食餌療法
 現在、何らかの生活習慣病で通院をしている患者さんはおよそ1400万人にのぼるといわれています。そして、そうした生活習慣病のなかには、食生活が深く関わり、病気の進行に影響するものも少なくありません。
 そのため、病気の治療の一環として、患者さんの食生活に医師の指導が入ることがあります。患者さん自身による自己管理が必要になりますが、病気と付き合っていく上でとても大切なものです。

食餌療法ってなんですか?
 「食事」とは、平たくいえば、生きていくために必要なエネルギーを作る材料である「食物」を身体に取り込む行為ということができます。
 けれども、私たちにとっての食事とは、そうした行為のみにとどまりません。楽しみを生み、人間の精神的生活を豊かにするものです。また、そこには嗜好が介在し、人は多様な食生活を営んでいます。
 しかし、その食生活が偏りすぎると、体内に特定の成分が増えすぎたり、あるいは不足したりして、病気の素地を作ってしまう場合があります。
 食餌療法とは、医師や管理栄養士の指示に基づいて、献立を組み立て、食事の量や成分を増減させることで、病気の改善を目指すものです。
 
食餌療法の行い方
 図1にある病気は、食餌療法が行われることが多い病気です。食餌療法は、病気の改善に必要なだけでなく、合併症を予防するためにも非常に重要で、治療の土台となるものです。
 食餌療法は、患者さんがいかに自己管理をしていけるかということが重要な鍵になります。
 とくに食餌療法を行う上で指導されることが多いのは、「食べすぎ」です。日常生活に必要なエネルギーより、食事による摂取エネルギーが上回ると、肥満につながるからです。肥満はさまざまな生活習慣病のもととなります。自分に必要なエネルギーの目安を、図2を参考に計算してみましょう。

食餌療法を行う病気(図1)
糖尿病 アルコールを避け、脂肪を摂りすぎない食事を心がける
(詳細は別枠参照)
高脂血症 食べすぎ飲みすぎに注意し、コレステロールを摂りすぎない食事を心がける
高血圧症 塩分を摂りすぎないようにする。女性8g、男性10gが1日の塩分量の目安 肝臓病 食べすぎ飲みすぎを避けて、肝臓をいたわる。良質なたんぱく質を含む食品を食事に取り入れる
腎臓病 塩分を摂りすぎないようにする。栄養バランスのよい食事を心がける 心臓病 塩分や、動物性脂肪の摂りすぎに注意した食事を心がける
高尿酸血症 食べすぎ飲みすぎを避けて、プリン体を含む食品を摂りすぎないようにする(プリン体は1日400mg以内に)    


1日の適正エネルギー量の目安(図2)

まず、自分の標準体重を計算しましょう
身長(m)×身長(m)×22

次にあなたの身体活動量を選び
次の式を計算してみましょう

事務職・主婦など…25〜30kcal
自営業・営業職など…30〜35kcal
重労働の人…35kcal


標準体重×身体活動量=適正エネルギー量

例えば…
身長168cm、事務職(25kcalとする)の人の場合
適正エネルギー量は、1552kcalです

糖尿病と食餌療法
 みなさんは、日本人の10人に1人が患者、もしくは予備軍になっているという病気をご存じですか?
 それは糖尿病です。患者数は、増加傾向にあり、また発症が若年化しているなど、状況は深刻になっています。
 糖尿病は一度かかると、完治することが難しく、合併症を引き起こしやすい病気でもあります。それだけに、根気よく治療を続けていく必要があり、その土台となるのが、食餌療法なのです。
 最後に、糖尿病ではどんな食餌療法が行われるのかみてみましょう。
糖尿病の食餌療法

@糖尿病とは
 身体のエネルギー源となるブドウ糖の一部は、血液によって細胞に運ばれていきます。そして、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの助けを借りて細胞内に入ると、燃焼され、エネルギーに変わるしくみになっています。
 しかし何らかの原因で、膵臓が充分な量のインスリンを分泌できなくなると、細胞に入れないブドウ糖が血液中に増えてしまい、「高血糖」状態となります。過剰になった糖は、尿中にも排出され、これを「糖尿病」といいます。いくらブドウ糖が血液中にたくさんあっても、細胞に入れなければエネルギーにはなれないため、だるさや疲れが症状として現われるようになります。また、高血糖が引き金となり、さまざまな合併症を引き起こしやすくなります。

Aなぜ食餌療法が必要?
 糖尿病と肥満には、深い関わりがあります。太ると、身体の脂肪細胞が増えますが、この脂肪細胞から、インスリンの効果を悪くする阻害物質が分泌されることがわかっているのです。このため、糖尿病の食餌療法では、医師によってその人に合ったエネルギー量が設定され、患者さんは、定められたエネルギー量のなかで食事をすることになります。

B食事で注意すべきこと
 糖尿病患者さんの食事は、次の3つの点に気をつけることが大切です。
☆食事は自分の適正なエネルギー量の範囲内で
 ※患者さんによって、1日に必要なエネルギー量は違いますので、医師に決めてもらいましょう。
☆食事はバランスよく摂ろう
 ※どんな栄養素もバランスよく摂れるよう、いろいろな種類の食品を献立にとりいれましょう。
☆3食のエネルギー量は均等になるようにする
 ※朝食も、昼食も、夕食も同じようなエネルギー量になるよう献立をたてましょう。また、食事は、
  規則正しく、いつも同じ時間に食べるようにしましょう。

実践にあたっては…
 医師や管理栄養士の指導を受けながら、食品交換表について学び、それに基づいた献立をたてるようにします。


 


−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2006年8月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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