人には言えない困った症状
 「病的賭博(ギャンブル依存症)」

◆病的賭博(ギャンブル依存症)とは
 一般的に「賭博にのめり込んでやめられない人は、意志・精神力が弱い」とされていますが、病的なギャンブル行為(以下、賭博)は精神医学的にはっきりとした病気なのです。
 賭博には、娯楽の範囲ですむものから病的な賭博まで幅があり、場合によっては詐欺や窃盗など、犯罪と結びつく深刻な問題を抱えたものもあります。
 病的なほどのめりこんでしまう、一般に「ギャンブル依存症」といわれている病態は、精神医学的には「病的賭博」と命名されています。
 定義は「持続的にくり返される賭博行為で、その結果、社会的、職業的および家庭的生活に破綻をきたしている状態」です。
 具体的にいうと、「賭博をしたいという強い衝動を抑えることが困難であり、賭博行為やそれを取り巻く状況が頭から離れなくなる。その結果、自分を危機に陥れ、多額の負債を負い、嘘をついたり、法律を犯したりして金銭を得たり、あるいは負債の支払を避けたりすることがある。この衝動は、生活にストレスが多くなるとしばしば増強するが、賭博による金銭の損失や負債が新たなストレスとなり、悪循環を形成しやすい」ことです。
◆なぜ賭博行為におよぶのか
 賭博行為をくり返す理由には、
@純粋に快感を求めて賭博を行う場合
Aいやなことを忘れたいがために賭博を行う場合
の2つのパターンがあります。そして、後者のほうが依存はより強化されやすい、といわれています。
 つまり、問題から逃避する手段として、不快な気分(無気力、罪悪感、不安、抑うつ、怒り)を解消する手段として賭博をすることが、病的な賭博を完成させてしまうのです。
 治療的には、どのような状況で不快な気分に襲われてバランスを崩すのか、精神科の面接をとおして整理・理解していくことが大切になります。また、その不快な気分を賭博以外の方法で解消できるようにすることが重要になります。解消方法が1つに固定されるとまた新たな依存症ができあがってしまうので、1つでも多く解消方法を探しだすことが必要です。
◆悪循環を断ち切るために
 賭博依存のある人たちは、一見おとなしそうで、賭博行為のときに激しく興奮している姿などは想像もつきません。激しい怒りの感情などないのでは?と錯覚しそうになります。
 逆にいえば、本来ならあって当然の怒りの感情を自覚したり言葉で表現することができず、賭博という行動でしか表現できない、といえるかもしれません。理不尽に叱責されても自分が悪いからと考えたり、建設的な意見を思いついても相手を批判することになってしまうと考えてしまう傾向が強いため、いつまでたっても自分の考えに自信がもてず、いっこうに自己評価が高まりません。その結果、常に不安や無力感、むなしさにさいなまれることになります。一時的にでもこの不快な気分を紛らわせてくれるのが賭博です。しかし、損をすることがほとんどですから、終わったあとはさらなる自己嫌悪に陥ります。
 この悪循環を断ち切るには、いかに自分の言葉を伝えたり自己主張をできるかが大切になってきます。どれくらいの期間でそれができるようになるかは人それぞれですが、変わろうとする気持ちがあれば、必ず悪循環を断ち切ることができます。
 
トップページへ