健康の知識
BSE問題とトレーサビリティシステム
 

◆トレーサビリティとは
 英語の「trace・追跡」と「ability・可能性」を合わせた言葉で、直訳すれば「追跡可能性」となります。現在では「履歴情報管理」という意味で使われており、生産・飼育、処理・加工、流通・販売の各段階で、食品そのものとそれに付随する情報を追跡し、さかのぼって知ることができる仕組みをいいます。
 
◆牛肉トレーサビリティ法
 '02年9月日本初となるBSE(牛海綿状脳症)が発生したのをきっかけに、BSEの検査体制を確立するのと同時に、牛の生産履歴をきちんと管理する必要に迫られ、現在、日本で飼育されているすべての牛に10桁の個体識別番号を付し、食肉処理されるまでその番号が付いてまわる仕組みができました。
 '03年6月に、いわゆる「牛肉トレーサビリティ法」が成立し、'04年12月以降に食肉処理された国産牛肉には、流通や小売り段階においても個体識別番号が表示されています。
 
◆牛肉以外のトレーサビリティシステム
 ここ数年、食品の産地偽装などの問題が数多く発生し、食品の生産履歴について、より詳しい情報提供を求める消費者が増えています。この要望に応えて、食品の生産情報について消費者に伝える「生産情報公表JAS規格」制度がスタートしており、'03年12月から牛肉で、'04年9月から豚肉で実施されています。
 
◆トレーサビリティの意義と目的
 トレーサビリティシステムが整うことにより以下のような効果が期待されます。
安全性向上への寄与 
 食品事故の際、迅速な原因究明や商品回収が可能になり、被害を最小限に食い止めることができる。 
信頼性(安心感)の向上
 経路の透明性の確保及び消費者と取引先・生産者等との積極的な情報交換が可能。つまり生産者(製造者)と消費者の「顔の見える関係」構築につながる。
業務の効率性への寄与
 在庫管理などの製品管理や製品の品質管理の向上が期待できる。

 

◆トレーサビリティの問題点
 現在、一部の大手スーパーマーケット等では自社ブランド野菜などにトレーサビリティシステムを採用していますがこれを市場全体に拡大するには、
@技術及び効果と経済性とのバランス
Aシステムの信頼性の確立
B消費者への適切な情報提供
 以上の課題があります。
 

◆消費者の利益にかなうシステム構築を
 いくら技術的に優れていても、かかる費用が膨大であったり、提供される情報が信憑性に欠けるものであれば、消費者の利益とはなりません。また、トレーサビリティは食品の追跡・遡及システムにすぎず、衛生管理(HACCP※1)や適正農業規範(GAP※2)などと結合して初めて「安全のためのシステム」として機能することも忘れてはならないことです。

※1「危害分析重要管理点」と訳され、原材料の段階から消費者の口に入るまでのすべての工
   程で、徹底した安全管理を行うというシステム
※2農作物の生産において、栽培だけでなく、輸送なども含め、すべての段階で、安全性・品質
   確保を求め管理する取り組み

国民生活センター 『くらしの豆知識2006年』 より
 
 
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