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アンチエイジング(抗加齢)のために大切なのは、心と身体が年齢相応の健康を維持していることです。そのためにはストレスのケア、バランスのとれた食事、毎日の運動が欠かせません。ただこれらは、取り組みを始めることや、その継続に困難を感じることがあります。そこで今回は、「心と身体のアンチエイジング」のための原動力となるようなアンチエイジングを医学として捉えようとする最近の動きと、ある程度年齢を重ねられた方にもアンチエイジングは有効なのか、このふたつのトピックスをお届けします。
 
◆アンチエイジング医学
 アンチエイジングは、日本でも10年ほど前から、女性の加齢に伴なうお肌対策を中心として、形成外科及び美容に関連する分野で発展してきましたが、ここ数年、見た目の美しさに限定せず、見えない部分(身体の内部)に予防医学としてその考え方を活かしていこうという動きが、医療の分野に生まれてきました。これを「アンチエイジング医学」とよぶ専門家もいます。
 動脈硬化と関係のある血管年齢を例にあげると、まず脈派(大動脈に起こる圧力の変化を波形にとらえたもの)が血管を伝わる速度によって、血管の硬さ・詰まり具合を測定し、血管年齢を調べます。この数値を標準とされる数値と比較して、動脈硬化の程度を探ります。ストレスのケア、食事指導、運動指導、さらにはサプリメント療法、薬物療法などによって動脈硬化の危険要因を改善していきます。そして、より危険性が高いと判断されるケースでは、その段階で治療に移ることも可能になるので、病気の重篤化を未然に防ぐこともできるようになるでしょう。
 こうした試みは、血管年齢以外にも、骨年齢、脳・神経年齢、筋肉・体脂肪量、酸化ストレスと抗酸化力、ホルモン濃度などでも行なわれています。これらは、骨粗しょう症や認知症、生活習慣病対策などに、大きく貢献することが期待されています。
 今まで見えない形で進行していった加齢がこのように「見える形」になることは、アンチエイジングを始めるきっかけにもなり、心身ともに年齢相応の健康状態を維持していくための原動力ともなるでしょう。
 
 
◆60歳からのアンチエイジング
 60歳を過ぎても、アンチエイジングは可能でしょうか?そのことを、70代で2度のエベレスト登頂に成功した、冒険家・三浦雄一郎氏のケースでご紹介したいと思います。
 三浦氏は新聞のインタビューで60代前半の頃は、肥満・高血圧・糖尿病で身体がぼろぼろだったと語っています。もう少し詳しく調べてみると、その頃の三浦氏は身長164cm・体重86kg。健康診断の結果は、高血圧・高血糖・脂質異常症に関わるあらゆる数値が悪く、糖尿病発症寸前の状態でした。(三浦雄一郎著『デブでズボラがエベレストに登れた理由』)。その後三浦氏は、70歳代でエベレストに登頂することを目指して、65歳から本格的なトレーニングを開始しますが、最初は500m級の山のハイキングコースさえ登りきれなかったといいます。そうした状態からのスタートなので、それからは、さぞ厳しいトレーニングを積んだのだろうと想像しましたが、三浦氏の著書からはそうした悲壮感のようなものは感じられませんでした。
 エベレストへの挑戟は常に死と隣りあわせで、成功する確率は一流の登山家が10人挑戦して3人成功するかどうかだそうです。「命を失なう可能性があるほどの挑戦をするのならば、せめて、その道のりは楽しみながら努力しようと決めた」と三浦氏は述べています。
 ちなみに三浦氏のトレーニング法は、体力に合った負荷のアンクルウエイトを足首につけたウォーキングを主体とし、それにチューブを利用した独自の筋肉トレーニングを組み合わせています。そして、負荷を少しずつ増やしながら、これらを毎日行ないました。その結果、三浦氏は約半年足らずで、40代の頃の体力を取り戻していくのを実感したそうです。
 さて、70歳でエベレストに登頂した2年後、東京都老人総合研究所で三浦氏の体力に関する測定が行なわれました。その結果は20代男性とほぼ同じであるとの驚くべきものでした。
 
 アンチエイジングに取り組むのに遅いということは決してないということを、この三浦氏のケースは私たちに教えてくれます。
 
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