●潰瘍のできやすい場所
胃潰瘍は、一般的に胃角部のあたりにできやすいが、高齢者は、胃底部の噴門の近くにもできやすい。
十二指腸潰瘍は、胃酸の影響を受ける十二指腸の始まりの部分、十二指腸球部にできやすい。
●男性に多い
胃・十二指腸潰瘍の患者様は男性に多く、男女比は3対1になっている。
●胃潰瘍と十二指腸潰瘍の比較
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胃潰瘍 |
十二指腸潰瘍 |
発症原因 |
防御因子の働きの低下で起こりやすい |
攻撃因子(胃酸)が過多になることで起こりやすい |
患者 |
中高年に多い |
20〜30代に多い |
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潰瘍のできるメカニズム |
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潰瘍とは |
潰瘍とは、皮膚や粘膜の一部が深く傷つき、えぐれてしまうことをいいます。ひどい場合は、組織や臓器に孔があくこともあります。胃や十二指腸の場合は、粘膜に炎症が度重なることで、潰瘍が形成されていきます。(図1)。 |
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攻撃因子と防御因子 |
潰瘍ができるメカニズムはまだ完全に解明されていません。胃粘膜に対して攻撃する因子と、それを防ぐ因子との均衡が崩れたときに潰瘍ができるのではないかと考えられています。
攻撃因子となるのは、胃酸(消化酵素ペプシン、塩酸)や、ヘリコバクターピロリ菌のだす毒素などです。とくに胃酸は、胃さえも溶かしてしまう強い消化力をもっています。そのため、胃の粘膜は、胃酸を分泌すると同時に粘液を分泌したり、傷ついた粘膜細胞をすぐに修復して自分を守っているのです(防御因子)。
けれども、何らかの原因により、胃酸が増えてしまう、もしくは粘液の分泌が減ったり、粘膜細胞の修復が遅れてしまうと、胃壁は胃酸にさらされ、傷つくことになります。
十二指腸も胃酸の影響を受けるため、同じ仕組みで潰瘍が形成されます。 |
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ピロリ菌の影響 |
また、治療をしても潰瘍がなかなかよくならなかったり、くり返し潰瘍ができる場合は、ヘリコバクターピロリ菌の感染が疑われます。ピロリ菌がだす毒素により、胃に慢性の炎症が起こることがわかっています。 |
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薬剤の影響 |
非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDS)が、潰瘍の原因となることもあります。これは、薬が粘膜を傷つけたり、防御因子の働きを弱める作用をしてしまうためです。 |
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誘因は |
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胃・十二指腸潰瘍の誘因 |
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*ストレス
*過労
*喫煙
*飲酒
*香辛料
*熱すぎる・冷たすぎる食べ物
*消化の悪いもの
これらは胃酸の分泌を促進したり、防御因子の働きを弱めるため、胃・十二指腸潰瘍の誘因となります。
とくにストレスは大きな誘因となると考えられています。ストレスが潰瘍を引き起こすメカニズムについては、右の図3を参照してください。 |
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症状 |
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胃・十二指腸潰瘍の症状には、次のようなものがあります。 |
●みぞおちの痛み |
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●胸やけ |
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●吐血・下血 |
*空腹時に起こることが多い。
*十二指腸潰瘍の場合は夜間に痛むことが多い。 |
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*とくに十二指腸潰瘍で起こることが多い。 |
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潰瘍が血管を傷つけることで、出血が起こる。口から血を吐く場合を吐血、血の混じった便がでることを下血という。真っ黒なタール便が出ることもある。 |
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悪化すると・・・ |
危険な3大合併症
●穿孔(せんこう)
潰瘍が進行し、胃の壁に孔があいてしまう。
多くは、急性腹膜炎を起こす。
●大出血
大量に出血すると、ショック状態に陥ることもある。
●幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)
潰瘍により、幽門が狭くなると、食物の通過障害
が起こる。 |
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緊急手術が必要なこともある |
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検査と治療 |
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検査 |
潰瘍が疑われる場合は、バリウムや発泡剤を使ったX線検査や、内視鏡検査が行なわれます。がんかどうかを調べるために、組織を内視鏡で採取することもあります。 |
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治療 |
〈薬物療法〉
現在は、よく効く薬が開発されたため、治療の多くは薬物療法を中心に行なわれています。
症状により、次のような薬が処方されます。
*胃酸の分泌を抑える薬
*神経に働きかけて、胃酸の分泌命令をださないようにする薬
*粘膜を保護する薬
*粘液の分泌を増やす薬
〈手術療法〉
危険な合併症が起きた場合は、緊急手術が行なわれます。また、再発をくり返すときなども、手術療法が行なわれる場合があります。
〈除菌〉
潰瘍が再発をくり返す場合、治りにくい場合は、ヘリコバクターピロリ菌が関係していることが少なくありません。ピロリ菌に感染していた場合は、薬を服用して、ピロリ菌の除菌を行ないます。
〈その他〉
薬が原因で潰瘍ができている場合は、薬の服用を止めたり、別の薬に変えることになります。 |
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●再発を防ぐために・・・ |
胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、一度治っても再発する頻度の高い病気です。再発を防ぐために、次のようなことを気をつけましょう。
胃・十二指腸潰瘍とストレスは、とても深い関係があります。そのため、せっかく治っても、またストレスの多い環境に戻れば、再発を招くことになります。ストレス以外にも、喫煙や過労、暴飲暴食など、潰瘍を引き起こす誘因となったものを、できるだけ避ける必要があります。
また、食事の際には、消化の悪い食べ物や刺激の強いものは避けるようにしましょう。胃の負担を減らすために、食べ物はよく噛むことを心がけてください。
胃・十二指腸潰瘍の一番の予防法は、今までの心身に負担をかけていた生活を見直すことなのです。 |
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