広報誌 南東北

 

成長期のスポーツ障害~その特徴と予防法~

正しい知識と原因分析で早期治療 成長期の体〝現場〟は正しく理解を

障害招く使い過ぎと間違った使い方 自分の体点検、小さなサイン見逃さないで
 スポーツの低年齢化があらゆる競技で広まるにつれ、過度な負担やトレーニングによるケガ、身体の痛みに悩む子どもたちが増え、社会問題化 しています。7月16日(土)に総合南東北病院で開かれた7月医学健康講座で同病院の大歳憲一スポーツ医学センター長が 「成長期のスポーツ障害~その特徴と予防法」と題して講演した内容を要約してスポーツに対する考え方、予防のポイントなどを探ります。
 今の子供たちの運動量は昭和40・50年代に2万~2万3千歩だった1日の平均歩数が、現在は1万~1万3千歩と半減。 これだけで運動量を把握できないが、子供たちの運動量は確かに減っています。
 体力低下に加え、活動的な子供と外で遊ばない非活動的な子供に二極化し基本動作の習得や身体活動量の差(幅)が拡大。 更に活動派の中でも複数スポーツの子供とスポーツ少年団でサッカーや野球など単一スポーツをする「スポーツの早期専門化」の子供の二極化が進んでいます。 早期専門化で特殊能力を備え小学校から全国大会で活躍する例もあるが、同一運動の繰り返しにより ①跳ぶ、走る、つかむなどの基本運動要素の欠如 ②使い過ぎによる障害発生 ③早期の燃え尽き ④早期のリタイア(飽き)―など弊害も起きています。 できれば早期専門化せず、多くの動作を覚え、運動能力向上が期待できる複数のスポーツを経験するのが望ましいといわれています。
 子供時代の野球肘後遺症で手がしびれ、顔が洗えない、ネクタイが結べない元高校球児。 中学時代の骨折が見逃されてプロ入り後、バットも振れずパフォーマンスに影響が出たプロ野球選手―など様々。 スポーツ障害が起きるとパフォーマンスや戦術に影響したり、スポーツ生命に関わるが、その割に選手やコーチ、保護者など「スポーツ現場」は スポーツ障害への知識や原因分析が不足、「休めば大丈夫」程度にしか考えていない意識の低さ、不十分さが課題です。  成長期の野球肘発症原因に小学生が週に350球以上、高校生が700球以上の投球過多が時々問題になります。
医療側は「現場」にもっと障害に対する正しい知識と予防意識をもって―と願います。 肩や腰、腕などの異常を早く現場で見つければ成長期の骨は治りも早く、早期治療で早期復帰も可能だからで将来のパフォーマンス低下や再発も防げます。 身体機能の異常や体の硬さ、動作異常など機能面へのアプローチが重要です。  成長期の体は ①骨の先端に骨端線と呼ぶ軟骨がある ②骨・軟骨は成人より柔らかく、しなやか ③急成長する―が特徴。
骨は柔らかく剥がれやすく、強く引っ張られたり、圧迫で折れたり傷ついたり骨や軟骨の障害が多く、後遺症化要因になる。 成人と子供の違いを理解することが大切です。
 転んで足をケガしたような一般的な傷害は日常生活復帰が目標で治療期間もゆっくりできるが、スポーツ傷害は競技復帰が目標。 スポーツは止められないし治療期間は早める必要があります。 スポーツ傷害の原因は個人の身体的・心理的な内的要因と練習量や練習法、雨風等の自然環境、用具や履物など外的要因があります。 実際には様々な要因が重なって起きるため一つ一つ原因を潰して治す工夫が必要。 投げ過ぎで肩の筋肉が硬く腕が上がらない、プロを真似て体を痛めた、間違った練習法で投球フォームを乱した ―のに全力投球していれば肩のストレスで障害が起きるのは当たり前。これらの原因を丹念に分析しフォームを治し改善すれば再発防止、障害予防にもつながります。
 身体機能の硬さは姿勢・関節のアライメント(配列)、体の柔軟性、筋力、バランスで評価します。 下肢アライメントに影響を及ぼす因子では足が大きな要素。例えば膝痛の選手の膝が腫れてないのに足首がX脚の回内足や偏平足、ハイアーチ構造の場合〝下から〟配列に影響。 また股関節の外転筋力や回旋筋力の低下で“上から”影響する場合もあります。 片足立ちで膝を曲げた時、筋力の低下があれば反対側の骨盤が下がり、傾いて捻挫などのケガが心配です。
 上肢では肩の突出・下がり、下角の突出や肩甲骨前傾の有無を見ながら肩甲骨の柔軟性や安定性を調べ、 肩甲上腕関節の挙上・水平内転制限などで肩の硬さを見ます。柔軟性は小指、手首、肘、膝、体幹など全身関節の弛緩性で評価。 お辞儀して床に手が届かないだけでは体の硬さは分からないが、前屈がダメでも手首が柔らかければ「弛緩性あり」の素質も評価できストレッチで改善も見込めます。
 選手は自分の体のチェックが大事。朝起きた時や寝る前、トレーニングの間に自分の体の違いに気づき、早く障害の原因を見つけることです。 ストレッチやエクササイズなどもやり方が間違っていないかチェック。正しくないと効果はありません。 体幹トレーニングではお腹に力が入っているかどうか。目的を正しく理解、自己流でない正しいやり方を身につけましょう。


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