がんのなかでも、死亡数がトップとなっているのが肺がんです。肺がんの原因といえば、タバコ。タバコと肺がんは、切っても切れない強い結びつきがあるのです。肺がん予防のためにも、そして治療のためにも、タバコと肺がんについて考えてみましょう。
タバコを吸う人は肺がんになる可能性が高いといわれます。実際に、毎日喫煙する人は非喫煙者の4〜5倍も肺がんにかかる可能性が高くなります。また、1日の喫煙本数が多い人ほど、肺がんで亡くなる確率が高くなっています(図1)。
しかし、たとえ長期にわたってタバコを吸い続けている場合でも、禁煙をすればそれだけ発がんのリスクは低くなります。禁煙を5〜15年続ければ、発がんの危険性は非喫煙者と同じ程度までに下がります。
タバコの煙には、喫煙者が吸い込む主流煙と、タバコから立ち上る副流煙があります。
発がん物質は主流煙よりも副流煙の方に多く含まれています。ですから、タバコの害は喫煙者のみならず、家族や周囲の人にも及んでしまうのです。これを受動喫煙といいます。夫がたばこを吸っている場合、妻が肺がんになる確率は約2倍になると報告されています。
タバコが悪いと分かっていても禁煙はなかなか難しい、という話をよく耳にしますが、それは、タバコには強い依存性があるためです。タバコに含まれるニコチンの依存性はたいへん強く、血液中のニコチンが消失すると、イライラなどの不快な精神症状(離脱症状)が現われます。その解消のためにはニコチンを補給する(タバコを吸う)しかないという悪循環が生じ、なかなかタバコがやめられないのです。
その他にも、口寂しさや手持ちぶさたのためにタバコに手をだしてしまったり、なんとなく習慣で吸ってしまう、心理的依存(習慣的な依存)も大きな問題です。
意志だけではなかなか禁煙できないのは、この2つの依存が障害となっているためです。どちらか1つが問題の場合もあれば、両方が係わっている場合もあります。
ニコチン依存と心理的依存、この2つについて知り、じょうずに克服していけば禁煙を成功させることができるはずです。
ニコチン依存を克服するためには、ニコチンパッチやニコチンガムが有効です。これらを用いて体内にニコチンを補給することで、不快な離脱症状を和らげることができます。
心理的依存に対しては、喫煙行為を他の行動に変えることで対処します。具体的には、タバコを吸いたくなったら代わりに水を飲む、ガムを噛む、石やクルミを握る…など、喫煙以外の行動をとることで、タバコを吸いたい気持ちをまぎらわすようにします。
その他、宴席などタバコの誘惑となる場所を避けること、本数を減らすのではなくきっぱり止めることも大切です。
前述したように、肺がんの予防には1にも2にもまず禁煙ですが、それに加えて、定期的に検診を受けることが重要です。
肺がんの症状には、せきやたん(とくに血たん)、胸痛などがありますが、早期では症状が現われないケースが多くあります。ですから肺がんを早期発見するためには、定期的な検診が不可欠なのです。たばこを吸う人はとくに肺がんになる可能性が高いので、ぜひ検診を受けてください。たとえ肺がんになったとしても、早期のうちに発見できれば、治る可能性は高くなります。
肺がんの検査は次のように行なわれます。
●エックス線検査(レントゲン)
検診などで行なわれる、一般的な検査です。肺がんをみつけることもできますが、この検査だけでは分からない場合もあります。
さらに詳しい検査
●喀痰(かくたん)細胞診検査
たんに含まれる細胞を調べます。
●CT検査
エックス線を用いて肺の断面を詳しく調べる画像検査です。
異常がある場合
●組織検査(生検)
病変のある阻織を採取し、顕微鏡で調べます。
肺がんの治療法は、がんの種頬や進行の程度によって、また人によって異なります。ふつうはいくつかの治療法を併用します。
●手術療法
手術でがんを取り除く方法で、あまり進行していないがんに有効です。
●放射線療法
放射線をがん細胞に繰り返し当てる方法で、手術をしない場合に行なわれます。
●化学療法
抗がん剤を用いる方法で、肺だけではなく、全身に作用がおよびます。
タバコを吸う人が必ず肺がんになるわけでも、吸わない人が絶対にならないわけでもありません。
しかし、肺がんの最大の原因が喫煙にあることは確かです。受動喫煙を含め、タバコを吸わないことが、肺がん予防の最重要ポイントです。
二コチンパッチや二コチンガムは薬局で市販されており、自分で禁煙に取り組むこともできますが、より確実に禁煙を成功させるためには、禁煙外来を受診することをおすすめします。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年3月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載