広報誌 南東北

 

リンパ浮腫の仕組みとセルフケア

腕や脚のむくみ、左右差確認 早く見つけて悪化予防 継続的セルフケア・管理が最重要


継続的ケアが重要と指摘する富山看護師

がん治療後にリンパ浮腫が起こりやすい場所
 がん治療による合併症の1つに腕や脚がむくんでしまう「リンパ浮腫」という症状があります。病気そのものへの理解を深め、日頃から注意して生活することで発症を抑えることができます。たとえ発症しても早期に治療を開始し、セルフケアを続けることで悪化を防ぎ、うまくつきあっていくことは十分可能です。リンパ浮腫療法士の資格をもつ総合南東北病院の富山香奈恵看護師にリンパ浮腫の仕組みと自己管理の方法を聞きました(1月23日開催の「がんサロン」ミニ勉強会より)。
 人間の体内には血管と同じように「リンパ管」とよばれるくだが全身にはりめぐらされており、その中をタンパクや白血球を運ぶリンパ液が流れています。わきの下や首のつけ根、脚のつけ根には「リンパ節」という豆つぶのような形状をした組織があり、感染防御の働きを持ち、リンパ管はリンパ節を経由しながら最後は静脈に注ぎます。
 がんの手術でリンパ節を取り除いたり、放射線治療を受けたことがきっかけでリンパ液の流れが滞り、それが原因で起こるのがリンパ浮腫です。疾患としては乳がんや子宮がん、前立腺がんなどの治療後に発症することが多いです。治療を受けると必ず発症するというわけではありませんが、1度発症すると完治は難しく、一生つき合っていかなければなりません。重症化すると服の袖に腕が通せない、ズボンや靴がはけないなど日常生活に支障をきたすこともあります。
 リンパ浮腫を予防するには、むくみが出ていないか腕や脚をよく観察したり、手で触れたりして左右に差が出ていないかなど確認します。重い物を持つなど腕や脚に負担をかける動作は禁物です。またケガをすると傷口からバイ菌が入って炎症が起き、浮腫が起きることがあります。皮膚はできるだけ清潔で保湿された状態を保ち、傷が付かないように注意を払いましょう。
 むくみに気付いた時は担当医を受診し相談しましょう。医師は患者さんの状態に応じた治療方法を検討します。代表的な治療法は「複合的理学療法」で、日常的なスキンケアのほか①用手的リンパドレナージ②圧迫療法③圧迫した状態で行う運動療法―を組み合わせたものです。①は医療目的のマッサージ方法です。皮膚のすぐ下にある毛細リンパ管を動かしてリンパ液を流れやすくすることで、むくみの改善を図ります。力を入れず、ゆっくりと皮膚を動かすのがコツ。入浴中のマッサージは指が湯で滑って皮膚をうまく動かせないためお勧めできません。②は、弾性ストッキングや弾性スリーブなど専用の着衣を身につけて圧迫しリンパ液がたまるのを防ぐ治療。必要に応じて弾性包帯を使用します。医師などと相談し、自分にあった着衣を選ぶことが大切です。弾性着衣は一定の条件を満たせば費用の一部について公的医療保険の療養費が支給されます。医師の発行する指示書が必要となりますので受診時に申し出て下さい。③は弾性着衣を着るなど適度な圧迫のある状態で行なう運動です。ゆっくりと肩を回したり、膝や足首を曲げ伸ばしたりします。過度な運動は逆効果なので要注意。運動のほか腹式呼吸を取り入れるのもよいでしょう。
 これらの治療は、医療機関を定期的に受診して医師などの専門家から指導や助言を受けて行なうものですが、患者さん自身による継続的なケアや管理がとても重要です。セルフケアそのものが負担とならないようにテレビを見ながらマッサージするなどケアを生活の一部に取り込み、楽しみながら行ないたいものです。
 当院では、患者同士や家族が交流を深め、がんの情報交換や気になること、困ったことを気兼ねなく話せる場として「がんサロン」を毎月1回開催しています。会場は総合南東北病院に隣接する南東北がん陽子線治療センター4階ラウンジで参加無料。次回は3月25日④でテーマは「薬について」です。

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