広報誌 健康倶楽部/2010年9月号

腰痛の原因や症状・治療にいたるまで

 腰痛には、背中や腰の骨、筋肉の異常から発症するものや、うつ病や心身症ストレスなどの精神的なものが関わっているもの、内臓の疾患から発症している場合など原因はさまざまです。   

 ほとんどの人の腰痛が背中や腰の骨や筋肉の異常から発症している整形外科的腰痛と呼ばれるもので、日常生活での長時間の悪い姿勢、運動不足、長時間労働、過激な運動、加齢などによって筋肉が疲労したり、緊張したり、脊椎に変性が起きたりすることで痛みが起こります。また、多くの場合、背筋が痛みを伴って硬くなります。 

 精神的なものが関わっている腰痛は、痛みの程度が変わったり、痛む場所も移動したりして、患者さんの訴えもさまざまです。診察や検査を行っても、脊椎などに明らかな異常はみられません。このような場合は、一度、精神科を受診したほうがよいでしょう。

 

内臓の病気から腰痛が起こる場合に考えられるものとしては… 

・尿路結石や腎盂腎炎などの泌尿器系

・胃や十二指腸の炎症性疾患などの消化器系

・胆のうや膵臓疾患などの内分泌系

・腹部大動脈瘤などの循環器系

・子宮内膜症などの婦人科系

・内臓のがんによる腰椎骨転移

 

 などの病気が原因になっている場合があり、また肥満も原因のひとつです。内臓に脂肪がつくと腹部の重心が前方にくるため、それを支えるために体を後ろに常に反らす姿勢となり、脊椎や背中、腰の筋肉に負担をかけることになってしまいます。 

 腰痛の他に発熱や嘔吐、血尿、不正出血などの他の症状がある場合は内科や婦人科を受診しましょう。

「前屈障害型腰痛」と「後屈障害型腰痛」 

 腰痛には、起こり方とは別に腰を前に曲げると痛み、症状が悪くなるタイプを「前屈障害型」といい、腰を後ろに反らすと痛み症状が悪くなるタイプを「後屈障害型」といいます。

 一般的に多いのは「前屈障害型腰痛」で、このタイプの患者さんは長時間にわたって腰を前に曲げている姿勢や中腰の状態で長時間いるといった不良姿勢をしていたりすることが多く、さらには腰をひねった、不用意に物を持ち上げたなどの動作がきっかけとなったりして腰痛症になったと考えられます。このように、日常生活や動作によって、腰椎の椎間板や靭帯、椎間関節、背筋などに負担を与えてしまい、腰痛を起こすのです。

 前屈障害型腰痛の患者さんの多くは、働き盛りの人たちです。仕事における姿勢が腰痛にかかわっていることが多く、デスクワーク、タクシーやバスの運転手、農業従事者などの大半がこのタイプの腰痛を経験しているようです。

 一方、後屈障害型腰痛は、高齢者に多くみられます。加齢とともに変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの患者さんが増えてきます。これらは、前屈障害型とは逆に腰を後ろに反らすと痛くなります。変形性腰椎症は、脊椎の老化によるもので、年齢とともに椎間板の中心に入っている髄核の水分が少なくなり、クッションの能力が低下します。

 そのため、過重な力が加わるようになり、椎体に棘のような骨の出っ張りができ、神経を刺激したり、圧迫して腰痛を起こすのです。

 朝起きて動き始めに痛くなり、しばらく動いていると比較的楽になります。ひどくなると坐骨神経痛や下肢のしびれなどの症状を伴うこともあります。

 腹部脊柱管狭窄症は、椎体の後ろの脊柱管が加齢などの原因で狭くなり、脊髄の神経根などを刺激して腰痛や下肢の症状が起こるものです。歩行にも障害が出ることもあります。

「前屈障害型腰痛」の治療

 前屈障害型腰痛は、椎間板の障害や脊椎の変性、背筋の疲労などが考えられます。これらの障害のある組織は、腰椎を前屈させることで腰痛の症状が悪化します。

 このタイプの腰痛は、正しい姿勢や日常の生活動作の改善がもっとも重要な治療法で、それが予防にもなるのです。できるだけ前かがみにならないで、腰椎の生理的湾曲を自然に維持する姿勢を心がけて下さい。腰痛症は、治療によって多少よくなったとしても、再び繰り返す人は少なくありません。腹筋や背筋の力が弱いとなかなか腰痛と縁が切れません。腹筋や背筋は脊椎を支える役目をしていると考えて下さい。筋肉と骨を強化することによって腰痛を予防することが大切です。

「後屈障害型腰痛」の治療 

 後屈障害型腰痛は、腰を後ろに反らすことができない、あるいは反らすと痛みが増すのですが、その多くは加齢に伴う脊椎の変性、脊椎の疾患などによって起こります。

 それぞれの病気によって治療法が違ってきますが、治療の中心となるのは理学療法やコルセット、消炎鎮痛剤の服用などです。

 ある程度痛みが治まってきたらリハビリや再発防止のための腰痛体操を行うとよいでしょう。ただし、下肢痛や神経症状を合併し、保存療法を行っても順調に回復しない場合は手術をすることもあります。

腰痛予防のための食事

 腰痛を予防するためには、肥満を防ぎ、骨を丈夫にする必要があります。骨を丈夫にするには、カルシウムを摂取することですが、日本人は欧米人に比べてカルシウムの摂取量が少ないようです。厚生労働省は1日700mg以上の摂取を目標にと掲げています。カルシウムを効率よく吸収させるために合わせてビタミンDやたんばく質もとるようにしましょう。

 カルシウムは、牛乳、チーズ、ヨーグルト、めざし、しらす干し、わかめ、こんぶなどに含まれており、ビタミンDはマグロ、かつお、かれい、うなぎ、さばなどの魚やしいたけなどに含まれています。さらに日光にあたり体を動かすことでカルシウムの摂取率が高くなります。

 

普段から筋肉強化のためにウォーキングなどの適度な運動を心がけましょう。

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