広報誌 健康倶楽部/2011年7月号

赤ちゃんや小さい子どもに多い事故と応急手当

赤ちゃんや小さい子どもは、生活のあらゆる場面で思わぬ事故を起こすことがあります。

大切なのは、親がしっかり見守り、事故を防ぐこと。そして万が一の時の適切な対応です。応急処置ができるのとできないのでは差がつくことは言うまでもありません。しっかりと覚えておくことが重要です。

<水の事故>

水に溺れる事故は、プール、海、川などに出かけた時だけではありません。浴槽や洗濯機、ビニールプールなどでも溺れる事故が発生します。むしろレジャー先での事故よりも多いのです。レジャー先のプールや海、川などは事故が起こらないように気を配っていることが多いのですが、浴槽の残リ湯や、洗濯機にはった水でも溺れる原因になり、事故が発生します。赤ちゃんは、ハイ八イやつかまリ立ちを覚えると、好奇心旺盛に動きまわリます。赤ちゃんや小さい子どもがいる家庭は、お風呂場に鍵をつけ、出入りできないようにするか、残リ湯をそのままにしておかないこと。

洗濯機も、中を覗き込めないようにしておく。ビニールプールは水かさが低くても溺れることがあります。事故を未然に防ぐには、子どもから目を離さないこと。

水に溺れた時の救命処置。 まず、意識を確かめる

(1)名前を呼び、体を軽くたたく

  • 意識がない時
    呼びかけに反応しない場合は、救命処置と救急車の手配を同時に行う必要があるので、大声で周囲の人の助けを求めます。一人の時はその場を離れずに、まず救命処置をして、救急車を呼びます。
  • 意識がある時
    横向きに寝かせ、吐いたもので気道がふさがるのを防ぎます。 その後、救急車を手配します。救急車を待つ間、顔色や呼吸の状態を確認し、急変がないか観察します。

(2)気道を確保し、空気を通リやすくする

  • 呼吸や心臓が停止している時は、人工呼吸や心臓マッサージを行います。

(3)人工呼吸

呼吸の有無を、子どもの鼻や口に耳を近づけて確認する。胸が上下に動いているかも目で見て確かめる。

  • 呼吸が無い場合
    呼吸が無い、又は呼吸が弱い場合は人工呼吸を始めます。0歳児の場合は、□と鼻を同時に覆うようにし、息を吹き込む。1歳以上の場合は口から息を吹き込む。呼吸が戻るまで続け、周囲に助けがなく、一人の場合は最低でも1分間、人工呼吸を行ってから救急車を呼ぶ。
  • 呼吸も脈も無い時
    心臓マッサージが必要です。赤ちゃんの場合、脈はわきの下に近い上腕の内側の脈がわかりやすいでしょう。
  • 0歳児の場合
    左右の乳首を結ぶ線と胸骨が交わる点より指幅1本分下側を人差し指と中指の2本の指で軽く押します。人工呼吸を2回、心臓マッサージを30回の割合で繰り返しながら救急車が来るのを待ちます。
  • 1歳以上の子ども場合
    片手の手のひらの付け根で垂直に押す。力を入れすぎると肋骨を折ってしまうので、力を入れすぎないように人工呼吸を2回、心臓マッサージを30回の割合で繰り返す。

呼吸が戻り、落ち着いてきたら、体が冷えないように、濡れている服は着替えさせ、タオルや毛布でくるみ、保温をします。救急車が到着するまでは安静を保ち、様子を見て急変に備えましょう。

<やけど>

やけども赤ちゃんや小さい子どもの事故ではとても多く、親はパニックになリがちです。落ち着いて応急処置をし、病院へ連れて行きましょう。

やけどをしたら、範囲の大小にかかわらず、十分に冷やすことが大切です。冷やすのが遅れるとどんどん進行し、重症になります。赤ちゃんや小さい子どもの好奇心は想像以上で、お母さんが使うアイロンやポットなど、とても興味があり、すぐに触ろうとするので注意が必要です。

ここに注意!! お母さん次第で事故は防げます

自分の子どもの発育を知り、現在どれくらいのことができるのを知らないことから事故は起こりうる事を肝に命じておきましょう。

  • ポットや炊飯器の吹き出し口の蒸気に注意
  • ストーブなどの暖房具には柵をする
  • アイロンを使う時は子どもがいないところで使う
  • 熱い飲み物を置くテーブルにはテーブルクロスをかけない
  • 小さい子や赤ちゃんを抱っこしたまま熱い飲み物を飲まない
  • 電気毛布電気シーツなどを長時間使わない

