自動車事故でおこりやすい「むち打ち症」

 頚椎捻挫は一般に「むち打ち症」または「むち打ち損傷」と呼ばれています。これは、自動車などの追突事故や、ラグビーなどのスポーツ中の事故が原因で、首が鞭のようにしなり、それについて重い頭部が振られるために起こる首の骨(頚椎)の関節の損傷です。怪我の程度は追突された方向や速度によって変わりますが、最悪の場合は頚椎骨折という事態に至ります。

 

自動車事故の場合

 自動車事故の場合、追突された自動車に乗っていた人の体は進行方向に移動しますが、頭は元の位置に留まろうとします。そのため首が「く」の字型にしなり、頭は後ろに反る格好になります。次に反動で頭は前方に振られ、首は「く」の字とは反対方向にしなります。 正面衝突の場合は、体、首、頭の動きが追突とは全く逆になります。いずれの場合も重い頭を支える首が無理な形にしなり、頸椎の関節が損傷を受けるのです。  

 軽度の場合は、筋肉を損傷するに留まり、事故後数時間してから、首を動かせなくなったり、動かすと痛んだりします。

 損傷が筋肉だけでなく、じん帯に及んだ場合は事故直後からはっきりとした痛みが現れ、次第に強まりながら後頭部や肩、腕などに広がります。強い痛みは数日でたいていは治まりますが、その後全身の倦怠感や頭痛、吐き気などの症状が1カ月程度続くことがあります。

 じん帯が断裂してしまうような重度の場合は、首や肩の痛みとともに頭痛やめまい、吐き気、視力障害などの症状が現れ、回復までにかなりの時間がかかります。

 

頸稚捻挫には大きく分けて4つのタイプがあります

1.捻挫型

 首や肩の痛み、動かしにくいなどの症状で頸椎捻挫の70%〜80%はこのタイプです。X線などで撮影しても頸椎に異常は発見されませんが、椎間板に小さいヒビが入ったり、じん帯に小さな断裂ができている可能性が考えられます。

※首の安静を保つことが第一です。

2.神経根型

 首の痛みや腕の知覚異常を主な症状とするタイプです。椎間孔から出て腕のほうに伸びている神経が、上下の頸椎に挟まれるために起こるもので、首を曲げたり、咳やくしゃみをしたときに強く感じるのが特徴です。 後頭部や顔面の痛み、ベールを被ったような顔の違和感などを感じる人もいます。

※2〜3週間は首の安静を保つようにします。1ヵ月以上神経の圧迫症状が取れない時は頚椎の検査をし、椎間板の脱出などがあれば手術をすることもあります。消炎鎮痛薬の内服や頚椎のけん引、マッサージなどの理学療法、ペインクリニック(痛みをとる治療)などが行われます。

3.脊髄型

 脚のしびれや知覚異常など、首よりも脚の症状が目立つタイプです。 脊髄が損傷されるため歩きにくくなったり、尿や便が出にくくなったりします。

※2〜3週間は安静にし、症状に合わせた治療を行います。

4.バレ・リーウー型

 後頭部やうなじの痛みとともに、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害、目の痛み、声枯れ、飲み込みにくいなどの症状があるタイプです。これらの 症状は自律神経系の働きが異常になって起こるものです。事故後適切な安静が保たれないと起こりやすいといわれています。

※薬で頚骨動脈の血行を促進したり、症状によっては類推をけん引したり手術を行うこともあります。

 

自動車事故などにあった場合は放置せず、すぐに整形外科などを受診しましょう。

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