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リラックス入門・1 「癒し」ってどういうこと?

最近、私たちの周りに「癒し」という言葉が増えているような気がしませんか?
そして、誰でも、一度くらいは、「ああ、癒されたいなぁ」と思ったことがあると思います。でも、具体的に「癒しとは?」と聞かれたら、よくわからない……というのが正直なところではないでしょうか?
そこで本誌では、6月号と9月号の2回で「癒し」を取り上げ、臨床心理士のAさんにお話を聞いてみることにしました。

臨床心理士とは―

臨床心理士とは、一般財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格を取得している人のことです。

心の問題を扱う専門家で、医療機関だけでなく、例えば、スクールカウンセラーとして学校で働いたり、災害時に被災者の心のケアに携わったりと、その人によって活動は幅広い分野に及んでいます。

 

きょうこ(以下・き)「今日は、『癒し』についてお話を聞きにきました。ズバリ、『癒し』って何なんですか?」

臨床心理士Aさん(以下・臨)「いきなり本題ですね。実は、『癒し』って、とても暖味な言葉なんですよ。何か共通のイメージがあるようでいて、実は人それぞれ、違うイメージをもっている言葉なんです。きょうこさんはどんなことをイメージしますか?」

「何か、ほっとする感じかしら」

「そうですね。でも、『心の傷を癒すこと』も『痛気を癒す(治療する)こと』も『癒し』という言葉には含まれています。同じ『癒し』でも、ほっとすることとは全く別物ですよね」

「確かに、そうですね。そちらの『癒し』はもっと深刻だわ」

「だから、今回は、ほっとする『癒し』のほうでお話を進めていきましょう。それでは、癒しの反対側にある言葉を考えてみましょう。きょうこさんが癒されたいと思うときは、どんなとき?」

「ええと、心や身体が疲れたときかしら……」

「そうですね。私たちは何らかの原因によって心身に疲労感を覚えることがあります。だから、癒しの反対は、ストレスということになりますね」

「じゃあ、癒されるために、ストレスを退治すればいいのね!」

「ちょっと待って。ストレスに別の面もあるので、必ずしも退治すればよいというものではないんですよ。 でもそれは次回お話ししますね。『癒し』とは、ストレスを軽減させ、心身を弛緩した状態にするための様々な手段といえると思います。

「なるほど。では、その手段とはどういうものですか?」

「例えば、おしゃべりのように無意識でしていることも含めて、色々あります。それから自分で行なうセルフケアや、マッサージなど他人の手を借りるもの、つきつめていけば、心理療法という方法をとる場合もあるかもしれません(図参照)」

図

「ふうん。色々あるのね。こういう『癒し』って、どのくらい続くのかしら?できれば長く癒されていたいと思うんですけど」

「それが、『癒し』の難しいところなんですよ。何をもって、効果があったといえるのか?実際に、身体の反応を測定して、数値で表わしている研究もありますが、果たして、心の状態もその時間と同じだけ持続しているのか……。難しい質問ですね。でも、簡単にいえば、自分が『癒されたなあ』と素直に感じている時間は、効果が続いているといえるでしょう。ただ、ずっと心身が緩みっ放しの状態が、よい状態といえるかしら」

「メリハリがなくなってしまいますね」

「ええ、大事なのは、バランスなんです。自分にとって気持ちのよい方法を選んで心身をリラックスさせ、ストレスとのバランスを上手にとること が理想的ですね」

「わかりました」

 

 

心理療法とは?

 精神的な悩みやそのことから来る身体症状など、何らかの困難を感じている人に対して、問題の解決をはかるために用いられる専門的技法です。

治療者(カウンセラー)との継続的な面接のなかで、自分が何に困ってどうなりたいかなどについて考えていくのが一般的な流れです。

 精神分析・行動療法・来談者中心療法・認知療法など、様々な心理学の理論に基づくものがあり、面接は会話やその他の手段(箱庭や絵画の制作、子供では遊びの場合もある)で進められます。

 心理療法の場では、自分の内面と向き合うことになるため、一時的に苦しく感じる場合もありますが、そういった過程を通して自己理解が得られるという意味での癒しの作業だといえるでしょう。

 

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2009年6月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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