広報誌 健康倶楽部/2011年9月号

パニック障害の特徴と治療

ビジネス環境が厳しい中で、ストレスが関係して起こる心の病気が増えています。職場における人間関係の希薄化、コンピュータ化によるコミュニケーション不足も顕著になっており、心身に不調をきたす方が増加しています。内科や人間ドックなど一般の医療機関で診察や検査を受けても身体的な異常が見つからないことから、心の病気はともすれば見過ごされてきました。「病気ではありません」「心配いりません」と医師に言われることも多いのですが、つらい症状があるときは、心の病気を一度は疑ってみる必要があるでしょう。

とくに、最近増えているのが、パニック障害とうつ病です。それぞれ、特有の症状があるので、心の病気を主に扱う医師なら、比較的簡単に診断がつき、治療法も確立されています。ところが、症状に気づいても病気ととらえることがないために、心の病気を専門とする医師に診てもらおうと考える人が、まだまだ少ないのが現状です。

どちらの病気も症状の軽いうちから正しい治療を受ければ、より簡単に治せる病気ですから、ぜひ病気の兆しや特徴を知って、おかしいなと思ったら、早めに心療内科・精神科・メンタルクリニックといった心の病気を扱う医療機関で診察を受けるようにしてください。また、心の病気は家族や職場の仲間など周囲の人が病気のことを理解し、温かくサポートすることがとても大切です。

<パニック障害とは>

突然、動悸や息苦しさ、めまい、吐き気などの身体症状とともに、「死ぬのではないか!」といった恐怖や不安に突然襲われるパニック発作が特徴です。パニック発作は広場のような広い場所や電車などの狭い空間で起こるというようにその人にとって起こりやすい場面が決まっていることもあります。「またあの発作が襲ってくるかもしれない」という予期不安があるのも特徴で、【一人で外出できない】【電車に乗れない】など、社会生活に大きな支障をきたす病気です。

<パニック障害の症状>

パニック障害には「パニック発作」・「予期不安」・「広場恐怖」という3つの特徴的な症候があります。

パニック発作

パニック発作には以下のような症状がみられます。

パニック発作ではこれらの症状が何の前ぶれもなく突然起こり、多くの場合10分以内でピークに達し、通常30分以内でおさまります。

  1. 胸がドキドキする
  2. 冷や汗をかく
  3. 身体や手足の震え
  4. 呼吸が早くなる、息苦しい
  5. 息が詰まる
  6. 胸の痛みや不快感
  7. 吐き気、腹部の嫌な感じ
  8. めまい、ふらつき
  9. 非現実感、自分が自分でない感じ
  10. おかしくなってしまう、狂うという心配
  11. 死の恐怖
  12. しびれやうずき感
  13. 寒気または、ほてり

予期不安

予期不安とは、パニック発作を一度経験して、あの恐ろしい発作がまた起こるのではないかという不安感が生じることです。パニック発作にはこの予期不安が必ず伴い、発生を繰り返すごとにこの不安がさらに強くなっていき症状を悪化させていきます。予期不安にみられる症状には以下のようなものがあります。

  1. 発作を起こすこと、それ自体への不安
  2. 発作によって起こる、別のことへの恐怖
  • 死ぬのでは
  • 何かの病気になるのでは
  • 気を失うのでは
  • 事故を起こすのでは(特に車の運転の不安)
  • 誰も助けてくれないのでは
  • すぐに逃げ出せないのでは(発作が起きた場所から)
  • 取り乱してしまい、人前で恥をかくのでは
  • 倒れたり、吐いたり、失禁したりして、見苦しい姿をさらすのでは
  • 他人に迷惑をかけるのでは

パニック発作

広場恐怖とは、「広場」を怖がるという意味ではなく、パニック発作を経験した人が“特定の場所や状況”を避けるようになることです。

では、どのような場所や状況を避けるようになるのでしょうか。

  1. 発作が起きたときにすぐに助けを求められなかったり、逃げ出せないような場所を避けるようになります。
    ・電車やバス(特に急行など停車間隔の長いもの)
    ・人ごみ
    ・地下道
  2. 過去にパニック発作の起きた場所で、もう一度そこへ行くと発作が起きるのではないかと思い、このような場所を避けるようになります。

<パニック障害とうつ病の関係>

パニック障害による不安が慢性化していくと、これが原因になってうつ病が発症します。実際にうつ病を伴う患者さんが多いことも知られています。

<パニック障害の治療>

藥物療法

治療には主に2種類の薬物を使用しますが、片方は発作時や発作の不安が高まった時に即効性のある精神安定剤です。

もう片方は抗うつ剤。つまりうつ病の薬を使用します。

  • 精神安定剤
    使用するのは精神科で出される精神安定剤の中でも、一番軽いとされるベンゾジアゼピン系の薬です。鎮静をかけるというより、どちらかというと不安感を直接取り除くように脳に作用する薬です。
  • 抗うつ剤
    パニック障害を持っている人に抗うつ剤を使用する目的はセロトニンという脳内の神経伝達物質を増やすためです。また常に感じている不安で精神力が消耗しきって、うつ病に移行するのを防ぐ為でもあります。

食生活の改善

パニック障害に良い食物
  • トリプトファン・ビタミンB群
    脳内のセロトニンを増やす
  • ビタミンC
    ストレスに対する抵抗力を高める
  • カルシウム
    神経を落ち着かせて、心を安定させる
カフェインを控える

パニック障害を抱えている方に、多量のカフェインを投与すると、かなり高い確率でパニック発作が起きることが知られています。医師からも指導されるかもしれませんが、コーヒー、お茶、コーラは控えるようにしてください。

呼吸を整えてリラックス

基本的にパニック障害を治すには、毎日リラクゼーションの練習をすることが大事ですが、いつもいつも頑張ってやろうとすると、それが逆にストレスになることがあります。

しかし何もやらないわけにはいきませんのでそんな時は、今日はこれとこれだけをやろう、というような姿勢が大事です。

浅い呼吸よリ腹式呼吸

過呼吸防止の為と、リラックスの為に役立ちます。

筋肉の緊張をほぐす
リラクゼーション

軽くストレッチをすることで筋肉の緊張がほぐれ、リラックスすることができます。

<パニック障害の患者さんとの接し方>

パニック障害だからといって、腫れ物に触るような態度はいけません。だからといって、見て見ぬふりもいけません。患者本人はとても苦しい思いをし、不安や恐怖の世界にいるということを理解してあげましょう。

 

 

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