広報誌 健康倶楽部/2011年11月号

気管支ぜんそくは生活環境が原因?

気管支ぜんそくは、大人にも子どもにも多い病気で、ぜんそくに苦しむ患者は日本で400万人にも達します。その背景には、生活環境の問題が深く関わっていると考えられます。

排気ガスや工場排煙、タバコの煙、住宅建材に使われている塗料など、また、食品添加物やペットの毛、ハウスダストなどもぜんそくの要因になります。

ぜんそく患者の気道は発作がおさまっているときでも慢性的なアレルギー炎症を起こしています。平滑筋や粘膜が腫れ、粘液が分泌されて狭くなったところに貯留し、空気の通り道を狭くしています。ここに息を吐く圧力が加わると狭い所がさらに狭まって呼吸は苦しくなります。

アレルギー性の炎症がある気道は非常に敏感で、ホコリやタバコの煙、冷たい空気などやストレスでも反応し、発作が起こりやすいのです。

<ぜんそく発作の誘因になる「アレルゲン」>

ぜんそくのアレルゲンは実に様々で、現代は通気性の悪い住宅環境が多いため、室内のハウスダストによるぜんそくが特に多くなっています。

アレルゲンが体内に侵入するとIgEという抗体が作られ、アトピー型反応が起こります。小児ぜんそくの約9割、成人ぜんそくの約6割の人がIgE抗体を有しているのです。

特定のアレルゲンが引き金となってぜんそく発作が起こるものを「アトピー型」と呼んでいます。アレルゲンと接触すると炎症反応が起こり、気道が狭くなって発作が起こるのです。室内には髪の毛、食べ物のくず、ふけ、チリ、ホコリなどがあり、これらをハウスダストと総称しています。中でもダニやその死骸によるぜんそくが多く、約40種類のダニがハウスダスト1gに約千匹いるといわれ、特にヒョウダニがアレルギー反応を起こすといわれています。

枕や布団、ぬいぐるみ、カーペットなどはいつも清潔にし、できるだけダニが繁殖しないように心がけます。花粉が飛ぶ季節はマスクをして外出し、帰宅すれば服についた花粉を落とすこと。その他、卵、牛乳、そば、ピーナッツ、魚介類などがアレルゲンになっています。

アレルゲンが特定できないものを「非アトピー型」と呼ばれ、アレルギー性の炎症によってぜんそく発作が起こるが検査をしてもIgE抗体が検出できない場合です。

発作の誘因になるのは、タバコの煙や気温の変化、食べ過ぎや過労、激しい運動などです。

<ぜんそくの症状>

ぜんそく発作は夜中から明け方にかけて起こることが多く、始めは喉が詰まる感じや、胸が締め付けられるような感じがあり、呼吸するたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴という音が出ます。やがて呼吸が苦しくなり、横になっていられなくなり、座らなければ呼吸ができなくなります。

呼吸困難がしばらく続いた後、粘り気の強い吐き出しにくい痰が出ます。咳はいわゆる「からせき」で呼吸を苦しくさせます。重症発作の場合は呼吸困難が激しくかなり持続します。さらに重症になると血液中の酸素が不足するため、意識を失い、指先や唇が冷たく紫色になるチアノーゼ状態になってしまい、危険です。

ぜんそくかどうかの診断を受けるには呼吸器科やアレルギー科の受診がよいのですが、その他の病気からくる咳や痰などもあるので、かかりつけの病院で一度相談して下さい。ぜんそくは、診察、検査、問診の3つを総合し診断します。

受診前には次のことをあらかじめメモをとるなどして整理しておくと受診がスムーズになります。

  1. 症状はいつごろから起こったか
  2. どのような症状か
  3. 睡眠状態は良いか、食欲はあるか
  4. 現在治療中の病気や今までかかったことのある病気
  5. アレルギーの有無
  6. 生活習慣(タバコ、飲酒など)
  7. 家族でぜんそく、アレルギー、心臓病、ガンなどの人はいるか

<生活のアドバイス>

ぜんそくの治療は気道の炎症をしずめて、発作がおこらないようにすることで呼吸機能を回復し、健康な人と変わらない生活が送れるようにすることです。

薬物療法でのコントロールはもちろんですが、生活環境や生活習慣、体調管理など自分でできることが重要になります。

<生活のポイント>

ハウスダストをできるだけ避ける

布団や枕などの寝具を清潔にし、木綿のカバーをし、ほこりが出ないようにします。羽毛布団やそば枕、羽枕などは避けたほうが良いでしょう。部屋にほこりがたまらないように掃除を十分にし、掃除機をかけた後、雑巾で水拭きをするなどします。できればカーペットや絨毯などは敷かない方が良いでしょう。

室温、換気に注意する

気温の変化は発作を誘発するので、室内の温度を一定にしておくのが理想です。乾燥しすぎたり、隙間風なども発作を誘発します。

ペットは飼わない

犬や猫、小鳥、ハムスター、ウサギなどの毛が抜けるペットは飼わないようにしましょう。

その他

食べ過ぎや肥満は、呼吸器に負担を増やしますし、逆にやせすぎていても横隔膜の呼吸運動が低下するといわれています。標準体重を維持するように努めて下さい。

言うまでもなくタバコは絶対にいけません。又、激しい運動は避けるべきですが、発作がおさまっている間は水泳やスキーなどの運動が良いといわれています。注意したいのが市販のかぜ薬などに含まれる成分がぜんそくの原因になってしまうものもあるので、薬は勝手に飲まずにかならず医師、薬剤師に相談することが大切です。

<ぜんそくQ&A>

Q.転勤のため今の住居を引っ越すことになりましたが、今よりも都会へ出ていくことになりました。病状が悪化するのではないかと心配です。

A.都会は、排気ガスが多く、空気も良いとは言えません。環境が変わると、思わぬものがアレルゲンとなったり、ストレスを感じたりしがちなので、発作が起こる可能性が高くなりますが、薬の準備や緊急時に対応してくれる医療機関を前もって探しておくと良いでしょう。

しかし、あまり気にしすぎることも良くありません。外出時はなるべくマスクなどを使用し、吸引ステロイド薬などでうまくコントロールしていくことです。

Q.結婚し、妊娠出産のことを考えていますが、妊娠中にぜんそくの薬を使用していても大丈夫ですか?

A.妊娠中には使用できない薬がありますので、慎重にならなくていけません。かかりつけの医師に妊娠する予定があることを話し、薬や発作時の対応について相談しておくこと。吸引ステロイド薬中心の治療にするなどあなたに合った治療法をアドバイスしてくれることでしょう。

Q.子供が来年から小学校に入りますが、授業中に発作が出ないか心配です。また、体育などはどうすべきか悩んでいます。

A.先生にはぜんそくの発作があることを伝え、子どもにも具合が悪くなったら我慢せずに保健室などに行くように説明しておきましょう。体育は、運動が誘発となる場合は見学させるなどし、無理のない範囲で参加できるように先生に相談しておきます。体育で使用されるマットや運動場での砂ぼこり、理科室の実験に使用する薬剤、図工での絵の具など、刺激物を使用するときはマスクをするなど予防も考えます。

Q.子どもが夜、「ゼイゼイ」しながら眠っています。起こして薬を飲ませようとしたらぐずってなかなか飲んでくれません。どうすれば良いでしょうか。

A.よく眠っている場合は、無理に起こして飲ませる必要はないでしょう。発作が起こって息苦しくなると自然に目を覚ますので、その時に薬を使いましょう。夜間に苦しそうにする場合は症状のコントロールがうまくいっていない場合が多いのでかかりつけの医師に相談して下さい。

 

 

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