女性専科
卵巣の腫瘍
 卵巣とは、卵子を蓄えるための女性特有の臓器で、男性の精巣と対になるものです。
 また、卵巣は様々な腫瘍ができやすい臓器ともいわれています。卵巣の腫瘍にはどのようなものがあり、どのような治療が行われるのでしょうか。
卵巣とは…
 卵巣とは、子宮の両側にある親指大の臓器で、アーモンドのような形をしています。女性は、そのなかに、卵子の元となる数百万もの原始卵胞という細胞をもって生まれてきます。
 原始卵胞は、思春期になると成熟し、このなかで育った卵子が毎月ひとつずつ卵巣の外に排出されます。卵子は、卵管采で受け止められ、卵管のなかに入ります。卵管内で精子と出会い、受精すれば、子宮に運ばれ、妊娠が成立したことになります。
 卵巣には、このように、胎児のもととなる卵子を育てる役割の他、妊娠に備えて子宮をコントロールする2種類の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を卵胞から分泌する役割をもっています。
 卵巣は、腹部の奥にあり、病気になっても自覚症状が現われにくいことから「沈黙の臓器」といわれています。
 
卵巣腫瘍
 卵巣は、最も腫瘍が生じやすく、また、様々な種類の腫瘍ができやすい臓器だといわれています。腫瘍ができる場所として最も多いのが、卵巣内部の表面を覆う「上皮」です。次に卵子の元になる「胚細胞」、多くはありませんが、「卵胞」にできることもあります。
 卵巣に腫瘍ができても、初期では自覚症状が乏しく、腫れたり内容物がたまって卵巣が肥大して初めて気づくケースが多いようです。
 卵巣腫瘍には、様々なタイプがあり、図2のようになっています。
★卵巣のう腫
 卵巣のう腫とは、卵巣内に液体や脂肪がたまってしまう、触るとやわらかい腫瘍のことです。肥大するとこぶし大やそれ以上になることも少なくありません。なぜ、こうしたのう腫が形成されるのか、原因はまだよくわかっていません。
 卵巣のう腫は、中身によって次の4種類に分けられます。これらは9割が良性であるといわれています。
漿液性のう腫
思春期以降、年齢を問わず卵巣のう腫で最も多いタイプ。漿液という、卵巣から分泌される透明の液体がたまったもの。
粘液性のう腫
閉経後の女性に多いゼラチン状の粘液がたまったもの。肥大し、かなり大きくなる。
皮様性のう腫
20〜30代の女性に多い人体の元となる、胚細胞にできるもので、歯や毛髪などの組織が含まれたドロドロした物質がたまる。両方の卵巣に生じることもある。
チョコレートのう腫
20〜30代の女性に多い。子宮内膜症が卵巣内に発症したもの。
月経の度に出血した血液がたまり、のう腫が作られる。
症状
初期の段階では、自覚症状はほとんどない。進行し、のう腫が肥大してくると、外側から触れて気づいたり、腹痛や腰痛、頻尿や便秘などが生じる。のう腫が大きくなると、卵巣の根元が回転してねじれてしまう、危険な「茎捻転」を起こすことがあり、激痛が生じる。
検査
診察や、超音波診断、CT、MRIなどを行い、のう腫なのか、充実性腫瘍なのかを診断する。
治療
7cm以上ののう腫は、茎捻転のおそれがあるため、原則として摘出する。妊娠に関わる臓器であるため、摘出の方法は、のう腫の状態にもよるが、患者さんの意思が可能な限り反映される(図3)。
 
★充実性腫瘍
 触ると、かたい腫瘍のことで、多くは悪性、つまりがんということになります。良性の場合は、卵巣のう腫と同じような治療が行われます。
卵巣がん
 卵巣がんは、卵巣にできた悪性の腫瘍のことです。卵巣は、排卵の度に組織がはがれ、修復されます。その際、組織があやまった形で修復されるとがんになると考えられています。
原因
卵巣がんは近年増加傾向にある。その一因として、女性の晩婚化や、生む子どもの人数の減少により、一生のうちで排卵する回数が増えていることが、指摘されている。
妊娠をするとその期間は排卵が止まるため、その分、一生涯の排卵回数が少なくなる。
 また、食生活の欧米化による、動物性脂肪やたんぱく質の摂取増加も原因のひとつと考えられている。
症状
初期では自覚症状がほとんどない。進行して卵巣が腫瘍により肥大化すると、下腹部に違和感を感じたり、腹部に水(腹水)がたまり、膨満感を感じるようになる。
検査
診察、超音波診断やCT、MRI、腫瘍マーカーなどを行い、良性か悪性かの診断を行う。また、手術して患部を見ることもある。
治療
卵巣がんの多くは上皮由来であり、その場合、腹膜や他の臓器にがん細胞が広がることが多い。がんの進行や、患者さんの意向(妊娠を強く希望しているなど)を踏まえつつ、手術が行われる。また、卵巣がんは、抗がん剤がよく効くがんであるため、抗がん剤で腫瘍を小さくしてから、手術を行うケースも少なくない。
卵巣の病気を早期発見するために…
 自覚症状に乏しい卵巣の病気は、進行してから発見されるケースが少なくありません。そのため、早期発見には、やはり定期検診が欠かせません。
30歳になったら、年に1回は婦人科で検診を受けることをお勧めします。子宮がん検診の際などに、卵巣の超音波診断を受けると、卵巣の腫れの有無もわかり、病気の早期発見につながります。しかし、診察などに抵抗があり、何らかの異常を感じていてもなかなか受診できない女性も少なくないようです。婦人科では、患者さんが診療・検査を、不安を感じずに受けられるようきちんと配慮されていますので、身体に異常を感じたら、必ず受診するようにしましょう。

こんな症状があったら、卵巣に異常がある可能性が。
一度病院を受診しましょう!

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−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2007年5月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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