。繰り返しになるが手洗いやうがい、マスク装着など「咳エチケット」を広げ、自分が移らない、人に移さない―などが大事だ。


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