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胃に優しい生活

 胃の内側には胃粘膜があります。この胃粘膜に対して、攻撃をする「攻撃因子」と、守る「防御因子」。このふたつのバランスが崩れたときに胃粘膜は破壊され、胃の不調、さらには痛み、そして、胃炎や胃潰瘍などの病気が起こります。そこで今回の「胃に優しい生活」 では、ストレスとアルコールに関することを中心に、このバランスを上手に整える方法を考えていきましょう。


胃酸と胃粘液

 食物を消化・殺菌するために分泌される「胃酸」。胃酸の主成分は塩酸で、胃の粘膜を溶かすほどの力があります。

 では、なぜ、胃は溶けないのかというと、胃酸が分泌されるときには「胃粘液」もバランスよく分泌され、層になって胃粘膜を保護するためです。このふたつの物質は、胃液に含まれています。

 胃酸は通常、胃のなかに食物があるときに分泌されるようになっていて、自律神経(交感神経と副交感神経) の働きによって制御されています。交感神経が強く働くと胃酸・胃粘液の分泌は減少し、副交感神経の働きが強まると分泌は増加します。

ストレス

 ストレスを感じたときに 「胃が痛くなった」経験はありますか? ストレスは自律神経の働きに大きく影響を与えます。この点、胃との関連で少し詳しく解説しましょう。

 ストレスがかかると、自律神経のうち、交感神経が強く働きます。これによって胃の血管が収縮し、血液量が減り、胃の運動及び胃酸・胃粘液の分泌が減少します。ところが、交感神経が強く働くときには、身体の働きのバランスを保つために、自律神経は副交感神経の働きも強めます。

 先ほど述べたとおり、副交感神経が働くと、胃酸の分泌が活発になります。こうした状態が必要以上に繰り返されると、やがて胃酸の働きが胃粘液の防御力を超えて、胃粘膜を痛めるようになるのです。

アルコール

 大量のアルコール摂取が胃の健康に良くないことは、経験的に感じたことがあるかもしれません。 アルコールは神経をリラックス(副交感神経の働きを活性化)させ、胃酸の分泌を促す作用があります。適量のアルコールや食前酒は、健康な胃の状態を保っている方には、食欲の昂進と消化の助けとなるでしょう。しかし、量が過ぎると、胃の運動機能は低下し、胃酸と胃粘液のバランスを崩すことになります。

 そして、注意すべき点として、アルコールの分子には、とても小さいという特徴があります。このため、アルコールの分子は胃粘液を通り抜けて、直接、胃の粘膜に影響を及ぼすのです。習慣的な大量のアルコール摂取は、胃粘膜そのものを強く攻撃し、破壊してしまいます。 

その他の攻撃因子

 喫煙するとき、身体の特定の部位に締め付けられるような感覚をもったことはありませんか?喫煙は血管を収縮させ、血行に悪影響を与えます。胃の粘膜は毛細血管が張り巡らされていて、血行が悪くなると機能低下や抵抗力の低下が起こります。また、喫煙には、胃の粘膜を修復する物質を減らす作用があることも分かってきました。

 刺激物(香辛料の多く含まれた物、カフェインの含まれる物)は、胃の粘膜を荒らし、胃に対する攻撃因子として働くので注意が必要です。そして、脂肪分の多い食事は量を過ぎると、消化に時間がかかることで胃への負担になります。

 不足することが攻撃因子となるケースもあります。朝食を抜いて1日2食にしている方は、空腹状態が長時間化することによって胃を荒らしていることが考えられます。日常的な睡眠不足も、自律神経の働きを乱すため心配な要因です。 

胃に優しい生活のために

 精神的な不安やイライラから深酒し、喫煙本数が増える……ストレス、アルコール、その他の攻撃因子。これらが複合しやすいものであることは、改めて説明する必要もないでしょう。

 胃の働きは心(自律神経)と密接な関係があるため、デリケートな臓器といわれています。しかし、私たちの生活習慣は、胃に多大な負担を強いる方向に流されがちです。胃にやさしい生活を送るために、攻撃因子と防御因子のバランスを取る。これを、今年から始めていきましょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年1月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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