頻尿の原因の多くには、『過活動膀胱』という病気にあります。
膀胱の容量は、性別差・体格差などもありますが、約200〜300mlが普通です。膀胱に尿が、約150mlほど溜まると軽い尿意があり、250mlほどで強い尿意を覚えます。
一日の平均的な排尿回数は、昼間4〜5回、夜間0〜2回前後。回数だけでは断定できませんが、一日8〜10回以上の排尿がある、トイレに行って用を足してもまたすぐに行きたくなる、夜間に尿意で何度も目が覚めるという方は、頻尿の疑いがあるといえるでしょう。
過活動膀胱とは、膀胱の筋肉が過剰に動いてしまう病気のことをいいます。
尿意(特に、我慢できないほどの強い尿意)は、膀胱にある程度の尿が溜まり、膀胱の筋肉が収縮することで起こります。しかし、過活動膀胱の場合には、どのぐらいの尿が膀胱に溜まっているかに関係なく膀胱の筋肉が収縮してしまい、尿意を感じます。つまり、少量の尿が膀胱に溜まった状態でも強い尿意があるため、頻繁に排尿するという状態になるのです。さて、過活動膀胱はなぜ起こるのでしょうか?
緊張を強いられる状況にあるとき、「トイレが近くなる」という経験をされたことがあるでしょう。このことは、自律神経の働きと関係があります。そして自律神経は、ストレスや生活習慣に影響を受けます。このことが、過活動膀胱による頻尿の大きな原因のひとつです。さらにその他にも、脳に関係する障害(パーキンソン病など)が自律神経に影響を与えるケースもあります。
調査によると、40歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱の症状をもっていることが分かりました。そして、高齢になるほど患者の数は増える傾向にあります。
ところで、頻尿を意識していても病医院の受診をためらっているという方はいらっしゃいますか?
注意したいことは、表にあるような様々な病気が、過活動膀胱によく似た症状をもっていることです。過活動膀胱の検査は、他の病気の早期発見につながる可能性もあるので、頻尿の方には、病医院の受診が強く勧められています。
過活動膀胱の症状改善には、薬物療法と行動療法を併用することが最も効果的とされています。
薬物療法では、膀胱の筋肉を収縮させる「アセチルコリン」という体内物質の働きを抑える抗コリン薬がおもに使用されます。膀胱で尿が十分溜められる状態をつくることが、その目的です。
過活動膀胱に対する行動療法の代表的なものには、「膀胱訓練」「骨盤底筋体操」があります。これらは、尿もれ対策としても効果が認められています。
膀胱訓練
尿意を感じてもすぐに排尿を行なわず、トイレに行く間隔を少しずつ長くしていく訓練法。
@尿意を感じたとき、5分間程度、トイレに行くことを我慢する。
A5分間我慢できるようになったら、10分、15分と時間を延ばしていく。
B最終的には、排尿から排尿の間隔が2〜3時間得られるようにする。
骨盤底筋体操
尿道を締める力を回復するための訓練法。
@仰向けになり、軽く両ひざを立てる。
※両肘・膝を床につけた姿勢や、椅子に座った姿勢、テーブルなどに両手を突いて立っている姿勢でもよい。
A腹部の力を抜いた状態で、肛門を引き締める(排便を我慢する感覚)。
Bゆっくり5秒数えたら、肛門を緩める。
C@〜Bの動作を5分程度繰り返すことを、1日2〜3回、毎日行なう。
その他に、カフェイン、アルコールなど利尿作用を高める飲み物や、水分の全体的な摂取量を制限して排尿量を調整することも薦められています。ただし、過度な水分制限は症状を悪化させることがあるので注意してください。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年10月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載