広報誌 南東北

 

歯周病の予防・治療

欠かせない「歯石の除去」 口腔内の健康促進、歯失うリスク回避

 日本人の80%が患っているといわれる歯周病。歯周病の予防や治療には「歯石の除去」が欠かせません。定期的に歯科医を受診して歯石の除去を行えば、口腔内の健康は促進され、口臭は減り、歯を失うリスクも回避できます。 歯石の除去をあまりしてこなかった人もぜひ、このことに注意を向けてください。
 1g(耳かき1杯程度)の歯垢(プラーク)には、1000億もの細菌が存在します。人間の便1gに含まれる細菌が100~1000億ですから歯垢にはいかに多くの細菌が存在するか分かると思います。
 歯石は、歯に付着した歯垢に存在する細菌が唾液と結びつき、石灰化(カルシウムでできた石に変化)します。歯垢の石灰化は、歯垢の生成後4~8時間で始まり、早ければ1週間で歯石になります。
 困ったことに一度歯石になったらブラッシングでは取り除けません。しかも細菌がより繁殖しやすい環境を作り出します。このため歯石を除去しないで置くと口腔内の衛生状態は悪化する一方です。 歯石を作らないために歯石の元となる歯垢を口の中に残さないことがポイント。しかしブラッシングのみで歯垢を完全に排除することは難しいため、歯石を歯科医院で定期的に除去する必要があります。 歯石の除去にはスケラーという医療用器具が使われます。現在使われるスケラーは、手で歯石を除去するときに使う「手用スケラー」と超音波による振動を利用した機会で歯石を粉砕する「超音波スケラー」が主流です。
 歯石というと歯と歯の間に付着した黄味がかった白色のものをイメージすると思います。これは「歯肉縁上歯石」と呼ばれるもので比較的柔らかく、除去しやすい歯石です。 ただ歯石にはもう1種類、歯と歯肉の間にできる「歯肉縁下歯石」があります。歯肉に隠れて外からは見えませんが、血液成分を活用する細菌によって生成されるため茶褐色や黒褐色をしています。 歯肉縁下歯石は、3mm以上の深さのある歯周ポケット(歯と歯肉の間の隙間)にできやすくなっています。歯周ポケットが3mm以上あるとここに入り込んだ歯垢をブラッシングで除去することが難しいためです。
歯垢を口に残さないのがポイント 歯科医で定期的な歯石除去を
 歯肉縁下歯石は,治療しづらい場所にできるだけでなく、とても硬いので取り除くのが容易でありません。でもこの歯石をそのまま放置しておくと歯肉に細菌が繁殖、歯を支える骨(歯槽骨)を破壊して歯を失わせてしまいます。
 歯石の除去には、いくつかの疑問や誤解があるようです。
①「歯石を除去するときに歯も削られるのでは?」=歯は鉄よりもずっと硬いエナメル質でできています。歯石は硬いとはいえ鉄ほどではないため間違って歯が削られることはありません。
②「歯石を除去したら歯肉が減った?」=これは歯肉縁下歯石を除去すると歯肉の炎症が始まって腫れが引き、歯肉が引き締まった状態になるため歯肉が減ったように見えるからです。 むしろブヨブヨした歯肉をそのままにしておくと歯周病の悪化を招きます。歯肉が引き締まることで口臭の減少にも気づくでしょう。
③「歯石を除去した後歯がしみる?」=歯周病の進行が中~重度の場合、歯石を除去することで歯の根が露出し、歯がしみるということは起こりえます。歯石除去後の知覚過敏は、数日で治まることがほとんどですが、 数か月続くこともあります。その場合はしみる部分への薬剤の塗布や詰め物で症状を緩和させる方法が検討されます。注意点は、歯石を除去した後の知覚過敏によって受診をやめないことです。 歯石を除去するメリットは、非常に大きいということを忘れないでください。

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