広報誌 南東北

 

認知症 ~どこまで診断・治療できるか

症状早く見つけ、進行に歯止め 脳を働かせて認知症の予防

 総合南東北病院が21年前から毎月開催している医学健康講座の28年度講座が始まりました。新年度の1回目は4月15日(金)午後2時から同病院北棟1階NABEホールで南東北グループの渡邉一夫理事長・総長が 「認知症~どこまで診断・治療できるか」と題して講演しました。厚労省は2025年に患者は700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症になると予測しています。 講演の内容を要約して認知症とは、原因・治療・予防法などを学びます。
 認知症は急増しています。現在は300万人ほどですが、疑いがある人を含めると2000万人ぐらいです。特に女性が多い。長寿だからね。一番の原因は加齢です。 現在良い薬はありませんが、近い将来、認知症にならないように再生医療で脳細胞を治すということはできるかも知れません。 ある薬を体に入れてやるとダメになった神経細胞が繋がって手足が動くようになる可能性があります。そういう研究も進んでいます。
 では、どんな風になったら認知症を疑うのか。原因は90種類ほどあります。アルツハイマー病・前頭側頭型認知症・レビー小体病が3大認知症でアルツハイマー病が3分の2を占める。次のような症状が出てきたら対応が必要です。
①記憶障害=最近のことを忘れる、新しい情報を覚えきれない、結婚して苗字が変わったことを忘れる―など。
②意欲の低下=6割の患者さんは初期から。うつ状態、廃用症候群などで寝たきりになる例も。散歩や買い物への誘導、リハビリが必要。
③失認・遂行機能障害=親しい人が誰か分からない、手際よく料理を作れないなど手順よく作業ができない、銀行で金を下ろせない―など。
④人格変化・病識の欠如=共感の欠如や感情不安定、自分で病気の認識がない―など。頑固な人ほどなりやすい。
⑤夜間の徘徊=自分がどこにいるか分からない、暗くなると元気になる日没症候群となり昼夜逆転も。日中起きている工夫やディサービスを活用、睡眠薬はできるだけ使わない。
⑥幻覚=夕方や夜間に多く起き、不安で症状が強くなる。レビー小体型は妄想が激しく初期から見られる。頭から否定せず受け止めることが大切。
⑦常同行動と暴力=毎日決まった生活リズムや食事、散歩コースなどに執着が強い。常同行動を遮られたときに暴力が多い。パターン化された暮らしの維持、固執する特定場所への誘導などが必要。
⑧失語・失行=物の名前がアレ・ソレ・など代名詞が多く言葉が出てこない。使っていた携帯やカメラなどがある時操作できなくなる―など。

アルツハイマー病の予防には節酒・禁煙、高血圧・糖尿病等の一掃

 認知症は治すことは難しいが、遅らせることはできるので、こうした症状を早く見つけることです。なぜ認知症になるのか。 アルツハイマー病では前額にあるタツノオトシゴのような形で記憶を蓄積している「海馬」が萎縮すると認知機能が衰えます。脳全体も減っていきます。 考え、理解し、記憶、計画、実行、計算、判断、名前・日時・場所を覚え、話す、書くなどの高度な思考過程が変性する病気です。脳には300億個の脳細胞があるが、年齢とともに減ります。 女性は早く減り、男性は減るのが遅いです。診断は記憶の程度、海馬の萎縮有無、PET・スペクト、老人斑(シミ)、アミロイド(細胞を殺す毒)の沈着などによります。
 前頭側頭型認知症は物忘れが比較的軽いですが、早期に①順序良く仕事ができない遂行機能障害②終日同じことを続ける脅迫・保続行動③周囲への関心・同情心なし④脱抑制⑤食行動異常―のうち3つ以上ある時は、そう診断します。 認知症は遺伝的なこともありますが、脳の構造が壊れて認知症以外のパーキンソン病、脳卒中・脳梗塞・脳出血・慢性硬膜下血腫、ふらつきや手足の動き不器用などの小脳萎縮症、 進行性核上性麻痺などの症状が出た場合、神経内科で見てもらいましょう。
 認知症の治療は服薬と介護。正直いって効くのが3分の1、効かないのが3分の1、残り3分の1はどちらともいえません。必ず見られる物忘れ、判断力低下、時間と場所が分からなくなる、物事への関心が薄くなる、 幻覚・妄想・暴力・徘徊などの異常な行動の症状は薬でちょっと良くなるが、すごく良くなることはありません。根本的治療はないが、あと10年もしたら治る薬が出てくるかもしれません。 多飲や喫煙を止め、高血圧・糖尿病・高脂血症・脳卒中などを予防すればアルツハイマー病の予防に繋がります。


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