早期胃癌や早期食道癌に対する内視鏡治療
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内視鏡的粘膜下層剥離術
内視鏡的粘膜下層剥離術(以下、ESDとする)とは、早期胃癌や早期食道癌に対する内視鏡治療です。H18年に保険認可されたばかりの新しい治療法です。癌の周囲にヒアルロン酸などの薬液を注射し、十分な粘膜下膨隆を作ったうえで、さまざまな電気メスを用いて癌を少しずつ切りはがしていく方法です。理論的には電気メスを用いて切り取るため、切除する組織の大きさに制限がなく大きい病変を一括して切除することが可能になりました。癌を一括して切除した場合と分割して切除した場合では、一括で切除したほうが、癌の再発率が低いことがわかっています。
ESDの登場により、これまで内視鏡治療困難であった病変が治療可能になった半面、ESDでは、重篤な合併症が従来法よりも発生しやすく、高度な内視鏡技術、豊富な経験が必要になりました。このため、施設により治療成績にへだたりがでることが懸念されています。ESDで特に問題となっている合併症は術中の消化管穿孔です。この頻度は施設により異なりますが1-4%程度と報告されています(当センターのH20年の穿孔率は1.5%)。
当センターでは、虎の門病院で内視鏡研修を積んだ河野孝一朗医長を中心に多数のESD治療を行っており、安全な治療が行えるようさまざまな工夫を行っています。通常の治療は、鎮静剤を注射し眠った状態で内視鏡室で行っていますが、大きい病変など治療時間が長時間に及ぶと予想される場合には、全身麻酔下に手術室で治療を行っています。また、これまで難しいとされていた病変へのアプローチを容易にするために、スコープの弯曲部を2箇所搭載したマルチベンディング機能付きスコープを使用しています。このほか高周波電源装置にはICC200(ERBE社製)の発展型であるVIO300D(ERBE社製)を用いており出血が少なく、切れ味のよいESDに役立てています。
食道ESD 5病変食道癌 5病変 | 胃ESD 136病変胃癌 133病変胃腺腫 3病変 | |
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切除時間 | 中央値72.5min (40-130min) | 中央値 58min (12-420min) |
検体長 | 中央値44.5min (30-55min) | 中央値 49min(30-175min) |
後出血 | 0% (0/5) | 4.4% (6/136) |
穿孔 | 0% (0/5) | 1.5% (2/136) |
一括切除率 | 100% (5/5) | 96.3% (131/136) |
対象 2008年1月1日から2008年12月31日までの1年間に施行したESD141病変
治療機器紹介
マルチベンディングスコープ

ESDの実際の治療例
胃体部小弯から後壁の大部分を占める巨大な表層拡大型胃癌

ESDの手順
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アルゴンプラズマ凝固を用いて癌の周囲をマーキングした後、 ヒアルロン酸を粘膜下に注入します。
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マーキングを目印にして電気メスで癌の周囲を切開していきます。
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切開後、癌の下(粘膜下層)にもぐりこんで、電気メスを用いてさらに癌をはがしていきます。
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癌を切りはがした後の人工の胃潰瘍に残っている血管を止血鉗子と止血クリップを用いて処理します。
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8cmを超える大きいがんでしたが、ESDにより治癒切除が得られました。