食中毒は、細菌やウイルスなどの病原微生物や寄生虫によって起こる食中毒、自然毒による食中毒、化学物質による食中毒の3つに大別できます。
日本で保健所に届けられた食中毒は、病原微生物によるものが最も多く、50%以上がノロウイルスによる食中毒で、細菌による食中毒では腸炎ビブリオ・黄色ブドウ球菌・サルモネラ菌などが多くなっています。
ノロウィルスを病原体とし、潜伏期間は1〜2日、嘔気・嘔吐・下痢を主症状とし、腹痛・発熱を伴うこともあります。
これらの症状は通常1〜2日で治癒しますが、糞便中には3〜7日間ぐらいウイルスが排出されるので、他の人への強力な感染源となるので注意が必要です。
生カキなどの二枚貝などを食べたことによる食中毒として知られていますが、今日では、食品取扱い業者や調理人によって汚染された食材による食中毒の症例が多く、外食や仕出し弁当などが原因となっているため、患者は全年齢層にわたり増えています。
ノロウイルスは、85℃1分以上の加熱で死滅するので、食器やまな板、包丁などの消毒も熱湯消毒の必要があります。
二次感染を防ぐためには、排便後の手洗いを十分にします。
特に、食材や食品を取り扱う立場の人は食品を取り扱う前の十分な手洗い励行(石鹸で1分以上しっかり洗う)が必要です。
また、患者の吐物には多くのウイルスが含まれているので、嘔吐した場合には、次亜塩素酸ナトリウムを用いて迅速かつ適切に嘔吐物の処理を行うようにします。
ブドウ球菌には多くの種類がありますが、このうち肺炎や肺血症をおこし、化膿性疾患の原因となる黄色ブドウ球菌によっておこる食中毒です。
黄色ブドウ球菌は自然界に広く分布しており、健康な人の皮膚や喉などにも存在します。特に、調理する人の手や指に傷や湿疹があり、傷口が化膿している場合は食品を汚染する確率が高くなります。この菌が調理する人の手から食品に付着し、汚染された食品の中で菌が増殖して毒素が産生され、それを食べると発症します。
急な嘔気・嘔吐・上腹部の痛み・水様性の下痢などの症状があり、発熱はしません。
嘔吐と下痢が激しいので、脱水で血圧が低下する場合もあります。
予防するには、調理をする時に唾液が食品に飛び散らないようにし、手に傷のある人はゴム手袋を使うようにします。
サルモネラは自然界の様々な環境に生息しています。特に、ニワトリ・牛・豚などの家畜が腸管内にこの菌を保菌していて、これらの動物から生産される食品が、その糞便などを介してこの菌に汚染されると、食中毒の原因となります。中でも多いのは鶏卵で、これを原料にした生菓子や二次感染による食中毒もよく起こります。
潜伏期は10〜20時間で発熱・嘔吐・下痢・腹痛が起こります。嘔吐がなく下痢だけの時もあります。数日〜1週間ほどで回復しますが、ショック状態に陥ることもあります。
特に、乳幼児は疫攣を起こしたり、ショック状態になる可能性が高いので注意が必要です。
犬・猫・ネズミ・ゴキブリなどは、サルモネラ菌を持っているだけでなく、運搬もするので食品を汚染されないよう貯蔵することも大切です。
腸炎ビブリオは、海水と淡水が混じり合う汽水域を中心に沿岸の海水中に棲息する細菌です。
主として腸炎ビブリオで汚染された海産魚介類や水揚げ後の取扱いの悪い魚介類を食べることによる食中毒です。これらを食べて数時間から十数時間後に下痢と腹痛がおこります。嘔吐や発熱を伴うこともあります。
他の食中毒に比べ、発病初期は重症になる傾向があります。
夏季に多発するので魚や貝類は加熱調理しましょう。調理した後のマナ板や包丁は消毒し、使用する前もよく洗いましょう。
※食中毒かなと思ったら、医療機関を受診することが原則です。
下痢や発熱、嘔吐は体の水分を失うことになるので、水分の補給を心がけ、脱水症状に陥るのを防がなければいけません。
体力のない高齢者や幼児は特に重症になりやすいので注意して下さい。