広報誌 健康倶楽部/2011年3月号
更年期の症状は個人差が大きいのですが、閉経前後の数年間にわたって現れます。日本人の平均的な閉経年齢は50歳といわれているので、45〜55歳くらいが更年期にあたります。
卵巣機能は30代後半から落ち始め、40歳を過ぎると急激に衰えます。それに伴い、卵巣から分泌されるホルモン(エストロゲン)が急減し、やがて閉経します。通常、脳の視床下部が卵巣に「女性ホルモンの分泌」の指令を出し、卵巣は女性ホルモンを分泌します。しかし、卵巣機能が衰え、女性ホルモンが出せない状態であっても脳は指令を出し続けます。このようなアンバランスが、からだにさまざまな不調を起こす原因の一つになっていると考えられます。
更年期の症状や重さは人それぞれですが、生活に支障が出るほどつらい症状に悩まされているという人は2割程度です。更年期だからといって身構える必要はありませんが、不調が現れたら一度婦人科を受診してみましょう。
顔がほてる 汗をかきやすい イライラする 腰や手足が冷える 不眠
動悸・息切れ 不安感や憂麓になる 疲れやすい 肩こり 腰痛
手足のしびれ 冷え 頭痛 めまい 吐き気 など
このような症状が現れたからといってかならずしも更年期の症状とはかぎりません。意外な病気が潜んでいることもあります。閉経で女性ホルモンが減少することで病気のリフクが高まってきます。高血圧、糖尿病などの生活習慣病や、乳がんや子宮がんなどに注意が必要です。定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
HRTは婦人科や更年期外来で受けられます。ただし、次の病歴や症状などのある人はHRTを原則として受けられません。
・乳がん、子宮体がん
・心筋梗塞、脳梗塞
・重度の肝障害
・血栓塞栓症
・血栓性静脈炎
・原因不明の不正性器出血
症状が更年期によるものか、他の病気が隠れていないかなどHRTを行う前に検査をします。HRT実施前の検査では、
@内診と経膣超音波検査で子宮や卵巣の様子を調べます
A乳がんや子宮がんの検査をします
B血液検査や血圧、体重、骨密度なども調べます
投与するホルモンの量や投与方法などはかかりつけの医師と相談しましょう。
漢方では、体質を大きく「実証」「虚証」「中間証」の3つに分け、それぞれの証に合った漢方薬を処します。
主に血の状態を改善する | 主に気の状態を改善する |
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 中間証〜実証の人の更年期症状の代表的な漢方薬です。地の巡りをスムーズにし、のぼせ、ほてり、冷え、それにともなう頭痛、肩こり、めまいなどの改善 |
加味逍遥散(かみしょうようさん) 虚証で不安やイライラが強い更年期の人によく使う。のぼせ、頭痛、肩こり、めまいなどを改善 |
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 虚証の人の更年期症状の代表的な漢方薬です。地の巡りをスムーズにし、貧血や冷え、めまい、むくみ、腹痛などを改善 |
加味帰脾湯(かみきひとう) 中間証で動悸や食欲不振、不安感、不眠などの症状の緩和 |
通導散(つうどうさん) 抗炎症作用が強く、実証で便秘がち、下腹部に痛みや炎症がある人の更年期症状の改善 |
大柴胡湯(だいさいことう) 実証で便秘がちの人の肩こり、頭痛、耳鳴り、息切れなどの症状の改善 |
「実証」…体力があり、脈が強く、どちらかというと筋肉質である
「虚証」…体力が弱く、肌につやがなく、脈が弱い
「中間証」…実証と虚証の間
漢方は特に精神症状への効果が高いという報告もあります。更年期はうつ症状が現れやすいので、漢方薬を使う人も多くおられます。
更年期うつは、不安や無力感、悲しさ、焦燥感などが押し寄せてきてつらいものです。それらを対処するには、疲れた心と体を癒す休養、漢方や抗うつ薬、ホルモン補充療法やカウンセリングなどの治療が必要です。
重症でなければ、まずはセルフケアをやってみて、それでも気持ちが晴れないときは心療内科や精神科、あるいは婦人科を受診しましょう。
病名 |
主な症状 |
|
甲状腺 |
機能亢進症 |
動悸、発汗、不眠、疲労感、イライラ |
機能低下症 |
冷え、むくみ、もの忘れ、体重増加、疲労感 |
|
パニック障害 |
動悸、発汗、息苦しさ |
|
脳梗塞 |
めまい、記憶障害、指のこわばり、手足のしびれ |
|
子宮がん、子宮筋腫、子宮内膜症 |
不正出血 |
|
高血圧 |
頭痛 |
|
腫瘍 |
腰痛、首痛 |
検査名 |
内容 |
分かる病気 |
特定健康診査(メタボ検診) |
身長、体重、腹囲、血液(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、v-GTP、クレアチン、ヘモグロビンA1など)、尿(糖たんぱく、潜血)、胸部X線、心電図 |
メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病 |
子宮がん検診 |
細胞採取(子宮膣部、頸部) |
子宮頸がん |
乳がん検診 |
視触診、マンモグラフィー、超音波検査 |
乳がん |
大腸がん検診 |
免疫便潜血検査 |
大腸がん |
骨密度検査 |
超音波またはX線検査 |
骨粗鬆症 |
血液検査 |
エストロゲン(E2)、卵胞刺激ホルモン(FSH) |
更年期障害など |
胃がん検診 |
胃X線検査(場合により内視鏡検査) |
胃がん |
更年期障害というと、女性だけの病気と思われがちですが、実は、男性にも更年期障害はあるのです。
男性の更年期の症状は多岐にわたります。
のぼせ、発汗、ほてり、動棒、頭痛、肩こり、全身倦怠感、イライラ、不眠、うつ症状、神経質、不安感、疲労感、行動力の減退、頻尿、残尿感、性欲減退、勃起不全(ED) など。
男性の更年期障害の原因には、加齢、ストレス、運動不足による男性ホルモン(テストステロン)の減少です。
男性ホルモンは青年期には体内で多量に生成されますが、年々減少していきます。男性ホルモンの分泌量には、ストレスや運動といった要因もかかわってくるので、ストレスが多い人や運動不足の人は男性ホルモンが減少しがちです。
男性にもホルモン補充療法があるので、前述のような症状がある人は医師に相談しましょう。