広報誌 南東北

 

成人の8割が罹患の歯周病

歯石除去などメンテナンスが重要 大人も子供も習慣づけたい食後の歯磨き

気づかないうち進行、歯を失う原因1位
 日本人の成人の8割が罹患したり、予備軍といわれる国民病の歯周病。 悪化すると歯は支えを失い抜け落ちてしまう病気で歯を失う原因の第1位です。 5月20日(金)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で南東北医療クリニック歯科の渡部光弘科長が 「歯周病について」と題して講演した内容を要約して、適切な治療で進行を抑えられる歯周病の治療や予防法を学びます。
 歯周病は、歯の周りの磨き残した歯垢(しこう、プラーク)により起こる歯肉(歯茎)の炎症が原因で歯を囲んでいる骨が溶けてしまう病気です。 昔は歯槽膿漏といったが、歯茎が赤く腫れ、歯がぐらつき、噛むと痛く最終的には歯が抜け落ちます。 歯垢は磨き残しが原因の細菌の塊で1mgの中に1億個の細菌がいるといわれます。 歯垢はうがいでは取り除くことができず、唾液中のカルシウムが取り込まれて硬くなり歯石に変わります。 深いところの歯石は、血液の成分も取り込んで更に黒く硬くなり、歯ブラシでは取り除けません。 歯肉炎が起き、歯石も付くと歯肉が赤く、腫れぼったくなり、歯磨きすると歯肉から出血、歯がグラグラして噛むと痛みます。 歯肉から膿が出てグラつきが大きくなると痛くて噛めず、歯を抜かなければならなくなります。
 歯周病治療は、歯石除去、歯周外科手術、歯磨きの指導・練習のメンテナンスが基本ですが、 まず患者さんに問診、X線で骨の吸収や虫歯の有無、ピンセットを使って歯の揺れなどを調べます。 歯が前後に揺れるのを1度、左右に揺れるのが2度、上下に揺れるのが3度で、動揺度が3度になると歯を残すのが困難です。
 プロービングといって歯と歯茎の間に器具を差し込んで歯周ポケットを測ります。 4mm未満は軽度、4~6mmは中度、6mm以上は重度の歯周炎と判断。10mm以上は歯を残すのが困難です。 炎症が骨に及んでおらず、歯肉(歯茎)に限局した状態を歯肉炎といいますが、歯周ポケットが10mm以上、動揺度が3度なら歯を残すのが大変困難です。
 歯周ポケットから出血があったときは、潰瘍を形成し始めているということなので治療の徹底が必要です。 ポケットにネバネバしたバイオフィルムが形成されていると大変。歯周病菌はバイオフィルムの中で繁殖し毒素が出されます。 そのバイオフィルムは血液中の鉄分を好むため歯周病が治りにくくなるからです。
 歯周治療の目標は潰瘍面の閉鎖。出血停止で血液中の鉄分が減り、歯周病菌が飢餓に陥って菌が減少、歯肉も安定します、 定期健診でその状態を保つことです。 歯周病と口臭の関係ですが、臭い物質の元は揮発性硫黄化合物です。 卵が腐ったような臭いの硫化水素、野菜が腐ったような臭いのメチルメルカプタンです。
 中でもメチルメルカプタンは治療後に数値が減少、治癒を阻害している元ともいわれます。 口臭の原因が全て歯周病というわけではないが、口臭が改善されれば歯周病が治ったともいわれるほどです。
 歯周病の治療は、繰り返しになりますが、歯磨きの指導・練習、歯石除去、歯周外科手術です。 歯磨きには、歯肉と歯に対しブラシを直角に当てるスクラッピング法、歯肉と歯の境目に45度で当てるバス法、子どもや磨けない人に適したフォーンズ法があります。 歯ブラシの持ち方は細かくコントロールできるペングリップが適しています。練習してください。 歯石の除去は超音波スケラーという器具を使って行います。ただしペースメーカーを入れている方には使用できません。 受診の際に申し出てください。歯周外科手術は、中度以上に進行の歯周病に適用、患者さんの納得を得て歯茎を開き歯の表面、骨の中をきれいにします。

【患者さんからよくある質問】
①歯ブラシの適切な交換時期は=概ね1か月。2週間で毛先が開くのは力が強すぎる。
②歯肉炎・歯周炎は歯ブラシで治るか=歯肉炎は治る。炎症が骨まで及んでいるのは治らない。歯石除去・手術必要
③歯磨剤は使った方がいいか=はい。虫歯予防のフッ化物配合、着色・汚れ落とし知覚過敏予防、歯周病予防などがあるが、特徴を理解して使用。
④洗口液、液体歯磨きとは=洗口液は口に含んでうがいするもの。液体歯磨きは口に含んで歯磨き、又は含んで吐き出した後歯磨きするものです。
⑤医薬部外品とは=スーパーなどで販売。殺菌剤などの有効成分を含んでいるものです。
⑥手用と電動、どちらの歯ブラシがいいか=一概にどちらともいえない。これから購入の方は音波歯ブラシがお勧め
⑦デンタルフロス(糸ようじ)は使った方がいいか=歯と歯の間の汚れを落とすのに大変効果的。可能なら使用お勧め。
⑧歯間ブラシは使用すべきか=歯間に無理なく入れば使うべき。無理には歯肉を痛める。
⑨歯周病と全身の病気との関連は=呼吸器系・心疾患、糖尿病、妊娠などが関連あり。呼吸器系は誤嚥性肺炎の原因になる。糖尿病は歯周病を悪化、抜歯した場合も炎症を起こしやすい。早産・低体重児出産の可能性を増加させる。
⑩タバコの影響は=その通り。血液への影響があり歯周病を治りにくくする。タバコに含まれる化学物質が歯肉を硬くして歯周病に気づかなくなる。ヤニが付くと歯垢が付きやすく歯肉も着色する。

 福島県の1歳半の虫歯数は0.075本で全国10位、3歳児は1.14本で全国ワースト1位。 中でも郡山市は中核市の中で1歳半がワースト3位、3歳児がワースト1位。3歳児は要注意のようです。 歯周病は歯垢を原因とする細菌感染症です。食後にきちんと歯磨きすることを大人も子ども習慣づけたいものです。 定期的に歯科医院でチェツクを受けることも大切です。


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