内臓脂肪メタボリックシンドローム
 
「ちょっとお腹がでてきた」「コレステロール値がやや高いといわれた」「血糖値が高めだ」「少し血庄が高い」―肥満、高脂血症、高血糖、高血圧は、互いに関連があります。ひとつひとつの異常はわずかでも、それがいくつか重なると、大病を引き起こす可能性がぐっと高くなってしまうのです……。

病気のもとは、
  
内臓脂肪の蓄積

 肥満は、大きく二つのタイプに分けられます。皮膚の下に脂肪がつく「皮下脂肪型」と、内臓の周辺に脂肪がたまる「内臓脂肪型」です。内臓脂肪型の肥満は中高年の男性に多く、おなかだけがボコっとでているのが特徴です。しかし外見上はさほど太っていなくても、内臓周辺に脂肪がたまっていることもあります。
 太っている人は、高脂血症や高血圧などの病気をもっていることが少なくありません。これは、過剰な内臓脂肪が、高脂血症、高血糖、高血圧を引き起こすためです(図1参照)。これらはすべて、動脈硬化の危険因子です。
 内臓脂肪型肥満である人のうち、高脂血症・高血糖・高血圧のいずれか二つをもっている人は、メタボリックシンドロームと診断されます(図2参照)。
 一つひとつの異常は軽度にみえても、それらがいくつか重なると、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を引き起こす可能性がぐっと高くなります。ある研究では、これらの因子を三つ以上もっている人は、全くもっていない人に比べて、狭心症や心筋梗塞の発症率が30倍以上にもなることがわかりました。

図1
内臓脂肪  脂肪細胞は、体内の糖代謝や脂質代謝に関わる物質を作りだし、身体のバランスを調節しています。しかし、内臓脂肪が過剰になると、これらの代謝機能に異常が生じます。
高脂血症
高血糖
高血圧
○内臓脂肪が高脂血症を招く
 内臓脂肪が増えると、血液中に分泌される中性脂肪が増え、善玉とよばれるHDLコレステロールが減少します。すると悪玉とよばれるLDLコレステロールが増加していきます。

○内臓脂肪が高血糖を招く
 内臓脂肪が増えると、血液中に糖分が多くなります。さらに、インスリンの働きが低下して、糖分がエネルギーとして利用されなくなり、ますます血液中に糖分が増えていきます。

○内臓脂肪が高血圧を招く
 内臓脂肪が増えると、血管が硬くなって弾力性が低下し、血圧が上がります。また、血糖値が高くなることでも血圧は上がります。
動脈硬化
○動脈硬化が進行する
 血管壁にコレステロールがたまって粥状の塊ができると、血管の内腔が狭くなります。これが破れると血栓ができ、血管を完全に塞いでしまうことがあります。
心筋梗塞
脳卒中
○心筋梗塞・脳卒中などを発症する
 このような血管の障害が心臓で起これば心筋梗塞に、脳で起これば脳卒中になります。
  
図2 メタボリックシンドロームの診断基準
おへその高さの腹囲
男性 85cm以上
女性 90cm以上


腹囲は最も細いとこ
ろではなく、おへそ
の周囲で測る。

内臓脂肪を正確に測
定するには、CT画
像の診断を行なう。

かつ
◎脂 質
 中性脂肪150mg/dl以上
   または
 HDLコレステロール40mg/dl未満
◎空腹時血糖
 110mg/dl以上
◎血 圧
 収縮期血圧130mmHg以上
   または
 拡張期血圧85mmHg以上
以上3つのうち2つ以上当てはまる人
※メタボリックシンドロームの基準値は、一般の高血圧や高脂血症の基準よりも厳しくなっています。
 
非常事態DIET
 メタボリックシンドロームを解消するには、食生活の改善と運動が不可欠です。食事と運動の両方からアプローチすることで、治療効果が高くなります。

 食 事
○朝食をしっかり食べ、夜食を控える。3食を規則正しくとり、できる限り、毎日同じ時間に食事をするよう心がける。
○緑黄色野菜をたっぷり食べる。
○エネルギ一過多にならないよう、食べすぎに気をつける。
○脂肪の摂取量が多くなりすぎないようにする。とくに、飽和脂肪酸を含む肉の脂は控えめに。
○甘いものの食べすぎに注意。どうしても食べたいときは、食後に。
○濃い味つけは高血圧を招くばかりか、食べすぎの原因にもなる。
○お酒は控えめに。ストレス解消にアルコールを飲んでしまう人は、別の解消法を探してみよう。
 
 運 動
 時間をとってウォーキングや水泳などの運動をするのが最善の方法ですが、仕事などでなかなか思うように運動できないことも多いものです。無理なく生活のなかに取り入れて、長続きできる方法をみつけてください。
 また、減量に運動を取り入れると、リバウンド(一度減量しても体重がもとに戻ってしまう、あるいはもとの体重よりも増えてしまうこと)が起こりにくくなります。

○ウォーキング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動をできるだけ毎日行なう。内臓脂肪の解消のほか、高血圧、高脂血症、高血糖の改善に効果がある。
○通勤を運動時間にする。バスは一つ前で降りて歩く、エスカレーターやエレベーターを使わないなど。昼の食事は遠くの店まで歩いていく。
○仕事や家事でこまめに動くようにする。
○テレビをみながらストレッチや足踏みなどをする。
  
 その他
○毎日、体重や腹囲を測り、グラフにする…身体の状態を知ることができ、減量の励みにもなります。体重が増えているときには、酒席や夜食など、原因になっている行動をみつけることができます。
○禁煙をする…喫煙は動脈硬化の危険因子です。

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2006年4月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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