昨年、新型インフル工ンザA(H1N1)が世界的に大流行したことは、記憶に新しいところだと思います。今年の8月10日、世界保健機関(WHO)から、新型インフル工ンザの流行状況は、季節性インフルエンザと同様の動向となりつつあるとの発表がありました。
とはいえ、現在の時点では、新型インフル工ンザウイルスが撲滅されたわけでも、その重症化のリスクがなくなったわけでもありません。ウイルスの突然変異が起こり、病原性が高まる可能性も依然としてあります。インフルエンザ、に引き続き関心を持つと同時に、適切な対処法をあらためて確認しておきましょう。
インフルエンザ予防の基本は、予防ワクチンの接種と、手洗い・うがいを習慣にすることにあります。しかし、日本は欧米に比べて、インフルエンザワクチンの接種率が低いのが現状です。
インフルエンザワクチンには、インフルエンザの発症を抑える働きのほかに、発症したときの重症化を防ぐ効果もあります。インフルエンザに感染する可能性が高い、あるいは感染時に重症化しやすいといった下の条件に当てはまる方は、ワクチンの積極的な接種が望まれます。
○65歳以上の方
○集団感染する可能性が高い、児童・学生
○呼吸器、心臓、腎臓に慢性の疾患がある
○免疫に障害がある
○糖尿病を患っている
○生後6か月以上の乳幼児
また、これらの条件に当てはまる人と同居している方には、ご自身が感染源となるリスクを減らすためにも、ワクチンの接種をお勧めします。
インフルエンザワクチンの接種は原則的に全額自己負担となりますが、条件によっては、市町村によって公費負担されているところもあります。また今年は、新型インフルエンザA(H1N1)と、季節性インフルエンザ(A香港型とB型)の3種混合ワクチンも準備されています。費用・効果など、詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。
多くの方がご存知の通り、「インフルエンザ迅速診断キット」により、ウイルスの有無や種類を調べることが短時間でできるようになりました。インフルエンザウイルスに直接作用する薬も開発され、インフルエンザに対しては、近年、非常に効果的な治療が可能になっています。
インフルエンザ治療薬は、発症から48時間以内に服用することが推奨されています。48時間を過ぎると、体内のインフルエンザウイルスが増えすぎてしまい、治療薬に、十分な効果が期待できなくなる場合もあるためです。
インフルエンザの症状は、かぜの症状と似ているため、病医院への受診を迷われることがあると思います。違いをあげるとすれば、かぜが、38℃以下の発熱、のどの痛み、せき、鼻汁などの症状を見せるのに対して、インフルエンザは、38℃以上の発熱、また、全身症状(関節痛、筋肉痛、頭痛など)が現れることです。
昨年、新型インフルエンザが流行したときにもお知らせしましたが、インフルエンザが疑われる症状があるときは、直接、病医院を訪れるのではなく、まず電話をかけてから受診するようにしましょう。病医院には、高齢者の方や乳幼児を含め、なんらかの病気がある方が来られます。インフルエンザの感染拡大・重症化を防ぐためにも、これは、ぜひ守っていただく必要のあるルールです。
その他の注意として、15歳末満の子どもで38℃を超える発熱がある場合は、自己判断で、「大人用の解熱剤」を飲ませたり、ほかの人に処方された解熱剤を飲ませることはしないでください。解熱剤に含まれる成分によっては、脳に障害を与えることがあります。必ず、症状のある子どもが、医師によって処方を受けた解熱剤を使用してください。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年11月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載