広報誌 健康倶楽部/2011年11月号

高齢者の悩み

平均寿命が延び、人生80年という時代です。元気に高齢期を過ごしている人も多く、まだまだ働く気力に満ち溢れている高齢者がおられるのには頭が下がります。

かつては皆が一つの家で暮らし、若い者が高齢者の生活を支えたり、高齢者から教わりながら助け合って暮していた時代もありました。現代は、年をとったら子どもに面倒を見てもらうといった関係ではなく、親は親、子は子とそれぞれの暮らしという感覚のようです。

そのような中で、高齢者の昔とは違う悩みがクローズアップされています。

.数年前に夫が亡くなり、長男夫婦は車で1時間半のところに、長女は北海道に住んでいます。近頃足が思うように動かせず病院へ行くにも不自由しております。子どもたちに相談しましたが、年寄りの介護はしたくないようで、一緒に暮すのは夢の話です。

これからのことを考えると不安で眠れない日が続いています。

(栃木県71歳 女性)

.配偶者と死別してからのひとりの生活は何かと不安がありますが、現代の核家族化で社会問題となっているひとつです。

身体が健康なときは一人でも大丈夫と子どもに頼らず生きていけると思いがちですが、人は誰でも年を重ねるたびに自分ひとりではどうすることもできない問題に直面します。そのときに頼りになるのが、やはり子どもの存在ではないでしょうか。元気なときに親子のコミュニケーションができていないと病気になったり不自由になったときになかなか甘えることができない状態になってしまいます。

子どもは子どもで年老いた母がひとりで生活していることを気にかけていないわけではないと思います。ですから、このような場合は、お互いに歩み寄ることが大事です。

たとえば、子どもの家の近くに引越しをし、すぐに子どもが駆けつけられるようにする、お年寄りは今まで住んでいた環境を変えるのを嫌がる人が多いのですが、そんなことをいっていては、子どもはますます遠ざかってしまいます。子どもの生活に合わせれるところは妥協し、お互いのプライバシーを守りながら協力してもらうことが肝心です。まず今の状況を詳しく聞いてもらい、今後のことをお願いしてみましょう。又、地域の介護サービスなどの情報も調べて検討もしてみましょう。

さて、自分が高齢になり、何かと不自由になったときに助けてくれる人がいますか?身体が元気で何でも自分でできるときは「誰にも世話にならない」なんて意気込んでいる人も年をとっていくとだんだんと身体の不調も出始め、人の手を借りずには生活できないようになる可能性のほうが高いのです。ですから日頃からイザというときにお世話になることのできる人とのコミュニケーションが大事です。そのためには日頃から「人を愛せる人」にならなければいけません。人を愛せる人とは、相手の立場に立って物事を考えたり、思いやりの精神を持つこと、そして人を助けることができる人だと思いませんか。人を助けることができる人は、人に助けてもらえる人です。

そのようなことを考えながら生きていると、きっと誰かが手を差し伸べてくれるのではないのでしょうか。

 

厚生労働省が調査した「家族と地域の支え合い」に関する調査で、子どもと別居している親との交流状況をみると、親子が顔を合わせる頻度についてはそれぞれの住居の距離と強い相関関係があることがわかりました。

例えば「年に数回しか合わない親子の割合」は、住居の距離が15分未満の場合には10%程度であるのに対し、15〜60分程度の距離になると約25%にまで増えています。

また、同調査により、子どもから親への手助けや世話状況を見ると、買い物や食事、洗濯等の家事、病気の時の看病、世話など直接的な援助を必要とするものについては、同居の場合は高い割合で手助けがなされているが、住居の距離が離れると、その割合が急激に減っているのです。今一度、家族とのつながり、関わりを考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

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