やけどは高温のやけどほど重症になりやすいのですが、ホットカーペットや電気毛布などの低温やけどでも、広い範囲に及ぶと重症になりかねません。軽いやけどのように見えても病院で診てもらうほうが安心です。

すぐに救急車を呼ぶ

  • 全身。及ぶやけどや広範囲にわたるやけど
  • 意識がない、またはぼんやりとしている
  • やけどした皮膚が白っぽかったり黒っぽく変色している

赤ちゃんや小さな子どもは、
やけどが全身の10%以上に及ぶと危険

上腕のやけどは片腕で全身の10%に相当し、顔全体のやけどは20%に相当、おなかや背中も20%、片足だけでも10〜15%両足だとかなり重症、それくらい小さな子どものやけどは重症でとても危険です。

早めに病院へ連れて行く

  • 水ぶくれができる
  • 顔のまわりや外陰部のやけど
  • 低温やけど

様子をみる

  • やけどの範囲がごく一部で赤くなる程度
  • 腫れや痛みが残っていない

やけどの応急処置

全身または広範囲に及ぶやけど

  • 服を着たまま水をためた浴槽につからせ冷やす。(無理に服を脱がすと皮膚が傷つくのでそのままで)浴槽に水がない場合は水でぬらしたタオルで全身をくるんで冷やす

手や足など一部をやけどした場合

  • 水道の水を出しっぱなしにして、最低20分くらいは冷やす。患部よりやや上の位置から水を流して、水ぶくれができている場合はつぶさないように水圧に注意する。

流水がかけにくい患部を冷やす時

  • 氷を直接患部に当てないこと。タオルなどにくるみましょう。
  • 冷却シートは患部に成分が付着し化学反応が起こる場合があるので×。
  • 勝手に軟膏やアロエの葉などで手当てをしない。

<熱中症>

夏場になると、熱中症が多発します。室外はもちろんのこと、閉め切った部屋に赤ちゃんを寝かせたまま買い物に出かけ、帰ってきたら部屋は蒸風呂状態で、赤ちゃんがぐったりしていたという事故や、毎年マスメディアで話題にのぼりますが、車の中に置き去りにし、親は買い物や、パチンコ等に夢中になり、赤ちゃんが死亡するという悲惨な事故。赤ちゃんや小さな子どもは大人のようにうまく体温調節ができません。大人より熱中症になりやすいので万全の対策をとりましょう。

熱中症は予防で食い止める!

赤ちゃんや小さな子どもは体温調節が未熟なので、水分補給と衣服や周囲の環境で調節します。

屋外ではかならず通気性の良い帽子をかぶらせ、炎天下で長時間遊ばせるのはやめます。

汗を吸収しやすく蒸発させやすい服を着させ、熱が内にこもるような素材の服は避けましょう。

車の中もクーラーが効いていても、直射日光があたるのを避けるようにします。

熱中症になりやすい状況

  • ベビーカーの照り返しによる熱中症。日差しがきつい時間はなるべく連れ歩かない。
  • 遊園地などではしゃぎまわったり、日陰が少ない場所は注意。炎天下に行列に並ぶ時も注意が必要。
  • 体調が悪い時。

熱中症には熱けいれん、熱疲労、熱射病の3つのタイプがあります。

  • 熱けいれん
    大量の汗で体内のミネラルが失われ、筋肉が痙攣を起こすものです。
  • 熱疲労
    大量の汗をかき、体の水分や塩分が失われ、元気がなくなったり、顔は赤く、唇や皮膚がかさつき、吐き気や嘔吐を伴うことが多い。
  • 熱射病
    体内に熱がこもり体温調節ができなくなり、意識を失い、死亡することもあります。

熱中症になったらどんな様子か確かめる

応急処置

屋外で熱中症になった場合は、すぐに日陰に移動し、衣服を脱がせるか、又は前をはだけさせ、足を少し高くして寝かせ、脳への血流量を増やし、あおいで熱を発散させます。ぬらしたタオルや冷たい飲み物のペットボトルをわきの下、首、頭やひたい、太もものつけ根を冷やします。

水分を与える時も少しずつ飲ませ、意識がない時やもうろうとしているときは無理にとらせず、すぐに救急車を呼びます。

◆ すぐに救急車を

  • 意識がない又は朦朧としている
  • けいれんを起こしている
  • 嘔吐を繰り返し、水分補給ができない

◆ 早めに病院へ連れていく

  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 顔が青白い、顔色が悪い
  • 嘔吐する
  • 生あくびをしている

◆ 様子を見る

  • 吐き気はあるが、嘔吐しない
  • 水分はとれる
  • 元気はある

 

 

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