広報誌 南東北

 

骨粗しょう症と脊椎圧迫骨折 ~現状と最新の治療~

風船使い有効なBKP 安全・短時間手術で痛み軽減

 骨粗しょう症患者は1千万人前後で〝国民病〟といわれ、70歳以上の半数は脊椎圧迫骨折が心配されます。 7月17日(金)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院副院長の伊藤康信脊椎・脊髄外科部長(脳神経外科)が「骨粗しょう症と脊椎圧迫骨折~現状と最新の治療」と題し講演した内容を要約し、治療や予防法などを学びます。
 骨粗しょう症は高齢者、特に女性に多い病気で70歳過ぎると脊椎圧迫骨折が激増する。最近身長が2㎝以上低くなった人の50%、4㎝以上は100%脊椎圧迫骨折が疑われる。 治療で元に戻るのは難しい。圧迫骨折すると後彎(こうわん)変形といって背骨が丸くなる。背骨の前方はもろく、後方は硬いため前の方が楔状につぶれ背骨が後方に飛び出す。 前の方がグラグラなため慢性的な痛みの原因となり、肺が押されて深呼吸できず肺炎なども起こしやすくなる。またバランスを崩して歩行障害や腹部圧迫で逆流性食道炎にかかったり、 日常生活動作が低下し家族依存度も増し、うつ状態になったりする。
骨折予防の根本は骨粗しょう症予防 骨密度増す食生活、運動こそ基本
 1度骨折すると再発生する「骨折連鎖」の可能性が3~4倍高まる。圧迫骨折により寝たきりにつながる危険性もある。腰痛で高齢者が安静臥床になると1日約1.5%の筋力が低下、歩行に支障が出る。 要介護で最も多いのは脳卒中だが、8人に1人は骨折・転倒が原因。特に脊椎骨折は死亡率も高まってくる。
 脊椎圧迫骨折の治療は昔も今も安静、コルセット着用、鎮痛剤投与の保存的療法。これで9割方良くなり、1割が何らかの治療が必要だ。圧迫骨折はレントゲンだけではなかなか診断が難しい。 MRIでSTIRという特殊な撮り方をすると骨折の新旧が判る。定期的に評価し適切なタイミングで外科的治療をすると症状が進まずに済む。痛みが続く場合は担当医に相談すべきだ。 放置すると歩行障害やトイレが間に合わない膀胱直腸障害などになることもある。
 手術は椎体形成術といいVP(経皮的椎体形成術)と訓練を積んだ脊椎脊髄外科医によるBKP(経皮的バルーン後彎形成術)の2つがある。両方とも保険適用。骨セメントを使って固めるが、違いはバルーンを使うかどうかだ。
 VPは局所麻酔で背中から針を入れ柔らかい骨セメントを挿入するため肺塞栓や椎体外漏出の心配もある。BKPは椎体に針を挿入する時に造影剤入りのバルーンカテーテルを差し込み、15分ぐらい放置し、 できた空洞と隔壁に硬めの骨セメントを流し込む。全身麻酔でX線透視しながら行うが、手術は約1時間半の短時間、傷は5mmほどの針穴で済む。米国では早くから始まったが、日本で導入したのは2011年頃でまだ4年ほど。 県内では当院だけ。硬めの骨セメントを使うのは血管への流出防止。バルーンを使わないと肺塞栓リスクが1.8%、使うと0.3%で済み重大な合併症の肺塞栓の危険性も軽減でき、安全性も高い。 最近は圧迫骨折から3~4週間後に様子を見て行う。認知症が出てきた時も同様。BKPで椎体は少し高くなり、痛みは確実に軽減する。
 圧迫骨折の背景には骨粗しょう症がある。骨粗しょう症の対処を怠れば「木を見て森を見ず」だ。骨をつくる治療が必要だ。今はテリパラチド製剤を毎日、インシュリンと同じように2年ほど注射し続けると骨ができる。 再発も少なくなる。認知症などの場合も週に1回、70週通院でOK。そのあとはビスホスホネート製剤で流れないようにする維持療法。今では半年に1回の注射でいいものも開発されている。 新たな圧迫骨折を防ぐためきちんと薬物治療を受け、同時に骨を強くする基本の食生活や適度な運動など日頃の骨粗しょう症予防が大切だ。


トップページへ戻る