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肝臓とアルコール

お酒(アルコール)を毎日飲む方は、『休肝日』をもうけましょう…と言われるように、肝臓とアルコールに深い係わりがあることは、ご存知の通りです。

上手につきあえば「百薬の長」といわれるお酒ですが、過ぎた飲酒を習慣にすると肝臓は…。

今回の知るほどトピックスは、この「肝臓とアルコール」にスポットをあてます。

 

肝臓とアルコール

 肝臓は、500種類もの化学反応を短時間で行なう臓器で、その働きは多岐にわたっています。アルコールの分解もその1つです。アルコールは肝臓で分解・吸収され、中性脂肪などに変えられて、エネルギー源として身体の各細胞に送られます。そして、不要な分は、炭酸ガスと水になって体外に排出されます。  

 肝臓がこうした働きを正常に行なえる範囲のアルコール量は、個人差はありますが、アルコールの種類に関係なく、男性で1日40g(日本酒で換算すると約2合)。 女性の場合は、1日20g(日本酒で換算すると約1合)とされています。ところで、これ以上の量のアルコールをほぼ毎日、習慣的に飲み続けると、肝臓はどうなっていくでしょうか?

アルコール性肝障害

 肝臓が1時間に処理することができるアルコール量は、一般的に日本酒約4分の1合です。毎日3合のお酒を飲むと仮定して単純に計算すると、実に肝臓は12時間もアルコールを処理し続けなければならないことになります。  

 この状態が続いた肝臓では、生成した中性脂肪が肝臓内にたまるようになります。 そして、肝臓の30%以上の細胞に脂肪がたまると…‥この状態を「脂肪肝」といいます。 

 脂肪肝になった肝臓では、血流障害が起き、肝細胞の壊死、肝機能の低下が生じます。また、さらに重篤な症状(肝炎、肝硬変など)へと進んでいくこともあります。

物言わぬ臓器…肝臓

 日本人(成人)の3人に1人が、潜在的に脂肪肝を抱えているという調査があります。しかし、脂肪肝には自覚症状がほとんどないため、多くの人が見逃しがちです。 このため、自覚症状(腹水がたまる、黄痰がでるなど)を訴えるときには、肝臓病が進んでいる場合があります。  

 こうしたことを避けるため、アルコールの摂取量が普段から多い方、休肝日をとることなく飲んでいる方は、定期検診を受けるようにしましょう。アルコール性肝障害の初期段階では、禁酒やふだんの食事に気をつけるだけでも、肝臓を正常に戻すことができます。  

 そして、定期検診を受けておられる方は、γ−GTP値に注意してください。この値が高めの方は、肝臓がオーバーワーク気味かもしれません。こうした方は、まず専門医に相談しましょう。そして、過ぎた量の飲酒を避け、週に2日は休肝日をもうけること。つまみ類は低カロリーなものに変えること。こうした対処法が有効です。

 また飲酒には、依存症になるほどの習慣性もあります。アルコール依存症が心配な方は、早めに専門医に相談しましょう。

お酒を飲まない方

 お酒を飲まない、あるいは飲んだとしても少量しか飲まないという方もおられると思います。そうした方たちは、脂肪肝の心配はないのでしょうか?  

 近年、アルコールが原因ではない脂肪肝をわずらうという方が増えています。さらに、そのなかの1割程度の方は、症状が肝炎に進むともいわれ、肝硬変や肝がんなど重篤な病気に移行していくこともあります。

 これは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH−ナッシュ)とよばれ、メディアなどでも大きく取り上げられるようになってきました。

 非アルコール性脂肪肝炎の原因として考えられるのは何でしょう?それは、肥満や運動不足、糖分のとりすぎなど、生活習慣や食生活と密接に関係があるようです。お酒は飲まないから、自分の肝臓は健康……とは必ずしも言いきれないということを、最後に付け加えておきたいと思います。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年5月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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