広報誌 健康倶楽部/2012年9月号

乳房の病気とその症状

乳房の病気は乳がん以外にも色々な病気があり、軽症のものから重症のものまでいずれも早期に発見し、治療することが肝心です。

乳腺症

乳房内の上皮や間質が異常に増殖し、片方あるいは両方の乳房に痛みを伴うしこりができる病気です。30代以上の成熟期の女性に多く、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が低下する閉経後には発症が見られなくなることから、エストロゲンの過剰分泌が原因であると考えられていますが、はっきりした原因は不明です。

■症状

片方あるいは両方の乳房に表面がでこぼこしたような形のはっきりしないしこりができます。乳がんのしこりと異なるのは痛みを伴うことです。生理前や生理中はしこりが大きく、痛みも強くなりますが、生理後は症状が軽くなるのが特徴です。乳頭から乳汁のような分泌物が出ることもあります。

乳腺症のしこりは乳がんと区別がつきにくいため、しこりを発見したらすぐに検査を受けて下さい。触診、超音波検査、マンモグラフィーなどで検査をします。

■治療法

タンパク同化ホルモンや性ホルモン剤が投与されますが、効果が無い場合は外科的治療も行う場合があります。

乳輪炎・乳頭炎

乳輪や乳頭にただれや湿疹があり、かゆみを伴うこともあります。乳輪や乳頭部分には多くの皮脂腺があり、ここから分泌される皮脂によって保護されているのですが、皮脂の分泌の減少などにより炎症が起こることがあり、細菌に感染すると化膿することがあります。化学繊維でできている下着をつけている人に多く見られます。

■症状

乳輪や乳頭にただれや湿疹ができます。まれに乳腺パジェット病によるものもあるので、発見したら診察を受けましょう。

■治療法

患部を清潔にして木綿などの自然素材の下着を選びましょう。細菌に感染している場合は、抗生物質入りの軟膏が処方されます。

乳がん

乳房内の乳腺にできる悪性腫瘍で、乳がんは自分で発見できるガンで早期に発見し、治療を受ければ治すことのできるガンです。そのため定期的な自己診断と40歳以上の乳がん検診は必須です。

■症状

乳房にしこりができます。痛みはなく小さな豆粒くらいの大きさで、手で触るとコリコリしてかたく、指でつまむと皮膚が引っ込みます。しこりの大きさはガンの進行につれて大きくなっていきます。触診、超音波検査、マンモグラフィー(乳房専用X線撮影)、ファイバースコープなどを用い検査します。

■治療法

乳がんは摘出手術によって治療します。摘出の範囲は乳がんの進行度によって異なります。また、手術前・後に抗がん剤やホルモン剤投与などが必要になる場合もあります。最近ではできるだけ乳房を残す、乳房温存療法が主流になりつつあります。ガンのタイプや部位によって全切除しなければならない場合もありますが、早期発見でガンが小さいうちに治療することが体の負担も少なく済みます。手術をして、治った後も1ヶ月〜3ヶ月に一度は検診を受け、転移がないか調べる必要もあります。

<乳がんになりやすいと思われる人>

▼40歳以上の女性

▼独身女性(30歳以上)

▼初産年齢の高い人(30歳以上)

▼出産回数が少なく、授乳をしない人

▼高脂肪、高たんぱく質の肉をよく摂取する人

▼肥満又は肥満ぎみの女性

▼初潮が早く、閉経が遅い人

▼乳がんの家族歴がある人(母・姉妹)

▼一側の乳がんや良性乳腺疾患の既往がある人

一つでもあてはまれば乳がん検診を受けましょう。

※乳がんは従来日本女性には少ないガンだったのですが、近年は欧米レベルに近づいています。食生活が欧米化していることや、出産をしない女性、出産をしても授乳をしない人が増えていることなども原因のひとつと考えられます。第一に食生活、第二に定期健康診断と考え、病気の予防と早期発見に努めましょう。

<自己診断と定期乳がん検査で早期発見>

乳がんの治療はがんの進行の程度によって異なりますが、基本は手術により病巣を切除することになります。女性なら誰もが乳房を残したいと考えます。治療法については医師と十分に相談し、納得したうえで適切な選択をすることが大切です。

最近では研究が進み、乳房温存療法を行ったり、乳房再建の方法なども進んでいます。自分に最良の方法を選択できるようにするためには、乳がんを早期にみつけることが第一です。 それには自己診断でしこりの有無を調べたり、定期的に乳がん検診を受けることが重要です。

 

 

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