広報誌 健康倶楽部/2011年1月号

足の動脈が詰まってしまう病気〜閉塞性動脈硬化症〜

 閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が四肢の動脈、特に下肢動脈に高頻度に起こります。高齢者、特に男性に好発し、喫煙者やメタボリックシンドロームの危険因子(高血糖、脂質異常、肥満、高血圧など)のある人に好発します。

 他の動脈硬化では、狭心症や心筋梗塞を、脳の動脈硬化では脳梗塞、腹部大動脈の動脈硬化では腹部大動脈瘤をおこします。

 閉塞性動脈硬化症の症状は、血管が動脈硬化によって狭くなったり、つまってしまうことで血流が悪くなり、種々の症状が起こってきます。まず最初に手足の冷たい感じやしびれを感じるという程度の症状が出ます。やがて、筋肉が血行障害で痛むようになります。血流が悪化すると歩行中に足が痛くなり、歩けなくなることもあります。立ち止まって休むと血行障害が改善されるので痛みが治まり、歩けるようになりますが、しばらく歩くと、また痛みだします。これを間欠性跛行といいます。歩行することが辛くなり、歩行距離が短くなります。

 血液循環が悪くなり、足先の皮膚を傷つけると、皮膚が破れ、潰瘍になることがあります。激しい痛みをともない、傷が治りにくくなります。細菌感染もしばしばともない、足の指先から足部、下肢へと広がることもあります。皮下組織や筋肉まで脱落し、骨が露出したり、潰瘍ができるといった症状があります。特に壊死や潰瘍があると、細菌感染を併発しやすく、一度感染が起こると、血流が悪くなり、全身状態が悪くなります。

<糖尿病の人は要注意>

 糖尿病を持っている人は閉塞性動脈硬化症が起こりやすくなります。その場合、ふくらはぎから下に症状が出やすく、足の指の潰瘍や壊疽も多く起こっています。血糖値のコントロールの悪い状態が長年続くと起こりやすくなります。糖尿病性神経障害により、傷をつくっても気づかなかったり、痛みに鈍感になっているため感染症が広がりやすいという問題が生じます。

 閉塞性動脈硬化症になると、特に足の血流が悪くなり、皮膚も弱くなるため、つまづいたり、靴擦れなどで足に傷がつきやすくなり、傷も治りにくくなります。

 足を清潔に保ち、傷がないかチェックしましょう。ケガをしないように室内でも靴下をはくようにし、ホットカーペットや電気毛布などでの低温やけどにも注意しましょう。

<自分でできる健康管理>

 閉塞性動脈硬化症の人の多くは、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を持っているので、食事はコレステロールや塩分を控え、摂取エネルギーを抑え、栄養バランスよく食べるのが基本です。

 「歩く」ことも大切です。糖尿病で壊疽が起こっている人以外は積極的に歩きましょう。きついと感じるくらいまで歩いて休むを繰り返しながら1日3〜4kmを週3日以上行い、継続しましょう。

 

検査と治療

 閉塞性動脈硬化症の検査は、ドップラー血流計で動脈血流を確認したり、皮膚サーモグラフィーで皮膚温を調べます。動脈硬化の部位と動脈狭細化の程度についてはCTやMRA(磁気共鳴血管撮影)などの血管造影によって動脈をくわしく調べて判定されます。フォンテインの部類によって治療していきます。

 

フォンテイン分類
程度 症状
T度 無症状
U度 間欠性跛行
V度 安静時における下肢の痛み
W度 下肢の皮膚潰瘍、下肢壊疽

 

T度

動脈硬化を防ぐために、高血圧、高血糖、脂質異常、高尿酸血症の改善に務める。たばこを吸っている人は禁煙します。

U度

動脈硬化の予防、抗血小板薬、抗凝固薬、血管拡張薬、降圧薬などの内服薬による治療や運動訓練などを行ないます。それでも症状が改善しない場合は、カテーテルを血管内に入れ、血管を膨らませる血管拡張術(PTA)や人工血管を使用したバイパス手術などを行ないます。

V度

PTAやバイパス手術、血栓内膜剥離術を行い、血行を再建します。

W度

V度と同様の治療を行ないます。全身症状を悪化させないために、やむを得ず壊疽を起こした手足を切断する場合もあります。

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