ホームクリニック

肩の痛みに悩んでいる人へ

 日本人の国民病ともいわれる「肩こり」。厚生労働省の調査によると、身体の悩みとしては、女性では1位、男性では2位と報告されています。ところが、「肩こりで病医院を受診するのは、なんとなく気が引ける」という声を聞くことがあります。悩まされる肩こり。肩こりを軽く考えず、一度受診されることをおすすめします。


 肩こりは、肩の周りの筋肉の血行が悪くなることで起こります。血行が悪くなると、血液によって運ばれる酸素が不足し、筋肉には乳酸などの老廃物がたまります。そして、筋肉の細胞からは発痛物質がでて神経を刺激し、痛みが生じるようになります。  

 こうしたことが起こる原因は、大きく分けて2つあります。

筋肉疲労が原因の肩こり

 肩こりの原因でもっとも多いのは、筋肉の疲労によるものです。肩は、首や腕を支えているため、常に負担がかかっています。そして肩は、複雑な構造をもち、身体活動の多くの機能を受けもっているため、疲労しやすい部位であるといえます。  

 筋肉疲労による肩こりの場合、その多くは、両肩に症状が現われるのが特徴です。また、筋肉疲労からくる肩こりは、原因がはっきりしています(図1)。

 正しい指導のもとにストレッチや運動を行なう、猫背にならないように姿勢に気をつける、充分な休養をとる。症状にもよりますが、こうした方法で、肩こりを防いでいく、あるいは改善していくことが可能です(図2)。

病気が原因の肩こり

 肩こりは、他の病気が原因で起こることがあります。このときの特徴は、まず筋肉の疲労とは関係なく起こること。また、特定の部位にだけ強い痛みがある。休んでも症状が改善されず、徐々に悪化していく、などがあげられます。

◆心臓の病気

  胸が締めつけられるような痛みと同時に左側の背中や肩に強い痛みを感じる。こうした場合、「心筋梗塞」、「狭心症」など、心臓の病気による肩の痛みが疑われます。心臓の自律神経と首から肩の知覚神経とが同じ経路を通るため、心臓と肩の痛みが関連するとされています。

◆肩や首の病気

 「五十肩」などの肩関節に起こる病気や、「頚椎椎間板ヘルニア」などの首の病気。これらが、肩こりの原因となっていることがあります。肩こりに加え、首の痛み、腕のしびれなどが伴います。

◆その他

 精神的なストレスや、のどや口の病気、あるいは冷えによって、肩が緊張状態におかれ、筋肉の血流が悪くなり、肩こりの原因となることがあります。こうした病気による肩こりは、病気そのものの治療が必要です。

医療機関を受診する

 肩こりに悩まれて、民間療法(鍼灸や指圧など)に通っておられる方もいらっしゃるでしょう。これらの療法によって症状が改善する場合もあります。しかし、民間療法においてはX線検査などの医療行為が認められていません。 このため、肩こりの原因が病気によるものである場合、それが明らかにされないことがあります。

 肩こりの程度によらず、まず病医院(おもに整形外科)を受診し、肩こりの原因を特定して正しく対処していくことも大切です。

 肩こりを軽く考えず、医師の正しい指導に従ってください。

温める?冷やす?

肩こりが辛いとき、温めますか?冷やしますか?

一般的に慢性的な肩こりの解消法としては、患部を温める方法が効果的です。

これは、こった部分を温めることによって、血管が広くなり、血流がよくなるからです。

とくに寒い時期やエアコンのクーラーが効きすぎたりする季節には、身体が冷えることによって筋肉が硬直し、血流が悪くなるので、温めることは慢性的な肩こりの解消に役立ちます。

ただし、急な痛みや痛みがひどいときなど、温めてはいけない、または冷やした方がよい場合もあります。判断が難しいときは、医師の診断を受けるようにしてください。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年6月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

トップページへ