広報誌 南東北

 

加齢により罹患しやすい眼の病気

技術進歩著しい白内障手術 20人に1人が緑内障、9割気づかず(40歳以上)


眼球の構造
 高齢になると老眼、白内障、緑内障、加齢黄斑変性、網膜の血管障害など様々な変化や病気にかかりやすくなります。 10月16日(金)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で南東北眼科クリニックの小野田貴嗣医師が講演した「加齢によって罹患しやすい眼の病気」の内容を要約して治療法や予防法を学びます。
 目はカメラと同じ構造で角膜から入った光がレンズの役割の水晶体で焦点を合わせ、ゼリー状の硝子体の奥にある網膜に映像を映し、視神経を伝って脳に送り頭で映像を見る仕組み。 白内障はその水晶体が白く濁って光がうまく通らなくなり、光が乱反射し視力が落ちる病気だ。水晶体は普通透明だが、加齢とともに濁る。濁った水晶体を人工の眼内レンズに交換する手術で治る。 手術は比較的簡単で角膜を切開し水晶体を超音波で砕きながら吸引して眼内レンズに交換。熟練した眼科医なら15~20分ぐらいで済む。
 眼内レンズの種類は遠近どちらか1か所に焦点を合わせる単焦点、遠近2か所に合わせる多焦点、単焦点に乱視矯正を加えたトーリックがある。単焦点で遠くに焦点を合わせた場合、近くは老眼鏡が必要。 多焦点は遠近両用だが、1mほどの中間が弱く眼鏡が欲しい。多焦点は保険がきかない先進医療だが、術後1年の眼鏡装用状況では9割が「眼鏡不要」で眼鏡からの解放の可能性が高い。 ただ全ての人に向くわけではない。運動や読書、裁縫など活動的な人には向くが、グレア・ハローといって光の反射が強すぎるレンズの欠点があり夜間車の運転を職業とする人やパソコンの作業、 譜面を見て演奏する人、性格的に神経質な方は向かず遠近8割見えればいい、という方に向いている。
 乱視の治療では眼鏡・コンタクトレンズを用いる非外科的治療と切開による手術、角膜を削って行うレーシックなどのレーザー、トーリック眼内レンズを挿入する外科的治療がある。 眼鏡・コンタクトレンズはコストや煩雑さが難点。レーザーも高額で混合・遠視性複乱視の場合正確性が乏しい欠点がある。
 緑内障は目の圧力で視神経が傷つき視野が狭くなっていく病気で中途失明の原因の第1位だ。ゼリー状の硝子体はボールと同じで内から外に向かって圧力がかかり、眼圧が強過ぎると視神経を傷つけてしまう。 視野が欠けると元に戻らないので早期に発見、治療して病気の進行を止めることが重要だ。40歳以上の20人に1人は緑内障といわれるが、ほとんどが未治療。 偶角眼部分が広がる緑内障で眼圧が正常より高い原発開放隅角緑内障、眼圧が正常な正常眼圧緑内障、眼圧が正常より高いが、緑内障でない高眼圧症がある。 正常眼圧は21以下としているが、人により耐久力が違うため視神経の障害は眼圧だけでは分からない。正常眼圧でも眼底検査が重要だ。
 緑内障の症状は長い時間を掛けて進行する。右目の視野が欠けても左目で補完するのでなかなか気づかない。定期的な視野検査が大切だ。緑内障の治療は眼圧を下げることが重要で点眼薬による治療から始める。 薬で下がらないときはレーザー手術や房水の流れを良くする外科的手術がある。緑内障の手術は以前より入院期間が短くなった。
 加齢による目の疾患はこのほか網膜の中心部の黄斑部分が傷み、物がゆがんで見える加齢黄斑変性症、突然目の出血が起こる糖尿病網膜症などがある。当院は網膜剥離など網膜硝子体手術ができる数少ない施設である。


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