日本人の死亡原因第1位は動脈硬化!?

動脈硬化
動脈硬化とは
 動脈硬化とは、動脈の老化に加えて、糖尿病・高脂血症・高血圧・喫煙・ストレスなどの要因が重なり、動脈がつまったり、硬くもろくなったりすることをいいます。
 動脈硬化を起こすと、血液の流れは阻害され、臓器や下肢に必要な栄養や酸素が正常に供給されなくなり、臓器や下肢の壊死という生命に関わる合併症の発症を招く可能性が高くなります。
 日本人の三大死因といわれる、がん・心疾患・脳血管障害のうち、心疾患・脳血管障害には動脈硬化が大きく関与しています(表)。
 このため「日本人の死因の隠れた第1位は動脈硬化である」という専門家もいます。
 
動脈硬化が原因となる主な病気とその治療法   (表)
脳梗塞 脳梗塞の治療は、主に薬物治療が行われているが、小脳にできた大きな梗塞や生命の危険があるときには、手術療法が行われる。
心筋梗塞 症状など、様々な条件を考慮し、3つの治療方法(薬物療法・カテーテル療法・冠動脈バイパス手術)から選択される。
大動脈瘤 動脈瘤を直接治癒する薬はないため、基本的には、手術で瘤を取り去り、人工血管に置き換える手術療法が行われる。
腎硬化症 食事療法(減塩食〔1日6g以下〕)、運動療法が行われる。これらの治療で血圧のコントロールが不十分な場合、降圧薬などの薬物療法を行う。悪化して慢性腎不全になった場合は、透析治療が必要となる。
閉塞性動脈硬化症
(下肢の壊死)
血小板凝集抑制薬や血管拡張薬などによる薬物療法。閉塞性動脈硬化症の場合、全身に動脈硬化を合併している可能性が高い。そのため、合併症の発見・治療も同時に行われる。
動脈硬化の治療
 現在のところ、動脈硬化そのものの治療法は確立されていません。薬物療法によって血液の通りを改善する、手術療法によって動脈そのものを人工の物に換えるなどの治療法もありますが、これらは、動脈硬化によってもたらされた合併症が重篤化したときに行われるもので、身体やQOL(生活の質)に、たいへんな制限や苦痛をもたらします。
 ただ、ひとついえることは、動脈硬化は、ある日突然起こるのではないということです。自覚症状だけでなく、健康診断の重要性を認識して、糖尿病、高脂血症、高血圧など、動脈硬化をもたらす要因になる病気を積極的に予防していきましょう。そのためには、食生活の改善や運動、禁煙、ストレス対策が大切です。
 
動脈硬化の種類
1.粥状(アテローム)動脈硬化
動脈内の内膜に粥状のコレステロールの固まり(アテローム)ができて血管が狭くなり、血管がつまる恐れがある。心臓、脳、肝臓、下肢へ血液を供給する大動脈に起こりやすい。
2.細動脈硬化
高血圧の影響で、脳、肝臓、眼の網膜などにある細動脈が傷んだ状態になり、血管から出血する恐れがある。
3.中膜動脈硬化
動脈の中膜とよばれる部分にカルシウムが沈着し、石灰化してできる主な原因は老化だが、カルシウムなどの代謝異常があると、進行が早まる。
動脈硬化予防のために
食生活の改善
◆カロリーコントロール
 カロリーコントロールの前に、まずはご自分にあてはまる標準体重を知ることから始めましょう。標準体重の計算の仕方は様々ですが、最も簡易で知られる方法は、次のような式で計算します。
標準体重=(身長−100)×0.9
 例えば、身長170cmの方であれば、(170−100)×0.9=63kgとなります。そして、ご自身の体重が標準体重より20%以上重い方は、導きだした標準体重に、男性は30Kcal、女性は25Kcalをかけてみてください。
 身長170cmの場合だと、男性63×30kcal=1890kcal、女性63×25kcal=1575kcalとなります。こうして導きだした数字が1日のカロリー摂取の目安になります。これらはあくまで目安です。ご自分の適正カロリーを知りたい方は、厚生労働省のホームページをみると、詳しく解説されています。
◆コレステロールの調整
 動物性脂肪には、動脈硬化を促進する飽和脂肪酸が多く含まれています。動物性脂肪の摂り過ぎに注意し、動脈硬化を予防する不飽和脂肪酸を多く含む食品(植物性油や魚類の脂肪)とのバランスを取りましょう。また、コレステロールの吸収を妨げ、体外に排出する働きがある食物繊維を豊富に含む食品(野菜類や海藻類など)を摂るようにしましょう。
◆塩分の調整
 かつて、日本人の食生活は、高塩分・低カロリーの傾向がありました。現在は高カロリーが心配されていますが、高塩分にも注意が必要です。塩分には血圧を上昇させる作用があります。
運動
 厚生労働省が発表した「健康づくりのための運動指針2006」などを参考に、歩行(1日約20分)・階段昇降・ラジオ体操などを上手に組み合わせて、自分にあった無理なく続けられる運動をしましょう。
禁煙
 煙草には、ニコチンをはじめ、動脈硬化をもたらす様々な物質が含まれています。喫煙習慣のある方は、まず、禁煙から動脈硬化の予防に取り組みましょう。
ストレス対策
 ストレスにより起こる身体の反応が、動脈硬化を早めると考えられています。ストレスと上手に付き合っていく方法を、積極的にみつけてください。
 すでに、前述の「動脈硬化をもたらす要因になる病気」と診断された方や、それらの病気が疑われる方は、動脈硬化を進行させないように、医師の指示にしたがい、充分な取り組みを行ってください。


「日本人の食事摂取基準について」 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2.html
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2007年12月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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