広報誌 健康倶楽部/2010年4月号

ひどい物忘れは認知症の兆候?

 ほとんどの認知症は、いつとはなしに始まっています。 特にアルツハイマー病ではそれが特徴の一つといえます。 高齢になると、物忘れが増えていき、年のせいと長年放置していると、認知症が進んでいたというケースがとても多いのです。

短期によくみられる言動の異常

認知症

(1)同じことを何度も尋ねる、言う

 数分前から何日か前ぐらいのことをすぐに忘れてしまいます。これを近時記憶の障害といいます。今しゃべったこと、聞いたことを瞬間的に覚えておく記憶力は初期には保たれていることが多いので、相手の話に調子を合わせることはできるのです。  

 しかし、ちょっと前のことを忘れるので、同じ話のくり返しが目立つようになります。老化現象としても時に見られることがありますが、頻繁ではありません。

(2)電話などの用件が通じていない

 物忘れがひどくなると、電話などで用事を頼んでも、その場の返事はよいのですが、まったくできていないといったことがよくあります。また、初期には電話番号を見て電話をかけることは普通に出来ますが、電話を受けて取り次ぐと、誰からの電話でどんな用件なのかを忘れます。

(3)約束の場所に来れない

認知症

 待ち合わせ場所と時間を決めても、いつまでたっても来ない。その時間に本人は家にいて「そんな約束してたっけ?」と忘れています。また、約束とは別の場所で待っていたということもあります。約束が通じない、約束しても間違えるといったことがあるときは、認知症の症状の可能性が高いでしょう。

(4)電車やバスなどに乗っても降りる駅を間違える

 乗る駅はほぼ問題ないのですが、しばらく乗っているうちに、ふと記憶が途切れ、どこに行くのかわからなくなったりしてしまいます。そのため、一瞬パニックになり、次の駅で降りたり、乗り過ごしてしまったりします。ひどくなると帰り方がわからなくなって迷子になってしまいます。

(5)通いなれた道でも迷う

 近くのスーパーなど通いなれた場所に出かけても、道に迷ってしまいなかなか家に帰って来れなくなったりします。

 認知症疾患の初期に見られる共通の症状は「ひどい物忘れ」です。しかし、ひどい物忘れの症状が出ていても、認知症と気づく家族は少なく、年のせいで物忘れしていると思ってしまうようです。認知症がある程度進んで、記憶障害以外のほかの認知症の症状が加わって日常生活に変調が現れてから、ようやく気づくことが多いようです。  

 家族が少しでも変だと感じた時が受診の時期です。早めの受診は認知症の早期発見に役立つばかりでなく、その先に生じることが予想される認知症の人の様々な異常行動や精神的不安を未然に防ぐのに役立ちます。また、家族の対応の仕方も変わるでしょう。 家族が認知症の兆候を見過ごさないことが大切です。

【老化予防に手足を動かしましょう】

体の動きは脳が司っています。普段からこまめに体を動かすことが脳を活発にします。高齢者は体を動かさずにいると、すぐに筋力が低下します。特に脚の筋肉は萎縮しやすいので、積極的に散歩に出かけたり、体操を行いましょう。また、脳を刺激するには指先を使うことも大切です。

指先をこまめに動かす、手芸や園芸、楽器の演奏など、楽しみながらできることをはじめましょう。

健康倶楽部トップページへ

総合南東北病院トップページへ