広報誌 健康倶楽部/2012年9月号

子ども特有の病気 〜アデノイド肥大〜

鼻の突き当たりの部分であり、鼻からのどに移行する部分でもある上咽頭にあるリンパ組織のかたまりをアデノイドといいます。このアデノイドが色々な原因で大きくなり、鼻や耳に様々な症状を引き起こす場合をアデノイド肥大と呼びます。

アデノイドはリンパ系の組織で、2歳〜5歳ぐらいがもっとも大きく、その後は次第に小さくなる傾向があります。小さい子どもは骨格や筋肉が十分発育していないので、相対的にアデノイドや口蓋扁桃ののどに占める割合は非常に大きくなります。アデノイド肥大は子ども特有の病気で、何が原因で病的に大きくなるのか、症状が現れるのかははっきりとしていません。

アデノイドなどのリンパ系の組織は免疫に関連していると考えられ、幼児期を過ぎても、風邪をひいた後などにアデノイド肥大の症状が現れる場合もしばしば見られます。

<アデノイド肥大の症状>

鼻の空気の通り道が狭くなるため、鼻づまり、鼻声、いびき、口呼吸などがおこり、ひどいときには眠っている間に呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸症候群が起こることもあります。

乳児期には特に鼻呼吸が重要なので、アデノイド肥大による鼻づまりが呼吸困難を生じさせ、哺乳がうまく出来ない状態になることがあり、十分にミルクが飲めず、栄養障害に陥る場合もあります。幼児の場合は、朝の寝起きが悪くなったり、昼間もボーっとして集中力が低下したりすることがあります。

<アデノイド肥大の合併症>

成長障害や集中力低下のため学習障害を生じることがあります。重症の呼吸障害が長期間続くと、眠っている間の血液中の酸素量が低下するため、脳にダメージが生じることもあります。また、心臓に負担がかかり、心不全や肺高血圧症などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。

鼻水の流れを妨げ、慢性副鼻腔炎を起こし、さらに症状が長くつづくうちに口を開け舌をつきだした顔つき(アデノイド顔貌)や漏斗胸、鳩胸などの胸郭の変形をきたすこともあります。耳の症状では、中耳と咽頭は耳管でつながっているため、アデノイド肥大で滲出性中耳炎になりやすく、軽度の難聴を引き起こすこともあります。

<検査と治療>

顔の側面からX線撮影を行うとアデノイドの増殖の程度などを確認出来ます。鼻からファイバースコープ検査をすることもありますが、小さな子どもには多少の痛みや恐怖感があるので積極的には行われていません。

治療は、風邪などの急性の炎症でアデノイドが一時的に腫れているような場合は、炎症を抑える薬の服用や、点鼻薬で症状を軽減することができますが、アデノイド肥大の症状が日常化している場合には、薬による治療はあまり効果がありません。アデノイド肥大は一般に8歳〜10歳ぐらいでアデノイド自体が小さくなっていくので症状が軽くなっていきます。 軽症の場合は経過観察で十分なこともあります。合併症を生じている場合は切除する手術を行います。

※症状が多様であるために原因がアデノイド増殖症と気づかないことも少なくありません。疑わしい症状がある時は耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。

 

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