広報誌 健康倶楽部/2012年10月号

おとなのアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、本来子どもの代表的な皮膚疾患です。30年ほど前までは、通常小学校の低学年でほとんどの患者が軽快していたと考えられています。ところが1980年代になり、重症化や慢性化が問題とされ、従来みられなかった皮膚症状がおこることも明らかになってきました。

おとなのアトピー性皮膚炎の患者さんのほとんどは子どもの頃に発症しています。その症状がずっとつづいている場合もあれば、いったんよくなった後に再発する場合もありますが、いずれの場合も症状が重くなる傾向があります。このような難治性のおとなのアトピー性皮膚炎は、顔面の難治性紅斑、頸部の網状の色素沈着、全身皮膚の浮腫性の発赤、腫れ、かゆみなどの症状です。

アトピー性皮膚炎はアレルギー体質やドライスキンといった皮膚炎を起こしやすい体質をもっている人に起こりやすく、特に肌が著しく乾燥するドライスキンの場合は、皮膚のバリア機能が低下しているため、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が体内に侵入しやすくなります。そのため、皮膚にちょっとした刺激が加わるだけでも湿疹ができやすくなります。

アトピー性皮膚炎の発症、悪化の原因として、多様なアレルゲンに対するIgE抗体の過剰産生がみられます。室内のダニ、カビや室内でイヌやネコなどの動物を飼育している、花粉、食物などのアレルゲンのほか、ストレス、かく≠アと、発汗、気候の変化などにより皮膚の症状を悪化させます。何が悪化を助長させるかは、患者さんによって異なりますが、大人の場合はストレスが再発や悪化の引き金になるケースがよく見られます。

アトピー性皮膚炎の人は、皮膚のバリアー機能に異常があります。アレルゲンの吸収しやすさ、細菌、ダニ抗原などの皮膚への付着性の高まり、乾燥性皮膚の生じやすさなどが原因のひとつです。

<アトピー性皮膚炎を悪化させないために>

アトピー性皮膚炎を起こしやすい体質を変えることは難しいのですが、日常生活に支障がない程度に症状を改善することは可能です。

@毎日のスキンケア

まず、皮膚を清潔に保ち、皮膚に水分を与えることです。毎日、入浴し皮膚の汚れを落とします。ただし、アトピー性皮膚炎の人は、健康な皮膚の人よりバリアー機能が弱いので、石鹸でゴシゴシするのはタブーです。刺激の少ないせっけんを選び、よく泡立てて、やさしく洗うことです。時間を置かずに念入りにすすぐことが大切。入浴後は、乾燥が進むので、保湿剤を塗って水分の蒸発を防ぐようにします。保湿剤は市販のものでかまいませんが、刺激を感じるようなら、皮膚科で相談しましょう。

A薬を正しく使用する

医療機関を受診すると、炎症の程度や部位などに適した外用薬が処方されます。重症の患者さんには一時的に内服薬を用いる場合もあります。ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などは、塗る量や塗る期間を医師や薬剤師から教わりましょう。

Bアレルゲンの除去

ハウスダスト、ダニ、食べ物など症状を悪化させるものをできるだけとりのぞくことが大切です。人によって何に反応するかが異なるので、どんなときに、何をするとかゆみがひどくなるのかを記録してみましょう。

 

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