広報誌 南東北

 

嚥下障害とその対応法

口腔ケアが嚥下障害対応のポイント 誤嚥性肺炎予防に効果


嚥下障害の対応で口腔ケアが大事と強調する森さん
食べ物や栄養ケアに工夫 嚥下体操など筋力増強も重要
 日本人の死因トップはがんですが、4年前から肺炎が3位にランクされています。高齢者の増加に伴うもので死者の95%以上が65歳以上でその7割は誤嚥性肺炎が原因です。 10月21日に南東北陽子線治療センターで開かれた「がんサロンほっと」ミニ学習会で総合南東北病院口腔外科言語聴覚士の森隆志さんが講演した「摂食嚥下障害の評価と対応」の内容を要約して知識と予防法などを学びます。
 私たちの「食べる能力」は食べ物を認知し口に取り込み、咀嚼して塊をつくり、舌を使って喉に送り込み、飲み込む、嚥下するという流れで食事をします。このとき咽頭で瞬きと同じような反射運動がおこります。 口の奥の天井の部分(軟口蓋)が鼻腔を塞ぎ、気管のフタである喉頭蓋が閉じ、口に中のものが気管や鼻に入り込むことなく食道から胃へ送り込まれます。食道はいつも閉まっていて大事な時だけ開きます。 液体なら1秒ぐらい、固形物はそれよりもう少し時間がかかりますが、これらに関わる筋肉は30種以上といわれます。異物が気管に入った場合、若く健康な人なら咳をして外に出したりできますが、 弱った人や筋肉に障害を生じた時は一連の動きに嚥下障害が起こります。
 なぜ起こるのでしょう。一番の原因は加齢によるものです。80歳代の在宅高齢者では40%に嚥下障害がみられるそうです。筋萎縮のサルコペニアは低栄養により痩せてしまったためです。 多いのが脳血管疾患で麻痺や反射機能の減弱・認知機能障害が起きます。パーキンソン病などの神経変性疾患も同様です。頭頸部がんでは術後急性期にむせないで誤嚥することもあります。薬物でも起きるが、その代表は鎮静剤です。
 嚥下障害の評価は、まず咳や発熱、痰絡みがあるかどうかをみます。そして水や唾を飲んでもらう簡易検査を行い、さらに鼻から内視鏡を入れて咽頭や喉頭の状態、嚥下状態を見る精密検査を実施します。 嚥下造影検査は放射線をかけるため多少被曝すること、造影剤による誤嚥のリスクがあるなどの短所がありますが、最終的には嚥下造影検査を行って最終判断、安全な嚥下方法の検討などを行います。
 摂食・嚥下障害への対応では①医学的管理②口腔ケアを含む歯科口腔外科治療③食べ物を用いない間接的訓練④食べ物を用いる直接的訓練⑤栄養管理があります。 最も大事なのは口腔ケア。歯磨きやうがいなど口腔ケアを徹底することにより口の中の細菌を繁殖させず、肺へ運び入れないことで高齢者の誤嚥性肺炎の発生率減少、口腔内の衛生状況改善、食事ヘの意欲改善―などが期待されます。
 食物を用いない訓練では口腔器官の可動域訓練や筋力増強、仰向けに寝て頭を上げてつま先を見る頭部挙上訓練、頬や舌を動かす嚥下体操などの訓練を実施します。 食物を用いる訓練は、高い効果が期待されますが、誤嚥のリスクがあるため慎重に行う必要があります。食事の際には椅子でもベッドでも首の角度が前かがみになるような姿勢の調整が大切なようです。
 食べ物の工夫も大切です。ハンバーグは食べにくい。ゼリー状にしてやると飲み込みやすいのでいいようです。プリンやムースもいい。ベタつき感のあるのはダメのようです。 嚥下食というとおいしくないといわれますが、最近はうまくて柔らかい食品が出てきたようです。レンコンもスプーンでつぶせますし、香りもあるようです。ただ少々値段が高いので病院では無理かもしれません。 在宅で味わってください。また栄養のケアも大切。食べないとどうしても栄養不足になります。自分はどのぐらいの栄養が必要かですが、体重に30を掛けた値。 体重50kg人なら1500kcal、水分もペットボトル1本と覚えておくと便利です。栄養補助食品などを含め栄養管理に注意してください。

トップページへ戻る