血液中の脂質が多すぎる状態「高脂血症」

 高脂血症は生活習慣病の一つで、食生活が大きな影響を与えています。現代の日本人の食生活は肉類が多く、脂肪の割合が高い欧米式の食生活になっているうえ、体を動かすことが減っています。  

 高脂血症は血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態で、徐々にコレステロールが血管壁にたまり、血液内腔を狭めて「動脈硬化」を促進し、やがて「心筋梗塞」「狭心症」「脳梗塞」などを引き起こし、命を脅かすことになりかねない状態です。

 また、中性脂肪が高いと、急性膵炎を起こし、それによって命を落とす人もいるのです。高脂血症には三つのタイプがあります。

(1)高コレステロール血症

  血液中のコレステロールの総量が多い

(2)高中性脂肪血症

  血液中の中性脂肪が多い

(3)混合型

  コレステロールと中性脂肪の両方が多い

 健康な人の血液中には常に適度のコレステロールや中性脂肪が含まれています。どちらも欠かせない栄養素です。しかし、動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品の食べすぎや運動不足の生活を続けていると高脂血症を起こしやすくなります。

 

高脂血症から動脈硬化へ

 動脈硬化は健康な人の血管でも、年齢を重ねることにより徐々におこるものではあるのですが、高脂血症になると動脈硬化が早く進行し、危険度が増します。 血液中に増えすぎたコレステロールは、比較的短期間で血管壁にたまります。そのため線椎化する時間がなく、軟らかく破れやすい塊になり、この塊が何らかの原因で破れると、破れた部分を修復しようと血液中の血小板が集まって血栓ができ、血管を塞ぎます。心臓の冠動脈が詰まると心筋梗塞、脳動脈が詰まれば脳梗塞となります。

 動脈硬化は自覚症状がないまま進行するため、動脈硬化ができているのかどうかを症状から知ることは困難です。ですから予防することが重要になります。

 

高脂血症の検査

 高脂血症は血液中の脂質の値を測定し、診断します。

  1. 総コレステロール
  2. LDLコレステロール
  3. HDLコレステロール
  4. 中性脂肪(トリグリセリド)

の4つの値で、日本動脈硬化学会のガイドラインの診断基準は次のうち1つでも当てはまると高脂血症の治療が必要かどうか検討されます。

診断基準

 健康診断などの血液検査で診断基準にあてはまったら医療機関を受診することが大切です。診断基準にあてはまっていても、自覚症状が無いために受診しない人が少なくありません。しかし、そのまま放置していると動脈硬化を引き起こし、命を脅かすことになりかねません。必ず受診し、適切な治療を受け、生活習慣を改善することが大切です。

 

高脂血症の治療の基本は生活習慣の改善

 長年の食生活や運動不足から高脂血症を引き起こしている場合、その生活習慣を変えるのは難しいことです。

 できることから始めて、長く続けられるように治療法を担当医師や栄養士、トレーナーなどと相談し、治療に取り組みましょう。  

 薬物療法を行う場合も食事や運動の生活改善を忘れてはいけません。

 

食事療法

 最も重要といえる食事療法、次のことに注意します。

 長年の食生活で、肉類などの脂肪が多い食品やコレステロールが多い食品を満腹まで食べないと気がすまなかった人にとって食事制限は辛いものがありますが、徐々に体が慣れてきます。

 

覚えておこう 1

 満腹感をもたらす食物繊維を多く含む食品を食事に取り入れる。EPA・DHAが多い青背魚を食卓に!  

 食物繊維には、水溶性と不溶性があります。水溶性の食物繊維は、こんにゃく、海藻類、果物、野菜などに含まれており、血中のコレステロールを減らす働きがあります。

 不溶性の食物繊維はきのこ類、野菜、豆類、芋、果物などに含まれ、食べることで満腹感をもたらし、食事量を減らすことができます。便通も整えます。

 青背魚(さんま、いわし、あじ、さばなど)に多く含まれるEPAやDHAは中性脂肪を減らしたり、血栓をできにくくする作用があります。

 オリーブ油や菜種油に多く含まれているオレイン酸は酸化しづらく、HDLコレステロールを減らすことなくLDLコレステロールを減らす働きがあります。

 

覚えておこう 2

 高脂血症の人が控えたい食品は飽和脂肪酸の多い食品、コレステロールの多い食品、糖質の多い食品。  動物の脂に多く含まれる飽和脂肪酸は、血中コレステロールを増やします。(ラード、バター、生クリーム、チーズなど)  

 コレステロールの多い食品の代表は卵の黄身で、鶏卵1個で1日のコレステロール摂取量300mgをとってしまいます。しかし、鶏卵はとても栄養価の高い食品なので、コレステロール値の高い人は、1日1個以上食べない、他のコレステロールを含む食品を食べる時には控えるようにするなどの工夫が必要です。魚卵(イクラ・たらこ・かずのこなど)や、牛、豚、鶏の内臓もコレステロールが多く含まれています。糖質はエネルギー源としてなくてはならない栄養素ですが、必要以上に摂取すると、脂肪として体内に蓄えられます。ジュース、果物、ケーキ、砂糖を使った甘いお菓子などは控えましょう。

 

運動療法

 歩いたり体を動かす機会が減った現代社会では、運動不足の人が多くなっています。  

 運動といっても色々とありますが、生活習慣病の予防や治療としての運動は、月2回のゴルフや週1回のジムなどではなく、毎日適度に体を動かす運動、つまり、あまり激しくない有酸素運動を続けることです。今までの生活習慣で運動不足で肥満気味の人が急にジョギングやマラソンなど激しい運動をすると命に関わることも少なくありません。運動療法の基本は「無理なく続けることができる」こと。まずは日常生活で歩く量を増やしましょう。

 ウォーキングなどの有酸素運動は、エネルギー代謝を活性化させ、内臓脂肪を効果的に減少させます。

 ただし、すぐに効果が現れるわけではないので継続させることが大切です。

 

メディカルチェックを受けましょう

 運動する前には必ずメディカルチェックを受けましょう。特に心臓に疾患のある人や、以前病気をしたことがある人、高齢者は医師のチェックを受けて下さい。

 

 

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