冬に気をつけたい食中毒&感染症
ノロウイルス
 近年、猛威を振るっているノロウイルス。下痢や嘔吐を引き起こし乳幼児やお年寄りでは重篤な症状になるケースも報告されています。では、ノロウイルスから身を守るには、どうすればよいのでしょうか?また、治療法はあるのでしょうか?
冬はノロウイルスの季節 
 近年、ノロウイルスによる冬季の食中毒が問題になっています。数字の上でも、食中毒患者数の30%以上はノロウイルスが原因(平成17年・厚生労働省資料より)とされています。
 また、感染症としてもノロウイルスは患者数の多い疾患。乳幼児や学童だけでも、推定で200万人が罹患しているとする研究者もいます。
 これだけ患者数の多いノロウイルスの感染原因は、何なのでしょう?

「ノロウイルス現場対策 その感染症と食中毒」
  (2006年3月発行・幸書房・監修/丸山務 著者/西尾治・中村明子・古田太郎)
 
ノロウイルスによる食中毒
◇原因と経路
 ノロウイルスの食中毒の原因として有名なのは、カキなどの二枚貝。しかし、これらを食べていなくても、多くの人がノロウイルスによる食中毒にかかっています(表1参照)。なぜなのでしょう?
 その答えは「人」にあります。
 ノロウイルスは口から人体に入り(経口感染または空気感染)、小腸で増殖し、便や嘔吐物から大量に排出されます。このウイルスが手などに付着し、食べ物を介して感染すると食中毒になります。例えば、ウイルスを手に付着させている人が料理をすれば、食べ物にウイルスがついて、感染源になります。また、調理器具の洗浄が不充分でウイルスが除去できていない場合も感染源になります。
 この他、ウイルスに汚染された井戸の水や簡易水道の水も、感染源になります。
 
◇予防法
@カキなどの二枚貝は、中心温度85度以上の状態で1分間の加熱調理をしてから食べる
Aまな板や包丁などの調理器具はこまめに洗い、消毒も行う
B念のため、野菜や果物など、生のまま口にするものは充分に洗ってから食べる
C料理をする前にはしっかりと手を洗う。また、嘔吐や下痢などの症状がある人は料理をしない
 
ノロウイルスによる感染症
◇原因と経路
 食べ物を介さないでノロウイルスに感染すると、「感染症」となります。ノロウイルスによる感染症は、表2のような経路で起こります。
 
◇予防法
@ トイレに入った後や食事の前には必ず手を洗う。感染者の便や嘔吐物を処理した後は、念入りに手洗い、うがいをする
A 手を洗った後に使用するタオルは清潔なものを使う。また、感染者とのタオルの共用は避ける
B 感染者の便や嘔吐物を処理する際は、使い捨てできる大きめの工プロンと、使い捨てのマスク、ビニル手袋を着用して行なう。また、雑巾は使用後に消毒するか、ペーパータオルのように使い捨てができるものを使う。使用したバケツの消毒も忘れずに(処理の仕方は下の図参照)
C 便や嘔吐物で汚れた場合、拭いただけではウイルスが残ってしまう。塩素系などの消毒液で消毒を。また、換気も行ない、空気中のウイルスを外にだす
※床や壁紙などの素材によっては、塩素系の消毒液が使えない場合があります。
 
ノロウイルスの症状と治療
 ノロウイルスに感染・発症すると、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状が現われます。これらの症状が起こったら、必ずかかりつけ医を受診してください。
 ただ、健康体であれば重篤な状態になることは極めてまれですし、症状も軽かったり、まったくでない場合もあります。また、ノロウイルスによる症状は、およそ1〜3日以内で回復し、後遺症などが残る心配もまずありません。
 気をつけなければならないのは、抵抗力の弱い乳幼児やお年寄りです。乳幼児やお年寄りは、重篤な症状をきたす場合もあります。脱水症状を起こしたり、体力を消耗しやすいので、水分と栄養をしっかり摂りましょう。脱水症状がひどい場合には、医療機関で点滴を受けることもあります。
 また、嘔吐物が喉に詰まらないようにしましょう。とくにお年寄りは注意が必要です。本人だけでなく、周囲の人も気をつけてください。
 なお、症状が治まっても10日〜3週間程度は便などからウイルスが排出されます。症状が落ち着いてからも、感染源にならないようにしましょう。
 現在、ノロウイルスに対するワクチンや治療薬は開発されていません。このため、治療では脱水症状の緩和などの対症療法しかありません。
 ですから、日頃からの予防と健康管理が、とても大切なのです。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2007年10月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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