広報誌 健康倶楽部/2011年9月号

心臓が発する危険信号を見逃さない

心臓病というと、特別な病気のように思われがちですが、近年増加しつづけているのは生活習慣病のひとつである虚血性心疾患といわれるものです。虚血性心疾患の代表的なものは狭心症と心筋梗塞です。これらの病気は心臓の筋肉を養っている冠動脈に血管障害が起こり、心臓の働きに異常が生じることで発症します。具体的には、加齢、過食、偏食、運動不足、喫煙、ストレスなどが原因で血管が硬くもろくなり、内腔が狭くなる動脈硬化を起こすことや高血圧になることで発症します。心臓病は生活習慣が関わっているとても身近な病気といえます。

<心臓病の三大症状>

〈胸痛〉

胸の痛みは、狭心症と心筋梗塞の代表的な症状です。狭心症は胸の中央部からみぞおちにかけて、胸部全体に漠然とした痛みが生じます。肩、首、腕、あご、歯などに痛みが走ったり、しびれを覚えることも。痛み方は「押されるよう」「しめつけられるよう」「重苦しい」「焼けるよう」「鈍痛」と人によりいろいろですが、どうにも我慢出来ないというほど強い痛みではありません。

安静にしていると通常5分以内、長くても10分以内でおさまります。一方、心筋梗塞の痛みは「死ぬのではないか」という不安や恐怖をともない短くても30分以上続きます。痛む場所は狭心症ととぼ同じですが、痛みの強さは狭心症とは比較にならないほど強烈で「胸をえぐられるよう」「焼け火箸を突っ込まれたよう」などと言われます。

顔面蒼白、冷や汗、呼吸困難、吐き気などの症状を伴うこともあります。

〈息切れ〉

心臓機能に異常が生じると、軽い動作でも息切れや呼吸困難が起き、症状が進むと、安静時でも息切れを感じるようになります。心臓の機能が低下すると、体の隅々まで酸素を十分に送れなくなるため、末梢では酸素不足となり、脳の呼吸中枢にもっと激しい呼吸を送るようにと命令するからです。さらに心不全が進行すると、肺に血液がうっ血するため、肺からの酸素の取り込みが不十分となり、血液中の酸素が低下し、息切れが生じます。


〈動悸〉

狭心症や心筋梗塞が進行している際、胸痛があまり起こらず、動悸や息舌しさなどを感じるケースもあります。正常なときは心臓の鼓動を意識しませんが、心拍数が増えたり、不整脈のために脈が飛んだり、心臓の拍動が強くなったりすると動悸として感じられるのです。健康な状態でも緊張したり、運動直後は一時的に鼓動を強く感じますが、病的なものは、これらが平静時に突然起こり、不安や不快感を伴って現れます。

狭心症は、血管の狭窄によって血流が低下し、心筋が一時的な酸素不足におちいっている状態です。一方心筋梗塞は血栓ができて血管がつまり、心筋細胞が酸素を供給できなくなり、その一部が壊死を起こしている状態です。

心筋梗塞の典型的な発作症状は強烈な胸痛ですが、必ず激しい痛みを伴うかというとそうではありません。吐き気がする、なんとなくだるいといった症状だけで、知らない間に心筋梗塞になっていたという人はまれではありません。

人によっては自覚症状がなく、検診などで心電図をとったときに、心筋梗塞を起こしていたことがわかるケースもあるのです。このような無痛性あるいは無症候性心筋梗塞という病態が注目されており、全心筋梗塞の2〜3割を占めています。

特に糖尿病や高齢者は、知覚神経の低下により自覚症状を認知できないことがあるので要注意です。

定期的な健康診断や医療機関での検査をすることが望まれます。

<動脈硬化と心臓病の関係>

虚血性心臓病の多くは動脈硬化が引き金となっています。動脈硬化とは、コレステロールや脂質などが血管の内側に付着したり、血管壁に沈着したりして、血管が硬くもろくなることをいいます。動脈硬化になると、血管内腔が細くなるため、血管壁の抵抗が大きくなり、心臓は血液の循環をより高めようとして収縮力を大きくすることが必要になります。つまり心臓の負担が高まるわけです。

心臓を取り巻く冠動脈に動脈硬化が起こり、血栓などによって心筋への血液の流れが滞れば狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こします。

動脈硬化を促進する因子はいろいろあります。年齢、性別、遺伝的素質など自分ではどうにもできないものもありますが、動物性脂肪のとり過ぎ、喫煙、肥満、運動不足、ストレスなど自分で予防できるものも少なくありません。生活習慣を改善することで動脈硬化の進行にストップをかけましょう。

<心臓突然死を防ぐために>

心臓発作は狭心症や心筋梗塞などにより、心筋への血液供給が激減したり、途絶えることで起こります。

発作の程度がひどいと、全身に血液が送られなくなり、死に至る場合もあります。「心臓突然死」と呼ばれるもので日本では年間約5万人が突然の心臓発作によって死亡し、その数は増加傾向にあります。心臓発作に襲われたときに生死を分けるポイントは、すみやかに適切な対処を行うことができるかどうかということです。

心臓病の人に加えて、その家族や周囲の人も対処法を知っておき、もしもの時はあわてずに落ち着いて対処をすることが、命を守ることにつながります。

狭心症

激しい胸痛や動悸におそわれ、安静にしていると、通常5分以内、長くても10分以内で収まる。

〈対処法〉

  • 屋外で歩いていた場合は、立ち止まり、低めの椅子や階段など座れるところに腰をおろし、安静にする。屋内でもソファなどに腰をおろし、楽な姿勢で安静にする。しゃがみ込む姿勢は心臓を圧迫するので避けましょう。
  • 衣服をゆるめる。
  • 心臓の異常な拍動を防ぎ、やわらげるために深呼吸をする。
  • 15分以上経過しても症状が軽減しない場合は、救急車を呼びましょう。

心筋梗塞

激しい胸痛や動悸におそわれ、5分以上続きます。冷や汗が出たり、嘔吐をともなうこともあります。硝酸薬を用いても発作がおさまらない。

〈対処法〉

  • すぐに救急車を呼ぶ。
  • 無理に体を動かさず、衣類をゆるめて本人の楽な姿勢をとらせる。通常、横向きに寝かせるのが良いが、息苦しさがひどい場合は、背もたれのある場所で楽な座位をとらせる。
  • 吐き気があるときは、無理に吐かせようとしたり、水を与えたりしないこと。
  • 便意があるときは、トイレには行かせず(トイレで症状が悪化することが多い)その場で用を足せるように整える。
  • 呼吸と脈拍がなければ、救急蘇生法を施す。近くにAEDがあれば、それも使用する。

 

AED(自動体外式除細動器)

AED(自動体外式除細動器)は、以前は医療機関を中心に設置されていましたが、現在は、駅、空港、学校、企業、宿泊施設、球技場、スポーツクラブなど、人が多く集まる場所に普及してきています。除細動の処置は、かつては医師、看護師、救急救命士などの専門家が行うものでしたが、2004年からAEDの使用が一般の人にも認められ、専門機器を使っての救命処置がさまざまな場所で早急に行えるようになりました。

AEDは、誰もが簡単に使える設計が施され、必要な操作はすべて音声ガイダンスで案内されます。さらに、除細動のための電気ショックは機器が必要と判断しない限り、ボタンを押しても実行されない安全設計です。

初めて使う人でも簡単に操作できるので、心臓発作で倒れた人がいたら、AEDを使った救急処置を積極的に行ないましょう。

 

 

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