広報誌 南東北

 

食道がんの予防と治療

リスク高めるたばこと過度の飲酒 野菜と果物が予防に効果

 食道がんによる死亡者は毎年1万人にも上り、この30年間でほぼ2倍に増えています。初期の自覚症状が少ないために発見が遅れがちで転移を起こしやすいともいわれます。 11月19日(木)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で寺西寧同病院長が「食道がんの予防と治療」と題して講演した内容を要約して予防法などを学びます。
 日本人の死因1位はがんだが、食道がんはそう多い方ではない。人口10万対比では男16.5人、女性2.8人で圧倒的に男が多い。発症率は人口1万人に1人。郡山市だと年間30人ぐらいだ。
 食道は心臓の後ろ、背中側にある。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」の諺のように熱さを感じるのは喉だけで食道そのものは熱い、冷たいは余り感じない。 先ほど男に多いといったが、罹患者には指揮者の小澤征爾、歌手の桑田佳祐、俳優の藤田まこと、歌舞伎俳優の中村勘三郎、作曲家・なかにし礼など有名人も多い。
 食道がんの原因は、たばこと酒。毎日1.5合以上酒を飲む人のリスクは飲まない人の約12倍、毎日20本以上たばこを吸う人は約5倍、たばこと酒両方の習慣がある人は33倍にも及ぶという。 アルコールを飲むと体内でアセトアルデヒドという発がん性物質ができるが、顔が赤くなる人はそれを分解する酵素が弱い体質で日本人に多い。また熱々の食べ物や飲み物を好む寒い地方では食道がんが多い。 香港の朝粥の習慣などもリスクが高い。お茶やコーヒーも少し冷まして飲んだ方がいい。
 食道がんを見つけるには内視鏡検査だ。検査して疑いがある場合、ヨード液を塗ると白くなるので見つけられるが、造影剤のバリウムは食道を素通りしてしまうので早期がんは見つけにくい。胃と同様に内視鏡検査がお勧めだ。
 がんは内側の粘膜から出て深い所に入り込むが、食道がんは早くから転移する悪い性質がある。浅い所にある早期がんのうちなら治りやすい。
 早期の症状は意外に無症状。食べ物がしみる感じの時に受診するといい。食べ物がつかえる、体重減少、背中が痛い、咳、声のかすれ―などはすでに進行している証。おかしいと思ったら喉だけでなく全身を診てもらうべきだ。 リンパ腺に転移しやすく、左右2本の反回神経のうち1本が侵されると麻痺して声がかすれ飲み込みもできなくなる。
手術と同等、化学放射線療法 粘膜内なら内視鏡下粘膜切除で根治
 治療は、手術や放射線、化学療法などがあり、粘膜内の浅い早期がんは内視鏡で治療できる。中期・進行がんは胸腔鏡下、開胸による手術が必要だ。末期がんや再発の場合は、放射線療法と化学療法などの選択肢もある。 内視鏡による粘膜切除術(EMR)はこれまでもあったが、最近は表面に大きく広がった早期がんでも内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で切除できる。目覚ましい進歩だ。 進行がんの手術は大掛かりで胸を切り、胃を使って食道をつくるが、4~5年前からは創を少なくするため穴をあけ胸腔鏡による手術も行われている。ただし条件が整わないとできない。
 放射線治療には従来の治療で使われるX線やガンマ線などの光子線、炭素線や陽子線を利用する粒子線がある。従来の放射線は体を突き抜けてしまうが、陽子線はエネルギーを腫瘍近くに集中照射できるので食道がんに効力を発揮する。 食道がんの治療では、従来の放射線と抗がん剤を組み合わせて治療、その後に陽子線を照射する方法を行うため治癒に約2か月、時間がかかる。陽子線治療にも有害事象がある。 白血球が減ったり、貧血など骨髄抑制、食道炎などが起きる。ただそれで具合が悪くなるということはない。食道がん治療では外科手術がメジャーだが、放射線化学療法も大きなシェアを占め双方の生存率もあまり変わらず成績はほぼ同等だ。 陽子線の併用で成績は向上し合併症が軽減している。リンパ節転移などでも陽子線の適応になる。
 ご飯を食べたり、睡眠不足やストレスが溜まると血糖が上がる。下げるのはインスリンと運動で、がんになりにくい―ことが最近分かってきた。運動療法はいいようだ。
 がんの発症と食べ物は関係が深く、肥満は乳がんや大腸がんになりやすい。アルコールは食道や喉のがんになりやすい。食道がんを防ぐには野菜・果物。100g多く摂るごとに発生リスクが10%減るという。 特にキャベツ、大根、小松菜が有効。イソチオシアネートが含まれるからで大根の繊維が壊れると発生するので細く切るか大根おろしがお勧め。1日540gの野菜と果物が食道がんを減らす。 とはいえ人間は雑食。「過ぎたるは及ばざるが如し」で①禁煙②酒はほどほど③バランスのとれた食事④適度な運動―ががんを防ぐ。健康診断も忘れずに受けてほしい。


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