広報誌 健康倶楽部/2010年12月号

早期発見で「子宮」を守る

 女性特有の子宮の病気として、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がんなどがありますが、婦人科を受診するのが恥ずかしいとか、不安を感じ、気になる症状があっても放置して病気の発見が遅れるといったことが少なくありません。特に妊娠・出産を経験したことがない女性は婦人科を受診するのを躊躇する人が少なくありません。しかし、子宮の病気も、他の病気と同様、早期発見することがとても重要です。 

子宮内膜症

 子宮の内側をおおっている膜を子宮内膜といい、一定の周期で増殖と剥離を繰り返しています。この剥離が月経です。子宮内膜や子宮内膜に類似した組織が、子宮内腔以外の部位に発生してくることがあり、これを子宮内膜症といいます。これらの組織は、本来の子宮内膜と同様に女性ホルモンの影響をうけるので、子宮の内側以外の部位に発生しても、性周期に応じて月経のように出血を起こすと考えられています。子宮内膜症は女性ホルモンの作用を受けて増殖、進行するため、月経のある女性だけに起こり、妊娠中、閉経後の女性にはほとんど見られない病気です。

 

子宮内膜症

<症状>

 初期は無症状ですが、進行するにつれ生理痛が強くなるのが特徴です。子宮以外にできた子宮内膜症では、腰痛、下腹部痛、排便痛、排尿痛などをともなうこともあり、月経時以外にもこれらの症状を訴えることがあります。さらに進行すると、周囲の臓器や組織と癒着し性交痛が現れたり、不妊の原因になることもあります。

 また、卵巣に発生した子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)の腫瘤が破裂して腹膜炎をおこしたり、腸管が癒着して腸閉塞を起こすなど、重態となり、緊急処置が必要な場合もあります。

<治療>

 子宮内膜症は比較的若い女性に発生しやすく、不妊症をともないやすいので、治療法の主体は、自覚症状の痛みなどを除去とともに、病気の進行具合と、将来妊娠を希望するか否かという点で、保存的な治療法か、根治的な治療法かを選択します。

 薬物療法では低用量ピルや鎮痛剤、漢方薬などの投与を行ない、薬だけでは治らないものには、病巣部を取り除く手術が行われます。

子宮筋腫

 子宮筋腫は、35歳以上の女性の15%〜30%に子宮筋腫があるといわれています。子宮の壁(筋層)にできる良性の腫瘍で1個から多いときは20個近くになることもあります。成人女性の子宮の大きさはニワトリの卵の大きさ(約50g)ですが、そこに筋腫ができると徐々に大きくなり、りんご大とか、大人のにぎりこぶし大、新生児の頭大などと表現されます。

 発生原因については、まだはっきりとしていませんが、エストロゲンという女性ホルモンの影響、遺伝的な要素が関係していると考えられています。筋腫はエストロゲンにより大きさが変化します。原因が不明でも発育には女性ホルモンが大きく関与しているようです。

 

子宮筋腫

<症状>

 子宮筋腫の主な症状は、過多月経、不正性器出血、月経痛、貧血症状、下腹部にしこりを感じるなどですが、無症状の場合も多く、筋腫の大きさ、個数、発生部位によってさまざまです。

 子宮筋腫があるかどうかは、問診と内診でほぼわかります。さらにエコーやMRI検査で筋腫の大きさや数、位置などがかなり正確に把握できます。

<治療>

 筋腫が小さく、症状も軽く、日常生活に支障がないときは様子を見ます。筋腫が大きい場合や痛みを伴う場合、貧血など日常生活に支障をきたす場合は治療が必要となります。治療法は大きく分けて、手術療法と薬物療法があり、筋腫の大きさや症状などを考慮して治療をします。

 また、妊娠・出産を希望する人は子宮を残して筋腫のみを子宮から摘出する方法もあるので、医師とよく相談しましょう。 

子宮頸がん

 子宮頸がんは子宮の入口(頚部)にできるがんで、子宮がん全体の約7割を占めています。子宮頸がんの羅患率は年間10万人あたり11人、20〜40代女性のがん発症率ではトップです。 原因はいろいろ考えられますが、最近はヒトパピローマウイルスとの関連性が注目されています。

 ヒトパピローマウイルス(HPV)とは、性器に多く存在するウイルスでありふれた病原体です。性交で感染し、大半の人は免疫力によってウイルスを追い出しますが、一部の人は徐々にがん化していきます。HPVは100種類以上の型が確認されており、このうち発がん性のある高リスク型は15種類ほどで子宮頸がんなどの悪性の病気を引き起こします。 昨年から子宮頸がんを予防するワクチン接種が始まりました。感染を防ぐために3回のワクチン接種で、発がん性HPVの感染から長期にわたってからだを守ることが可能といわれています。しかし、このワクチンは、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頚部の前がん病変やがん細胞を治す効果はなく、あくまで接種後のHPV感染を防ぐものです。また、このワクチンはすべての型の子宮頚がんを防ぐわけではないので定期的ながん検診を受ける必要があります。

 

子宮頸がん

<症状>

 子宮頸がんの初期は、ほとんど自覚症状がありません。進行してくると、性器不正出血や性交時出血、悪臭のするおりもの、下腹部痛、排尿障害などの症状が出てきます。

<治療>

 がんの進行度によって治療法も異なりますが、大きく分けて、外科療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)の三つがあり、がんの大きさ、患者さんの年齢、全身状態、妊娠の希望の有無などを考慮して決められます。

 

こんなときは婦人科を受診しましょう

・おりものの異常

 (量が多い、色がおかしい、悪臭がするなど)

・生理痛がひどい

 (鎮痛剤が必要なほどつらかったり、寝込んだりする)

・外陰部の異常

 (かゆみ、痛み、また、潰瘍や水疱ができているなど)

・下腹部痛やしこり

 (下腹部痛、月経の異常、しこりなどがあるとき)

・不正出血がある

 (生理時以外に出血したり、性交時に痛みや出血がある)

・乳房にしこりがある

 (さわるとしこりにふれたり、痛みやひきつれがある)

・がん検診を受けたい

 (がんの早期発見のためにも年に一度検診を受ける)

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