認知症とは、脳に病変があったり、加齢に伴って脳の機能が低下するために起こると考えられています。  
 脳の病変が原因となるものには、アルツハイマー病によって起こるものと脳卒中のため、脳に障害をきたすことによって起こるものとがあり、認知症の多くを占めています。   
 アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の内外に異常なタンパク質が蓄積して神経細胞の働きが失われ、神経細胞の数が減ってしまうために起きてきます。  
原因は全てが解明されているわけではありませんが、体質的なものや、生活習慣病や生活様式などによっても病気が始まる時期が左右されることがわかってきています。現代ではアルツハイマー型認知症は進行を遅らせる治療が可能です。
 一方、脳梗塞や脳出血の後に認知症が起きる血管性認知症は、65歳以上で脳血管障害を起こした人のおよそ4割に認知症が起きるといわれています。ですから、脳血管障害の予防に努めることが血管性認知症の予防につながります。また、高齢者の転倒事故での脳の損傷にも注意が必要です。  
 
〔認知症にならないために〕
 認知症につながる病気を防いだり、環境を考えたりすることは認知症を予防する上でとても大切なことです。生活習慣病にならないように日頃から栄養のバランスに気を配り、適度な運動を心がけてください。
 
〔認知症のきっかけになりえること〕
◆定年退職などで生きがいを失ったり、配偶者を亡くすこと
◆引越しなどで新しい環境になる
◆足腰が弱くなり、出歩くことが少なくなる
◆同居などをきっかけに家事などの仕事を奪ってしまった場合
 
高齢者は新しい環境や今までと異なった生活のリズムに直面したとき、なかなか適応できない状況になり、孤独感や喪失感に苛まれ、塞ぎこんでしまいがちになります。単調な生活になってしまわないように趣味を持ったり、人との付き合いに参加したり、楽しい時間を過ごすことが生きがいにもつながります。
 
 
―認知症の症状―
 次のような症状が数ヶ月経っても改善されない場合は認知症が進んでいる可能性が大きいので、すぐに医師に相談しましょう。
同じことを何度も言ったり、聞いたりする。
新しいことを覚えられない、以前のことを思い出せない。
物や人の名前が出てこない。
時間や日付が不確かになる。
慣れている場所で道に迷う。
ささいなことでもすぐに怒るようになる。
今までの日課をしなくなりだらしなくなる。
服の着方や道具の使い方がわからなくなる。
今までの日課をしなくなりだらしなくなる。
薬の管理ができなくなる。
被害妄想がひどくなる。
同じ物をしょっちゅう買ってくる。
食事をとったことを忘れる。
水を出しっぱなしにしたり、ガスを消し忘れたりする。
 
家族が認知症になると、最初家族は戸惑い、認知症であることを否定しようとします。次に混乱したり怒りの感情が出てしまったり、拒絶したくもなります。しかし、このような感情を認知症の人にぶつけると、相手を探く傷つけ、認知症を進行させてしまうことになりかねません。早く認知症を理解し、心のこもった介護をしなければ介護をする側もつらくなる一方です。
 
主な問題行動とその対処法
認知症の人は、しばしば家族を振り回すような問題行動を起こすことがありますが、問題行動を起こしたときはすぐに認知症のせいだと決め付けず、その原因を探ってみることが大切です。多くの場合、その原因は生活の中にあり、体の不調や異常、人間関係や環境の変化などが引き金になっていることがあるのです。

介護拒否
介護は身体接触が多く、入浴や排泄、着替えの介助を嫌がることがあります。入浴や着替えを嫌がる理由に家族の手を煩わせることが心の負担になっている場合や、裸になることへの抵抗、どういう手順でお風呂に入ればいいのかを忘れてしまっていることもあります。家族と一緒に入浴したり、無理矢理ではなく、嫌がる日は体を拭くなどしてあげましょう。
 
妄想
実際には無いことを現実に起きていると思い込んでしまうので、「お金を盗まれた」「嫁にいじめられている」など、家族はかなりの精神的ストレスを感じることになります。認知症は記憶の障害をはじめとした様々な障害のため、このような妄想が起こります。このような場合はデイサービスやショートステイなどの利用をして、本人と少し距離を置くことも一つの方法です。あまりにもひどい被害妄想が現れたり、介護者に手を上げたりする場合はすぐ医師に相談しましょう。
 
徘徊
ウロウロと歩き回る「徘徊」ですが、無理矢理止めようとするのは逆効果。できればしばらく徘徊に付き合い、タイミングを見計らって、他のことへ関心をひきつけて見ましょう。夜中や目を放した隙に出て行ってしまうので、安全対策を講じる必要があります。

・衣類の内側に住所氏名などを記載したものを縫い付けておく
・近所の人に事情を話しておく(最寄の交番やお店の人などにも事情を話し協カしてもらう)
・出入がわかるようにドアベルをつけたりエ夫をしましょう
 
異食
食べるものか否かの認知、判断ができないために、食べ物ではないものを口にいれてしまいます。生活の場には口に入れると危険なのものがたくさんあるので注意が必要です。薬などの危険なものは手の届かないところや鍵のかかる場所に保管するようにします。
 
認知症のうち脳血管性のものは、体の動きも衰えていることが多いのですが、アルツハイマー型は、体力があまり衰えていないので、問題行動が激しくなるのが普通です。人格の尊厳を傷つけないようにし、状態に合わせたケアが必要です。症状が激しい場合は専門の施設やグループホームなどの利用も考えてみてはいかがでしょう。
 
  
 
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