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うつ病のサイン

 うつ病は、思いのほか見逃されやすい病気です。その理由のひとつに、うつ病を発症しやすい性格の方には、自分の辛さを他の人に表現することを避けたり、手助けを求めることを控えようとする傾向が見られることです。

 うつ病にかかると、過度ともいえる自責の念や、判断力の低下といった症状を招きます。こうしたことは患者にとって、さらにひとりで病気を抱え込む結果につながります。


 人間関係のトラブルや、病気やその他の理由による体調の変化。死別、離婚、失恋といった喪失体験。人事異動、引越し、出産などの環境の変化。こうしたことが強いストレスとなり、うつ病発症の原因となります。

うつ病の主な症状

 うつ病のおもな症状を、改めておさらいしておきましょう。

【気分や行動面】

●憂うつ感、絶望感、悲しみなど、沈んだ気持ちが続く。

●意欲が湧かず、何も楽しめない(楽しくない)と感じている。

●ささいな出来事や他の人の言動で、自分を責めてしまう。「自分という人間には価値がない」という思いが強い。

●気力が低下し疲れやすい。思考力や集中カが低下している。仕事や日常生活において、作業能率が落ちている(あるいは、そう感じる)。

【身体面】

●重く締めつけられるような頭痛。

●腰痛、肩こリ、身体の節々の痛み。

●食欲不振、胃の痛み。

●発汗、息苦しさなど。

 ストレスが、これらの、うつ状態を招くことは、誰にでも起こりうることですが、症状が2週間以上続いて、日常生活に支障をきたしているようなら、うつ病の可能性があります。

 うつ病の発症には、脳内の神経の変調が関係しています。個人の心の弱さが原因ではありません。早めに受診して、かかりつけ医に相談しましょう。

うつ病のサイン

 うつ病の方の場合、ご自身がうつ病であることを認めたがらない、あるいは、病医院の受診をためらう傾向にあります。このため、うつ病の早期治療のためには、ご家庭や職場など、周囲の人が、ささいなことでも、うつ病のサインを見逃さないことが必要です。

 ご家族の方は次の点を注意してください。

【家庭での様子】

●口数が減少した。ため息をつくことが多くなった。

●よく眠れていないようだ。

●食欲がない。

●飲酒量が増えている。

 職場において、目立つ兆候として、次のような方はいらっしゃいませんか?

【職場での様子】

●今まであまりなかったような失敗が増えている。

●能率が低下している。

●遅刻や欠勤が増えた。

 うつ病患者の約半数の方が、自殺を考えるといわれています。遺書を書くなどの行動や自殺をほのめかすような言動に気づいたときは、急を要します。このときにはまず、その辛い心境をしっかり聞いて受け止め、理解すること。そして、『大切な存在だから、死なないで欲しい』と率直に、はっきり伝えます。

 このようなときでも、本人が病医院を受診したくないという場合は、ご家族の方が本人に変わって病医院を訪ねて相談してみるのもよい方法です(注意:本人以外の受診の場合は、健康保険は適用されません)。

 うつ病は、治療が必要であること。治らない病気ではないこと。そうしたことを、患者本人、そして周囲の人が、しっかりと心に留めて、病気の治療と共に、問題解決へと歩んでいきましょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年3月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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